どぶだが 〜戦国狐狸合戦〜(10)
10(幕間)
夜が明ける。酔いのさめた源五郎が、もうなんだか分からないが、なんとなく走りつづけている。武者たち、ふらふら登場。源五郎とぶつかる。
武1 あ、家康さま。
源五 ん?
武2 よくぞ、ご無事で。
源五 うん。
武3 ひどい目にあいました。おそろしい百姓どもだ。
武1 ささ、こんなところ、早く離れましょう。気味の悪い山だ。
源五 そうでもないが。
武1 ささ、早く。悪い夢でございます。家康さまには、天下が待っている。
このようなところで……
源五 天下?
武2 ささ、もう朝でございます。
武3 ささ、いまのうちに。
皆々 ささ、ささ、ささ。
源五 天下か……
武者たち、源五郎をひっぱっていく。
源五 天下なあ……いや、狸の天下ではあるが……ちょっとだけだぞ……
皆々 は?
源五 そうだ、おとらは……
皆々 は?
源五 いや、おとらだ、おとら……
皆々、去る。
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