詩 31〜35
空想
きつね 嘘つく また懲りず
ペットボトルは点々と
ガルガンチュアのお姫さま
非常口への目印だ
「自転車ですか」「船でした」
サンタクロースが見つからず
ホームズまでも健忘症
時計回りに苦笑する
つばめ 帰らず 定数化
阿修羅の眠り 去勢中
母の電話で 加速する 無知
コーヒー 紅茶 コーラ でも
水が飲みたい ただの水
その味こそが わたしのハート
ヒロイン
胸を裂かれるヒロインは
ゼンマイ式か 今回も
植物性か ちがいます
あれは冗談 ただの樫
空中ブランコ ナイフ投げ
小指が踊る 魔の麻酔
火の輪くぐりは失敗で
とてもかなしい 眠れない
きれいなうなじ 細いだけ
まじめにやればよかったと
後悔するのは臆病者で
知らない人のせいにする
まじめにしろと怒られて
うつむいて 恋 偽造する 馬鹿
黒い
まっ赤になんてなれなくて
黒いドレスを着ています
黒いカチューシャ 黒い靴
黒いマフラー 黒い髪
器用でもいい あまえるな
完璧すぎる凡庸さ
封印しよう コウノトリ
鏡のなかの鏡です
つめたいはずの感覚の
歴史はちぎれ 噴水か
旗のようです ちらつく黄色
きみを待ちます 駱駝山
きみを踏みつけ 水の底
きみを見ている 八月二日
おばけなんて
電信柱の夕闇を
つばさにひろげ まっ黒な
つばさをひろげ 無数の目
格子に光る サクラです
だらだら坂で行きどまり
オルガン林 おわかれだ
迷いこんだら 真鍮化
青春の日々 これじゃ もう
あなたを殺す やさしくも
退屈な窓 鳥の影
きりきり つつり なんだ 秋 来た
あなたの空で 手を洗い
あなたの海で 二度寝して
七不思議 埋め 春には ピアス
ピエロ
ベール しなやか 味気ない
どこにあるのか 本能の
死角 残骸 苦い草
居心地悪い クレマチス
吹き荒れる 風 見つけたよ
ほんものの庭 梨の木は
蜜月 ちょうど 留守中で
あどけないから 無慈悲にも
繊細 純粋 善良で
悪い人とは栄光を
交換できず 分かりあえない
ポンプのとって 重い 重い
石鹸ぬって 獰猛な
炎 暴君 跳ねる 踊れる
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