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小説「銀匙騎士(すぷーんないと)」/小説「百年の日」

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2019年9月の記事一覧

銀匙騎士(すぷーんないと) (38)終

銀匙騎士(すぷーんないと) (38)終

「たのしそうだな」
「うん。
 あのね、あたしね、空の上から、雲の窓枠みたいなところから、うっかり落っこちちゃったの。
 神さまとね、悪魔の、ごくつぶし、ってゆうか、たわけどもが戦ってたの。百おくまん年前からはじまってね、やっとね、終わったの。神さまがね、超能力をつかえる人たちをつかってね、戦わせてみたの。そしたらね、すごい強かったの。それでね、勝ちそうになってね、悪魔どもになかなおりしようって言

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銀匙騎士(すぷーんないと) (37)

銀匙騎士(すぷーんないと) (37)

「おい。おーい。おい。
 死んだ。
 息してない。もう、なんか、つめたい。ぜったいにしゃべらない。動きもしないだろうな。
 これが死ぬってことか。さみしい。
 もう、二度と会えないもんな、会いたいと思っても。ここにいるけど、いない。
 おれはおまえの話を聞いたけど、おれ以外の人間は、誰も聞いてない。このまま死んでたら、ああ死んでるな、って思われるだけだ。灯台の、ああ、こういうことじゃん。
 ぽっか

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銀匙騎士(すぷーんないと) (36)

銀匙騎士(すぷーんないと) (36)

「そうなの」
「ちがう。おっさんも、これにはびっくりしたよ。ばらばら、ばらばら、でもしずかに、すとんって着地する人の影が、やまない」
「どこから落ちてきたんだ」
「木の上」
「木の枝のところにかくれてたんだ。鳥みたい」
「鳥みたいなんだ。その人たちも、蛾にびっくりして足をすべらした」
「なるほどね。でも」
「その人たちが、その、賊だった」
「えっ」
「合歓木(れいんつりー)の下で休憩する旅の人たち

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