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2019年11月の記事一覧

詩 329

詩 329

  夏休み

廊下の途中で立ちどまり
見あげるような窓を抜け
ハリガネ クモの巣 影を編み
靴底 鳴らして 踏みにじる

白線 やすらか どこまでも
海岸 かこんで 閉じこめる
あふれられない アスファルト
石の柱の上 避難

十字架のかたち 腕 ひろげ
深さは 胸のあたりまで
ひとみの色で 季節 おしえた

ルビー ちりばめ 日が暮れて
ふりかえったら 水平線
羽ばたきそうな 蝶むすびです

詩 328

詩 328

  再会

青い字で書く 標識に
まぼろしの道 わかれ道
ひとりの体で 行けなくて
つないでいた手を まず はなし

髪をとかして 靴をぬぎ
爪は みじかく 首かざり
クローゼットの すきま 抜け
また 十字路で 立ちどまる

ふりかえったら 旗の群
槍 盾 光る 白い象
やがて あなたは 寝台の上

重い かんむり おろしても
風に のるほど 軽い芽は
ひろい 袖から のぞいて 摘まれて

詩 327

詩 327

  星の寝室

のどを鳴らして 大粒の
雨を のみこむ ひとりきり
クラゲのかたちになりきれず
やっと解放できるから

眠りに落ちた 支配者を
見守る 天蓋 開花して
振動 やまずに 立ちすくむ
暗がり ひそむ 銀香炉

なんて すてきな 最終章
まぶしく 光って 点滅し
冷蔵庫でも保存できない

心 やすらぐ 円舞曲
どうせ すべては からっぽ と
あなたが言った うそではなかった

詩 326

詩 326

  クロノメトリア

コインを海に投げ入れて
凍てつく 昼顔 フラミンゴ
どんなに しずく 循環し
目を光らせても さみしくて

分解 されても 羽ばたいて
出会えた 消毒 ユキノシタ
つかれ おとろえ めくるめく
歓喜のもとに 両生類

咆哮 ともしび 不可能な
萌芽の合図 睡魔さえ
あわれみ 今夜は 部屋には来ない

復活 遅れて ホルマリン
探し求めた いけにえは
屈折率に服従しない

詩 325

詩 325

  ピクニック

あわれな ふたり スターマイン
花に隕石 呼び さます
心 ただしく 変形し
濁流 のまれる インク壺

おろかな ひとつ ルビーレイン
虫とサボテン よけて 落ち
視界 さえぎる 罪 深く
ほうきにまたがり 通り抜け

甘美な無知をあたえられ
足あと たどり 髪をなで
もしも 空白 反映したら

あなたのきらいな土の色
ためらいながら 点滅し
よろける 永遠 ライムは無傷