Webマンガ『人生崩壊』44話 手放し難い痛み(ネタバレあり)

韓国発祥のWebマンガって、なんでこんなに熱いのだろう。

T.Jun氏は凄い。『外見至上主義』や『喧嘩独学』といった、勢いがあるWebマンガ数々の原作を手がけている。そんな中、ここにきて急に熱くなってきたのが『人生崩壊』その44話だ。

詳しいストーリー解説は省略するが、主人公・赤城が、過去に起きたいくつかの事件を未然に防ぐというミッションを課され、その過程が面白おかしく描かれる作品だ。そのミッションをクリアしていかないと赤城も元には戻れないから(とあるきっかけで高校生の頃にタイムスリップした挙句、「赤城のせいで人生が破滅してしまった少年」の体に魂を乗り移らされたのだ。なかなかブッ飛んだストーリーである)、そうせざるを得ない。

当初はさっさと元の体に戻るために、課されたミッションをイヤイヤ(ながらも少しノリノリで)こなしていたのだが、ここにきてその過程で築いてきたものを全て手放さなくてはならないという難題にぶち当たる。それは赤城自身も知らないうちに、彼にとってかけがえのない存在になっていたもの。本来なら生まれなかったはずの仲間との友情と絆だった。

最後に控えていたのは、それらを捨てないと発生すらしないミッションだったのだ。それを理解したときの「これは呪いだ」から始まるモノローグが、実につらい。

この44話で描かれるのは赤城の苦悩、葛藤、暴走、後悔、そして諦観。見ていて心が締め付けられた。それまでの作品のトーンは割と破茶滅茶なギャグ路線だったのに、ここにきて急にシリアスになる。しかも取ってつけたようなシリアスではない。これまでの漫画のプロセスを全て否定する(そして赤城も、仲間たちに対して数々の否定の言葉を口にする)展開なのだ。

これはまるで、読み手が登場人物たちに感情移入してきたところにいきなり突きつけられた刃だ。試されているのは赤城だけではなく、僕たち読者もなのかも知れない。

本当に笑える作品なだけに、衝撃も強い。この話を何度も読み返しては、泣きそうになってしまった。

雨の中、暴れる赤城の姿が痛々しかった。

なぜ暴れるのか。それはきっと、その心の痛みこそが、彼ら彼女ら仲間の存在そのものだからだ。読んでいて辛くもあり、少し羨ましくもある。

この作品は、毎週日曜日の楽しみの一つである。

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