不死王曲 (24)

青山「おお」
普律殿下「じい」
青山「はい」
普律殿下「死なないようだ」
青山「おお」
普律殿下「だが、痛い」
青山「養生なさいませ」
普律殿下「おまえ、あの薬」
青山「はい」
普律殿下「本物か」
青山「はい」
　そのとき、ボートの横にボートをつけて、
少年「あんたたち、すげえな」
　少年がものすごいいきおいでこいでいる。ひらり、こちらへ飛びのった。
少年「撃たれたか」
普律殿下「それはもうどうでもよくなったらしい。それより、姉上は」
少年「寝てる」
普律殿下「よかった」
少年「姉さん思いなんだな」
普律殿下「よかったというのは、きみにとって、青山に、私にとってだ」
少年「ふーん、よく分からないがおれのためによかったんなら、まあ、よかった」
　少年は、Ｔシャツの胸からペンダントをとりだした、いや、呼子の笛である。笛を持ったからには、吹く、吹いた。　

　ぴぴーぴ、ぴぴぴ、ぴぴーぴ、ぴぴぴ

・スーパーなどで耳にする「ポポーポポポポ♪」というメロディでおなじみの「呼び込み君」が音声付きミニトイとして登場！
・本物のディテールを手に取りやすいサイズで再現、中央のボタンを押すとあのメロディが鳴ります！
・顔を文字パネルに交換することができ、シールを貼ることでシーンに合わせたメッセージを表示させることができます！
・サイズ:全長:約五三ミリメートル。中央のボタンを押すとメロディが鳴る (約20秒)。顔を文字パネルに交換可能。文字パネル用シール五枚付属。テスト用ボタン電池ＬＲ四四(二個)付属。電池交換可能。
・対象年齢一五歳以上

　で、おなじみの呼び込み君である。
　呼び込んだ。
　海面を割って、雄々しくそびえたつ、巨大な八角錐、まだ全貌が見えない、尖塔の頭からちいさな滝が、だばだば、いくつも、いくつも、まだ、全貌が見えない、まだ。
少年「あんたら、皇太子殿下と姉ちゃんだろ。ひと目で分かった。テロリストどもは新聞も読まないのかね」
　神田川水上警察署は、中野坂上の新ランドマーク、二一層二七階、地上一二二メートルの高層ビルであり、水上稜堡式要塞、国内初本格的パノプティコン型水陸両用留置監、
「桜の番人」
「凍れる炎」
「無敵島」
　である。前の年、普律殿下と茉莉杏殿下は、最上階のレストランから閲兵を行った。
　ボートと留置場の窓をへだてる海は深く、重く、万波縹緲、また重畳、闇のなかの黒い馬のひしめき、駆けずり狂うように城壁を噛む。
茉莉杏殿下「それが、なぜ、ここに」
普律殿下「姉上」
茉莉杏殿下「動くのか。知らなかった。完全に目がさめた」
　武装した警官が、あらゆるタレット、銃眼、小窓からこちらを、つまり、両殿下と青山をねらっている。ヘリが飛んだ。おりてくる。縄ばしごから私服の男、
私服「殿下、おひさしぶりです。おぼえておいででしょうか」
普律殿下「いや」
私服「そうですか。少しさみしい気がしますが、しかたない。本当に、残念です」