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ファン・フィクション掌編「コロガスカル諸島の戦い」


 前回までのあらすじ
 ダイスニコフ博士が開発した太陽系最強の巨大ロボ「魔神ゴッドラ」。その力を狙う魔法結社ファンブラーと革命軍サンシターは、ゴッドラの動力源であるストーン・ボールを集めていた。そんな激闘の最中、ストーン・ボールの眠るツナ島を目指すファンブラーの構成員サマリ・ヨムゾのチームは、かつてない窮地に立たされていた。

第n話:

「マズい」
「なにがマズい」
「ダイスが割れてる」

 サマリは構成員のルルブ・ヨゴレに手中のダイスを見せた。勢いよく投げ過ぎたためか、ぱっくりと割れている。本来なら背を向け合っているはずの3と4が、仲良く青空を拝んでいた。

「マズいな」
「マズい、本当にマズい」

 チームの士気が一気に下がった。暗雲が立ち込めるとはまさにこのことだ。すでにツナ島が地平線の先に見え隠れしており、仇敵の結社であるサンシターの船影も遠くで揺れていた。

 というのも、彼らファンブラーとサンシターの船には「乱数式長距離攻撃兵器・ダイス砲」が積まれており、その砲撃によって敵艦隊を沈める――角度から威力に至るまで攻撃のすべてをダイスに依存しているのだ。なお、古典賽子弾道学における最近の研究では、7がもっとも出やすいということがわかってきた。

「でもよ、物は考えようだぜ」

 俯いていたルルブが勢いよく顔を上げた。彼はサマリからダイスを奪い、甲板に備え付けられている皿の上に投げた。割れたダイスは当然ながら3と4を示していた。

「これがあれば、出目を弄れるじゃないか。指定の番号の敵船を確実に狙えるぞ!」

 まるで魔神ゴッドラが眼前に姿を現したかのように、チームの全員が船上で狂喜乱舞した。奇跡だ、おれたちは奇跡に出くわしたんだ! サマリは感動のあまり船から落ちそうになったほどだ。

 一方、サンシターはダイスを六個用意し、それぞれの数字に塗り替えていた。



*****



 前回までのあらすじ
 ツナ島、ムシシコシシ島、ヨゴパマ島にそれぞれ同時に上陸したファンブラーとサンシターの両チーム。三つの島の海岸は一瞬即発の睨み合いとなっており、激突は必至だ。メタ的な話で恐縮だが、ここで各島でバッティング処理が行われ、多い方から少ない方を引き、残った人数分だけ上陸する。文章にすると非常にわかりづらいのだが、読み合いができないヤツが全ツして負けるフェイズという理解で問題ない。

第n+1話:

 ツナ島海岸は穏やかな夕陽に包まれていたが、阿鼻叫喚の様相であった。

 白黒の帽子が入り混じり、ぽこぽこと殴り合っている。スパイと傭兵も現れ、カナヅチのロボットだけが浅瀬で溺れていた。

「よし、前線を押し上げるぞ、突撃!」

 サマリが号令を上げ、一気に砂浜を駆け出した。本土へ押し入ると、祭壇に鎮座するストーン・ボールが目に入る。そのあまりのまぶしさに、思わず立ちすくんだ。それが失敗だった。

「いただき!」

 サンシターの三下が滑り込み、祭壇からストーン・ボールを奪ってしまった。それにより、両陣営のストーン・ボールの所有数は、ファンブラーが6個、サンシターが7個になった。目標の10個まで遊びはあるとはいえ、己の失態にサマリは肩を落とす。そんな彼にルルブが近寄る。

「おい、あんまりガッカリするなよ」
「そ、そうだな」
「結局は賽の目次第なんだしよ」
「それは言っちゃダメじゃないか……?」

 だがそのとき、さっきまで五月晴れだった空に突如として重い雲が溜まり始め、稲光が走った。両陣営ともにどよめきが起こる。彼らの不安は次第に疑念になり、ついには確信へと変わった。そう、魔神ゴッドラが起動したのである。

「そんな! まだサンシターは7個しか持ってないじゃないか!」
「違うんだ、サマリ」

 ルルブはやけに真剣な表情でサマリの顔を真っ直ぐ捉えた。雷光に明滅する彼の顔を見て、サマリはすぐに悟った。ああ、なんて恐ろしいことを。

「ウチのアジト、遠いだろ? 終電が気になるからさ、おれから言ったんだ、短縮ルールのほうでやろうって」

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