神さまだった少女のコピー

詩 6〜10

  神さまだった少女
 
なんて気圧だ まるで月
窓際が好き はなつ 花
スカートゆれる 嘘の春
少し泣いたら もう夏だ

右むけ右した馬鹿がいる
ガラスが割れて 魚の目
排水溝で見つかるの
あのころじゃない そうじゃない

神さまだった少女には
約束なんてできなくて
きみは偽善者 心を食べる

神さまだった少女でも
ぼくの気持ちは分からない
なんにもないよ 「あるけど」「ないよ」




  夏至

裂けたランプに詰める種
夕立やんだ黄昏を
家路に並ぶ 誰の顔
いいえ ビー玉 咲いたのは

「あなたはいくつ」「十二才」
八重歯はとがる 会うたびに
「花火はいくつ」「ひとつだけ」
くすんだ爪を踏みにじる

産声あげる 絵本の絵
今日だけは でも だめなんだ
思い出が まだ バス停にいた

友達の影 のびていく
ホタル ヒグラシ キリギリス
おやすみなさい わたしの髪で




  ちいさな胸

ガラスが刺さるこの足じゃ
一緒に歩いてもらえない
降水確率 分かっても
ひとりはこわい てんびん座

ピアノが落ちてくるけれど
休憩中はしずかです
ハンカチだけは忘れずに
ほらほら 骨が見えてます

ほほえみ凍る 口の端
そっと降り立つ黒い蝶
髪をとく指 カッターナイフ

ポケットの底 消えたカギ
ちいさな靴に眠る星
ちいさな胸におさめきれない




  今日は欠席

黄色い服にパンのくず
コンパスころぶ舞踏会
いつかはきっとやってくる
つかれた声が目を覚ます

ぽっかりあいた穴を見て
そのレコードで蓋をして
弱虫 毛虫 卑怯者
みにくいものは愛せない

荒地でひとり 日傘さし
空で眺める 綿毛だけ
迷路遊びはテーブルの上

唾でぬらした弾丸と
手紙を届けに来たけれど
モンシロチョウは 入浴中で




  素顔

シーツの上に投げ捨てた
手と手が溶ける 泡になる
めぐり会いたい 出会いたい
偉大な朝に出会いたい

オリーブ ちらばる クレーター
生まれてこない 少ししか
トランペットがその合図
サボテンの花 赤かった

桃を噛む歯がかたくなる
いつでも呼んでと言ったのに
かわいい服は鏡にかけて

何度も顔を洗ってた
ヘリコプターから落ちたのは
石鹸じゃない 爆弾じゃない


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