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マテリアルズ・インフォマティクスとは?MIを使うと何ができるのか?

MI-6 事業開発部で材料や素材を扱っている/開発している企業様のMI活用を支援しています上田俊雄です!

今回お話させていただくのは材料開発×AIの分野であるマテリアルズインフォマティクス(略してMI)とは何なのか?何ができるのか?ということについてです。

材料開発の研究現場ではよくDXに絡めてMIというワードをお聞きするかと思いますが、いまいちふわっとしていてイメージが掴めていないという方も多いのではないでしょうか。
本日はそういった方々に基本的な内容含めてお伝えできればと思います。


1.はじめに

MI-6とは? https://mi-6.co.jp

  • MI(マテリアルインフォマティクス)・AIを用いて素材メーカーの研究開発を効率化しているスタートアップです

    • MIとは? 素材開発にAIを用いることはMI(マテリアルズ・インフォマティクス)とも呼ばれており、「世界を変える100の技術」にも選ばれる等、注目を集めている技術です。

  • 事業としては大きく3つ。ハンズオンMI(プロフェッショナル解析サービス)、miHub(MIの解析ソフトウェア)、Robotics(研究開発中)とあり、相互に連携しています


2.マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは

マテリアルズ・インフォマティクスについて、明確な定義は様々ですが、MI-6では「膨大な化合物空間やパラメータ空間の中から、計算機によるデータドリブンなモデリングや数理最適化により所望の物性を持つ材料を探索する手法」と定義づけています。

パッと聞いただけでは難しいですよね?

誤解を恐れずにもう少し噛み砕いて言うと、「実験データ/文献データ/データベースなどの様々な材料に関するデータを用い、AIや統計学などを活用して材料開発をより効率的に進めていこう」という分野とも言えます。

また、MIを別の見方からすると、下記のように見ることもできます(MIは図中の右下のデータ科学に相当)。
従来の実験科学、理論化学、計算科学と並べて比較すると少しは、わかりやすいですかね。
ここでお伝えしたいのは、MIというものは近年注目されている新たなサイエンスのアプローチの一つであるものの、何か特殊なものや万能なものではなく、あくまでこれまでの科学(サイエンス)の手法の1つに分類されるということです。

MIに関する大手企業のニュースリリースで過度な期待を持ってしまうケースもありますが、決して魔法の杖ではない(万能ではない)ということを理解して、正しい期待値を持って取り組むことが重要です。

3.MIで何ができるのか?

ではMIを用いれば何ができるのか?これを一言で説明するのは難しいのと、様々な技術例や活用例があるので一部をご紹介します。他にもまだまだありますので、ご興味があればぜひ自分でも調べてみてください。

①実験条件の最適化

昔から実験計画法や直交表などといった言葉は聞いたことがあるかもしれませんが、データサイエンス+数理最適化を用いて、未知の探索空間を人ががむしゃらにやるより効率的にやっていこうという方法です。

実験計画の最適化のテーマではよくベイズ最適化という、形状がわからない関数 (ブラックボックス関数) の最大値 (または最小値)等を求めるための手法が用いられます。(もちろんそれ以外にも様々な手法があります。)
ちなみにMI-6の解析ソフトウェアmiHubでもベイズ最適化を採用しています。

よく勘違いされやすい点としては、ここで採用しているベイズ最適化という手法はあくまで実験検証を前提としている点です。そのため1発でなにか劇的な成果を出すと言った手法ではありません。一方で、だからこそ少数データからでも(究極的にはデータ0からでも)データを積み上げていきながら探索を効率的に行っていくことができます。

詳細はこちらのWebセミナーを御覧ください
マテリアルズ・インフォマティクスの手法:条件最適化に用いられるベイズ最適化の基礎
https://mi-6.co.jp/videos/cat-video/865/

②新規化合物探索(有機低分子中心)

MIといえば人が思いつかない新しい化合物を見つけるというイメージをされている方も多いのではないでしょうか。
実際こういったニーズはMI-6でも非常によくお聞きしますし、得意とするテーマの1つです。
有機化合物をSMILESなど様々なデータサイエンスで扱える形式に変換して、モデルを作成し新規の化合物のバーチャルスクリーニングに使用します。

新規化合物の生成方法については紙面の関係上、ここでは割愛します。詳しくはセミナー動画をご参照ください。

③計算科学を組み合わせた大規模スクリーニング

②と重なる部分もありますが、第一原理計算などの高負荷な計算シミュレーションを組み合わせて行うバーチャルスクリーニングもあります。
例えば下記のような問題設定で、所望の物性や構造を満たす化合物を探すといったことができます。

こういったテーマでは、MI以前に、そもそも計算シミュレーションが一定の精度で使える問題設定か?というところが重要になります。
そういったテーマであれば、究極的にはデータ0からでも計算シミュレーションでデータを生み出せるためMIに着手できるケースがあります。

④物性値予測

データサイエンスの活用でまず着手しやすいテーマがこういった物性値予測ではないでしょうか。

例えば、過去の実験データから化合物の融点や沸点等の予測モデルを作成して実験の手間を減らすといった使い方はよくあります。

インプットとなるデータ(説明変数)とアウトプットとなる物性値(目的変数)が対になっていれば活用可能性があります。


4.MIで材料の研究開発は今後どうなっていくのか?

さて、ここまでで、MIで何ができるのか?ということについていくつかご紹介させていただきました。
では、今後MIの活用が進むとどうなっていくのでしょうか。

よくMIの活用が進むと研究員が必要なくなってしまうのではないか?人件費削減で人がやめさせられるのではないか?との意見をいただくことがあります。
これに関してはあり得ないと考えています。

理由としては他の業界のデータ活用と異なり、MIは研究開発でのデータ活用であるというのが1つあると考えています。
他の業界では、AI活用でコールセンターの対応業務が自動化されたり、不良品検知をAIで行ったりと決まった問題設定では人の手を必要としないくらい高精度で行えるようになってきています。
一方で、材料開発においては定型業務というのは基本的にはなく、多くの業務が研究者の仮説検証を元にした試行であるため、最後まで人として考えたり考察したりする部分は残り続けます。
また、問題設計そのものを行うのはAIではできないため、研究者である人間がやり続ける部分であり、最も価値を発揮する部分と言っても過言ではないかもしれません。

理論や実験、計算だけでなく、データサイエンスも場面場面によって使いこなせる、そんな研究者が1つの理想形かもしれません。


5.さいごに

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)についてぼんやりとでも理解ができましたでしょうか。

MIは奥が深く、様々な分野での活用が期待されている一方、まだまだ先進的で扱える人も限られており、理解や浸透が進んでいない分野であると言えます。
そのため、様々な技術課題や組織課題が多くあり、なかなか経験の少ないメンバーだけでは社内で取り組みにくいのが現状です。
MI-6はそういった企業様の支援に強いので、お悩みの点があれば遠慮なくご相談いただければと思います。

なお、本日の類似の内容はWebセミナーでもご紹介しています。よかったら御覧ください。
マテリアルズ・インフォマティクスの基本とMI推進
https://mi-6.co.jp/videos/cat-video/828/


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