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2019年12月の記事一覧

詩 333

詩 333

  太陽石

机上の砂鉄 きよらかに
微光 はなてば やわらかく
廊下のミシン 抱きしめる

黒く くすぶる 針で とめ
はずむ ホールの スピードに
運河の水音 気ぜわしく
あなたは牧神 愛の歌

花粉は こがね 針で とめ
入口 さらされ ゆるされて
大樹の下の はだしのランチ

かすかな気配は 息づかい
ほほえむことも もう なくて
もつれる 理由に 清潔 わたしは

詩 332

詩 332

  夢の番人

さまよう コスモス 夜行性
ざわめき せまる ゆれ 動く
かざり窓から 右手 出し
星の氾濫 道を染め

白濁しながら きょろきょろと
浜辺に咲くから夕顔で
エプロン かけて ナイフ 立て
眠りをやぶる 咆哮が

断崖 お城に 鳴り ひびき
天井 こうもり ぶらさがり
名前を呼ばれた人から 急げ

黄色の草原 はてしなく
時間を はらんだ 結晶を
じっと見つめて 空から 落として

詩 331

詩 331

  テラリウム

夕日 たゆたう 鉄条網
あいもかわらず 雪 深く
明日は おわかれ あなた 埋め
ながめ 知恵の輪 かぐわしく

余韻 赤裸々 はなむけに
暗い入り口 慈悲 深く
だけど 寝不足 虫眼鏡
デルタの反映 照らす 床

鳴り ひびくのは ビオラ チェロ
ころがり 落ちても 手には 種
溝に はまれば 春 まだ 遠く

すみれのかおり 耐えがたく
ケトル めがけて クルミ 投げ
太陽系

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詩 330

詩 330

  夢の島

予期せぬ 犠牲 泥を吐き
積み木で築いた羊小屋
インク したたる 指 むすび
貝殻ボタン 浮き 沈み

ふくらみはじめた芽の上に
ランプ 点々 満ちる 潮
黄色のスカーフ なびかせて
光をはなつ 他愛なく

とりまく つらら いまわしく
見くだしたなら 水を蹴る
蒼穹 アメンボ 踊る 円錐

スプーン一杯 銀の泡
洗い 清めて 魔法陣
枯葉の奔流 救いをもたらす