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最近読んだ本の話

最近読んだ本の話をしてみましょうか。突然といえば突然ですが、それはまあいつもの話ですね。

最近、といってももう先月のことです。先月僕はある本を読んで、ありきたりに言えば、その本に非常に感銘を受けました。そしてそれはなんというか、ある種の運命的な出会いを感じないではいられないようなものでした。

その本はあまり厚くはない-200ページを少し超えるくらいの小説の短編集で、5つの話が収まっています。はじめに作者が出てきて、こんな風に始まります。"僕が自分の人生で起こった不思議な話をするとよく、それは作り話だろうと言われるけど、実際それは嘘ではなくて、例えば次のような話なんだ"という感じです。
それは4つ目の話でした。
僕がそれを読み始めたのは、もう空が十分に明るくなった朝の5時になってからのことでした。というのも僕はその日ずっと考え事をして一向に眠れなかったからです。こんなことは今年になってから初めてのことでした。僕はその数日前から、長い間自分の中でしこりになっていたものと向き合っていました。ずっと引き出しの奥で荷物になっていたものを取り出して、それをきちんと燃やそうとしていたのです。
僕は行動を起こしました。その結果は、正直あまり期待通りのものではなかったけれど、僕はその日朝まで、暗く見えない天井を見ながらじっと考えて、自分なりに一つの結論を出すことが出来ました。そしてそれは、客観的に見てもかなり前向きで、自分が自由にしていい心の領域が少し増えたような、そんな感じがしました。4時ごろ外に出ると、意外なほどに朝は爽やかでした。

話を進めます。その話の内容はこうでした。
"僕"はある一つの呪いをかけられています。それは昔からずっと彼の中に住みついて離れず、無意識のうちに彼の思考を蝕んでいました。そのせいで彼はある大切な能力を失い、幾つかのチャンスを掴み損ねたりもしました。
あるとき彼は一人の女性と出会い、彼女と親しくなり、自分の気持ちが動いていることに気がつきます。彼が彼女の小説をちょうど書き終えたその日、彼女は消えてしまいます。(彼の職業は作家でした)。
しばらくして、偶然彼女の消息を知った彼は、彼女の中に自分の痕跡を見つけるも、そこにはもう自分の入り込む余地がないことを直感します。そして彼は気づきます。"相手が自分にとってどれだけ大事かではなくて、僕はただ、目の前の相手を全て受け入れればいいんだ"と。そうして彼は自分の"呪い"だと思っていたものと決別する。そういう話です。

この話を読み終わったとき、僕は誰かがずっと僕のことを見てくれていたんだと、そんな気持ちになりました。全てが終わった朝に、誰かがそっと僕の背中に手を置いてくれている、そんな気がしました。
僕は泣いていました。

もしかしたら知っているかもしれません、
村上春樹の「東京奇譚集」という本です。
友人に本を貸してもらったのは2年前の秋だったかな、その頃はまだ本を読む体力がなくて、一週間経って殆ど読まずに返してしまった記憶があります。全てはタイミング、今がその時だったのだと思います。みなさんも興味があったら読んでみてもいいかもしれません。


-きっかけが何よりも大事だったんです。僕はそのときふとこう考えました。偶然の一致というのは、ひょっとして実はとてもありふれた現象なんじゃないだろうかって。

村上春樹 
東京奇譚集『偶然の旅人』より


それにしても、僕ももうデタッチするものが無くなってきました。準備期間もそろそろ終わりのようです、早く何かにコミットできるよう、頑張ろうと思います。


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