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『花柳貴彦と、なる』vol.2

月日を経て教える立場となり、
今、たくさんのお稽古の場面を思い出します。

幼少のおり、祖父のお稽古で、昨日は「右だ!」と怒られ、稽古をし直し、翌日には「左だ!」ということは、しょっちゅうありました。どうしたらいいのかわからず、幼い私は戸惑いの中に何度も突き落とされました。しかし、あの頃わからなかったことが今ならわかります。

振りを単なる振りとして捉えるのではなく、一つの演目の中での振りと捉え、その意味、その前後の流れをきちんと考え、感じたが故に、ただ単に右か左の問題ではなかったこと。

振りをただ単に覚えて、体を動かせば良い訳ではなく、その動きには思いがきちんと乗っかるからこそ、稽古を大事に、その演目にきちんと向き合うことがいかに大事であるか。

経験は、消えません。刻まれているこの経験が、私を作る、私が作る日本舞踊の、

ひとつの礎となっています。

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