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2020年10月の記事一覧

詩 355

詩 355

  リリー、リリー

かなしく しずむ いすの下
廊下で 聞いた 悲鳴 行く
港へ行けば 蜂の巣で
石灰ばかり 舞いあがる

片手に にぎった 虫めがね
子供たちは泣く ひつじ雲
溶けていくなら 声 残し
最後の面影 カーネーション

えらんだ薬は オーボエで
憂鬱 ひとつ ソプラノで
裏庭 見あげた ステンドグラス

愛したことのない世界
空には絵本 風は耳
何度目だろう 前髪 切りつめ

詩 354

詩 354

  表情

卵 ちらばる こがね色
広間に あふれる 音 無数
きっと 亡霊 おとなしく
でも みたされず 噛む レンズ

この 楕円形 増殖し
アトリエ 孤独な 色 無臭
ゴンドラは行く 痛い 風
無慈悲な熱に さらされて

握手のしかたから おしえ
しずけさばかり のぞむから
二重の囚人 生きるとすれば

肺に住むのは 宵 かがり
ここで立つのも退屈で
風邪の象徴 あなたの表情