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コマ

 過疎が進む山間の集落角が崩れ少し斜めになった急勾配石の階段の先には、白っちゃけた瓦の小さなお寺があった。

 その梺に在る極々小さな児童館に私は居た。

 年少から黄色組、赤組、青組の3つの組。過疎の集落だから、10名位の組みだった。私の母はその児童館で保母さんをしていた。実子の私は児童館では母を「先生」と呼ばなければならなかった。


 その日は木製のコマの絵付・・・柄の部分についたプラスチックの糸巻きで回すタイプのコマだ。私は去年作った先輩たちのコマを観察し、カラフルにすればするほど回すと濁った色になる事を知った。合わせると綺麗な色・・・青と黄・・・緑・・・。柄を渦巻き状にすると回るスピードによって、緑、青、黄とアニメーションのように流れる柄の変化が好きだった。


 我ながら良く出来たコマだ。

 何度も、何度も回した。

 友達にも綺麗と言われた。

 何度も、何度も回した。


 帰りの時間・・・昇降口で上履きを下駄箱に入れると、手に持ったコマを上に先生の前に突き出して。


「おかあちゃん」


と言った。

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