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未来を壊さない技術開発

今までにない未来を創り出そうと考えるとき、新しいものや技術の開発に焦点を当てがち。しかし、この世界のありようは多くの要因が複雑に絡み合ったシステムをなしていて、ものや技術もそれを取り巻く環境や世界から独立して存在するわけではない。新しいものや技術が社会的に受け入れられるためには、まず、それを必要とし、当たり前のように使いこなす世界が存在する必要がある。

システムとしての世界の構造を意識しないまま新たな技術を世界に投げ込むと、想像もつかない社会変革をもたらしてしまう可能性が高い。特に、我々の技術開発力が急激に高まり既存の世界を大きく変える力を持ってきている現代にあっては、システムとしての世界のありように対して盲目のうちに次々と開発を進めることには大きなリスクが隠れている。より良い未来を創ろうとするのであれば、新しいものや技術自体の開発を考えるだけでなく、社会のつくりや価値観のあり方の革新を同時に、もしくは先に考えていく必要がある。

ただ、この点は、論理的に考えると納得しやすいが、そこには難しさもある。一番厄介なのは、システムを直接創り出すことはできず、具体的に創ることができるのは常に個別のものや技術でしかないという点。加えて、一般的に、ものや技術の革新は細分化された専門領域での研究の中で、より体系的な未来像やビジョンとは切り離された環境の中で起こる。そのため、新しいものや技術の開発はどうしても「社会から浮き」がちだ。

だからこそ、新しいものや技術の開発は、それらが世界と相互作用をする中で、その周りにどのような世界が立ち上がるのかを想像し、確認しながら慎重に進めることが重要になる。技術開発によって生み出されるモノやサービスのインパクト、破壊力が大きくなればなるほど、その重要度は上がる。今まさに目の前で目まぐるしく展開される chatGPT などの生成系AIをめぐる議論や動きは、それをよく表している。

我々の俯瞰力、判断力、理性的思考力は、我々が手にしている多くの危険を内包する技術開発力をうまく制御し、周りの世界や人間の社会や人間性自身を破壊せずに世界をより良くしていけるだろうか。それが今、問われている気がする。

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