Tシャツだらけの店にした結果…
私はかつて
カジュアルファッションの
全国チェーン企業で
店長として
ワクワク系マーケティングで
断トツの業績を出し、
その結果が認められて
本部のバイヤーに昇進しました。
バイヤーは
数百店舗の商品を担当する
社内でも花形で、
誰もがあこがれる存在。
同期入社の多くが
「将来はバイヤーになりたい」
と言っていました。
私はというと
「バイヤーになりたい」
という思いはなく、
お店でワクワク系を実践したり
お客さんやスタッフさんと接することに
悦びを感じていました。
ですが、
上司が強く
推薦してくれたこともあり
バイヤーになりました。
バイヤーに成り立ての頃は
先輩バイヤーのアシスタントとして
商談や会議に同席したり
店舗視察に同行したのですが、
商談や会議では
「今、世の中のファッションでは何が流行っているのか?」
「今、競合他社では何が売れているのか?」
「競合他社で売れている商品の値段はいくらか?」
といった話ばかりでした。
また、チェーンの各店舗は
主に全国のショッピングセンターに
入居していたのですが、
先輩バイヤーの
店舗視察に同行すると
店長さんやスタッフさんへの
挨拶もそこそこに、
自分の担当する商品の
陳列の手直しや
周りの競合店が打ち出している
商品のチェックなど
「商品をチェックする」ことだけが
視察の目的となっていました。
先輩はバイヤーとして
当然の仕事をしていたのですが、
ワクワク系で
お客さんを観ることの重要性を理解し
お客さんを観るようになってから
お店の業績をV字回復させてきた私には、
お客さんを一切見ずに
商品や価格だけしか見ない
商談や会議、店舗視察のやり方に
強い違和感を覚えました。
そうして数ヶ月、
先輩バイヤーのアシスタントとして
過ごして分かったことは、
当時私がいたチェーン企業での
バイヤーの仕事は
「世の中や競合他社で売れている商品を
他社よりも安く仕入れてお店に届けること」。
上司からバイヤーに来る指摘も
「競合よりも価格が高い!」
「競合よりも売れ筋の品揃えが悪い!」
といったことばかりでした。
そこで
半年ほど経って正式なバイヤーとなり
10店舗ほどの品揃えを任された私は、
まず担当店舗の視察に行きました。
私が担当した10店舗は
地方の郊外にある
お店ばかりだったのですが、
お店に行って
お客さんを見ていると
チェーン他店のお客さんに比べて
Tシャツを着ている人が多いことに
気づきました。
そこで私は
通常はTシャツ、シャツ、パンツ、その他を
バランスよく品揃えするのですが、
それをやめて
Tシャツだらけの品揃えにしました。
「この地域でTシャツならあの店!」
「あの店、Tシャツがすごい!」
という状態を作ろうと思ったからです。
担当店舗の店長と相談しても
いい感触でしたので、
実際にTシャツの品揃えを
極端に増やして
店長たちにもお店で
徹底的にTシャツを
打ち出してもらったところ、
お客さんやお店のスタッフさん
からも大好評。
噂を聞きつけて
お店を視察に行った
チェーンの取締役からも
「これくらい思い切った品揃えをしないとダメだ。
お前はこれからの会社を引っ張るバイヤーだ。」
と大変な褒め言葉を
いただきました。
しかし
Tシャツに偏った品揃えは
社内で注目されましたが、
私がお店のお客さんを観た結果
決めたことであることや
お客さんを驚かせるために
Tシャツばかりにしたことは
まったく着目されませんでした。
「今はTシャツを増やすと売れる!全店でTシャツを増やせー!」
という残念な捉えられ方でした。
そして
その後も会社としては
世の中の売れ筋ばかりを
追いかけ続けたため、
私は退職して
個店を創業することに
なりました。
小阪の著書
『毎日お客が来たくなるマーケティング実践術』
には、
世界で初めての百貨店
「ボン・マルシェ」を取り上げて
こう書かれています。
「150年前のパリ。ボン・マルシェにはパリ市民が殺到し、商品は飛ぶように売れていた。ではそこにあったのは『売れる商品』だったのか。
違う。それは『売れる商品』ではない。そこにあったのは、ボン・マルシェがパリ市民に『「買いたい」ことを気づかせた商品』なのだ。彼ら自身が『そこで「買いたい」ということに気づいた商品』なのだ。」
お客さんはワクワクしたくて
お店に来店します。
そしてお店で
「そうそう、私が欲しかったのはこれだ!」
という出会いがあれば、
その発見と驚きを求めて
再び来店します。
世の中や競合他社の
売れ筋を追っているだけでは、
お客さんに
発見や驚きは提供できません。
ワクワク系商人である
みなさんはぜひ、
お客さんに
ワクワクを届けていただきたい
と思います。
ということで、
こちらの動画では小阪が
世界初の百貨店
「ボン・マルシェ」を取り上げて
商売の本来の役割をお話ししています。
ぜひ最後までご覧ください!
↓↓↓↓↓
https://youtu.be/8m6r_zBX34Y?si=N8JBNqcEWFX0lVB9
それではまた次回に。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?