詩 211〜215
嬰児のパレード
生まれてはじめて思い知る
風にかたちがあるように
まるで夢でも見るように
気が遠くなる やけどする
なんて不思議な発光体
行列 つくって 道を行く
平野はなだらか 山 ふたつ
港へつづく 道を行く
焼却されると知らないで
まるで明日があるように
ビニールぶくろのなかに手を入れ
同じことだけ考えて
せせら笑う 目 あなたはだめだ
見せかけの穴 もういらないから
泥の川
暗黒 断絶 羅針盤
絹のシーツにくるまって
思い出じゃない ただ 記録
征服しかけた庭園で
欲望 鮮明 食べ残し
あまりに純白 あなた 馬鹿
昨日は泊まって とまどって
何度も爆発 砂煙
まごころ 寂寥 これは なに
壁画の神さま 愛の歌
架空のあなた 嘘の大陸
図式はあきらか 固有性
すべての感触 融合へ
あなた 停留所として生存
図書館
セレナーデ たぶん 瓶詰で
ドアをたたいた人の胸
肋骨 かこまれ ことこと と
開かれ 拾われ 読まれたい
ノクターン きっと 水鏡
ボート うかべた その ひとみ
涙 あふれて ふわふわ と
抱かれて ほめられ 歌われたい
花嫁 ひとり キャンバスに
どんなに雨が降ろうとも
ほほえみつづける呪いをかけられ
帰り道 もう 心 飛ぶ
白い吐息を遮断して
日傘を盾に 弓に つるぎに
小鹿は跳ねた
空気がやわらかかったころ
青に 緑に みがかれて
かなしいくらいに うつくしく
苦しむことなく生きていて
まわりをすべてかこまれて
力をこめたうしろ脚
一滴 分裂したときに
小鹿は跳ねた 落下した
そこは空洞 正直を
守っていたら 黒ずんで
無限にみちびく はしごは たおれ
はりつめた 糸 退屈は
寄り道せずにあなたへと
歩いてきたから 存在 希薄
湖畔
光をとめて ありふれた
すべてのものがうつくしく
ふれることさえできず ただ
座っているだけ うつくしく
光をとめて 日はのぼる
いったい これまで なにを見て
なにを聞いたら そうなった
指を立てれば もう ちぎれ
いるはずのないものの巣に
深く考え 思いつめ
いつのまにやら カタツムリ 住む
乳白色にすきとおり
また どんよりと ひとにぎり
どうか沈んで こころゆくまで
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