ドラマとゲーム性は両立するのか――「雰囲気ゲー」三選

先日、友達に「雰囲気ゲーってつまんなくない?」と言われた。「ドラマが見たいなら、ドラマでいいじゃん」とも。


わかる。


かくいう自分も『Fire Watch』は飽きてしまった。(とはいえ『Everybody's Gone To The Rapture』『フィンチ家の屋敷で起きた奇妙なできごと』は熱中してすぐに一周したけど)

ほとんどの時間はただスティックを前に倒しているだけで、ロアを集めて睨めっこしたり、景色を見たり、カットシーンを眺めたりする……ウォーキングシミュレーターなどに代表される一部の雰囲気ゲーは、本当にゲームと呼べるのかという疑問はある。


なので、ゲームでしか味わえない雰囲気作りに成功している作品のなかで、多くの人に勧められそうな作品を並べてみようと思った。

先日の記事で『アサシンクリード オデッセイ』という大作を勧めたので、小さいゲームが好きな人はこちらの記事を読んでくれれば……といった向きもある。


1.Gone Home

画像1

言わずと知れたウォーキングシミュレーターの傑作。

「結局ウォーキングシムか」「知ってるよ、家に帰るやつだろ」というゲーマーからの厳しい幻聴が聞こえてくるが、それでもやっぱり『Gone Home』は遊んでもらいたいと思う。


久々に帰った実家を歩くだけ……けれど、目に止まる家具やアイテムひとつひとつには、配置や意匠にすら意味があるし、一家の思い出や歴史がぎっしりと詰まっている。お父さんが出版社から突っ返された著書や、友達と貸し借りした格ゲーなど、そこにあるのは普遍的且つパーソナルな日常だ。

無理に作られたキャラクターではなく、モノを通して人々の想いに触れるというメカニクスは、日本人である我々にも非常にストレートに伝わってくる手法でもあるだろう。


加えて、あのエンディング(そしてそこに至るまでのストーリーテリング)。小説でも映画でもほぼ見たことのない題材だったので、とても新鮮だった。

家族や友人とすれ違ってしまった、他人の想いにどうしても鈍感である……そういったスティグマを胸中に抱えている人にはぜひやってもらいたい作品である。


……え?  ゲーム性?

PS4版には「ホームランナー」というトロフィーがある。

「拡張機能を使用せず、ゲームを1分以内にクリア」というものだ。

勝手知ったる自分の家の廊下をインベタし、イベントフラグを一瞬だけ触ってコーナーのぎりぎりを攻める姉貴の姿は、さながら豆腐屋のせがれ。静かな遠雷の環境音も、そのうちNight of Fireに聞こえてくるぞ!


2.イリスと巨人

画像2

つい最近steam入りした『slay the spire』ライク。


こちらのシナリオは非常にわかりやすく、心を痛めた少女が自らの心象風景のなかで、精神を傷つける悪魔と戦うというもの。

戦闘はサイド寄りのクォータービューで、ぎっしり詰まった悪魔たちを前から順番に倒していくことで進む。攻撃に使用するカードには、1行分倒せる斧や、3つ先まで燃やせる炎などが入っており、基本的にはどんどん消費されていく。デッキアウトかHP切れでゲームオーバー。

キャプチャ

(少ない強カードに圧縮していくドミニオン的デザインではなく、系統の似たカードをストックしていく点は『Phantom Rose』ライクというほうが近いかもしれない。しかし、キャラが可愛い)


多くはネタバレしないが、とあるボスのデザインが非常に良い。特に、slayライクをいくつか遊んだことのある人間には、してやられた感のある仕掛けになっていて、忘れられないゲーム体験となった。


イリスの物語は、ステージや戦闘中に(邪魔しない程度に)淡いタッチのカットシーンで描かれ、多くを語らないながらも旅路のアクセントとなっている。

ローグライト的な前のめりさではなく、背中を押されながらフロアを上がっていく感覚は、他のデッキビルドゲームでは味わえない面白さがあった。


3.Glass Masquerade/Glass Masquerade2

画像4

ステンドグラス・ジグソーパズル。

この説明だけで、飛びつく人もいるかもしれない。この世で一番面白いゲームは、ピンボールかジグソーパズルかお絵描きだと言われても、どれも納得できるし。


とにかくパズルが美しい。触ったら指が切れるのではないかというほど、冷たく鋭く輝いているピースを、くるくると回して嵌め込んでいく作業は、修復士にでもなったかのよう。

その上、グラス・マスカレード無印はステージが世界地図になっており、土地や風土に根差した画像が出来上がるので、ちょっとしたクイズを味わえるのも魅力である。

(バラエティが増えた2も好きだけど、無印の世界旅行フレーバーのほうが個人的には良かった)


音楽も、主張が激しくない割にしっかりと印象に残る作りで、良い感じに眠気を誘う。

眠れないし、作業もしたくないし、かといって考えるゲームや読書もしたくないという夜には、グラス・マスカレードは最適だと思う。


現実で用意したら家が買えるだろうパズルが、steamだと500円だぞ!


4.まとめ

本当は真っ先に『Grim Fandango』が浮かんだが、あれは単独記事を書くべきだと思っているくらい好きなので、一旦保留。

特に『イリスと巨人』はアップデートで今後化けていくと思うので(『Phantom Rose』も別ゲーかと思うほど面白くなったし)ぜひチェックして欲しい作品である。

以上、雰囲気ゲー三選でした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?