見出し画像

理Ⅰから工学部へ

皆さんこんにちは!工学部三年の平崎です。

先日とうとう3Sセメスターの全て試験が終了しました。しかしながら「試験も終了したしやっと夏休みだ!!」とはならず、残ったレポート4本の処理に追われています。尤も、首都圏感染爆発の中、ステイホームでもしてオリンピックの観戦をするのが推奨されているような気配も否めません。

さて、本日は私の進学振り分け体験記を(少しコンパクトにまとめて)お届けしようかなと思います。

私の進学先は工学部の物理工学科(通称物工)というところです。他にも物理学が学べる学科としては言わずと知れた理学部物理学科(通称理物)、そしてやや知名度は劣るかもしれませんが教養学部の統合自然科学科があります。キャンパスは本郷キャンパスではなく駒場キャンパスになります。(ともあれ、このオンライン授業が主流のご時世ではキャンパスの所在位置などさして問題にならない野かも知れませんが、、、)

本日はこれら2学科と物工の違いを明確にしつつ、私の進振り体験を書き綴りたいと思います。

ちなみに、物理工学科の公式HPに、以下のURLから飛べますので興味のある方はご覧ください!

余談ですが、つい2, 3日程前、HPをリニューアルしたみたいで、以前とは比べ物にならないほどオシャレで見やすくなっているので是非ご覧ください!

①物工と他2学科では何が違うの?

まずこれが第1の疑問点ではないでしょうか。かくいう私自身も入学当時は物理を学べる学科と言われれば理物しか知らず、教養の統合自然科学科については2年生に入ってから存在を認識しました。とはいえ、前期教養の物理系科目の講義(必修の力学、熱力学、電磁気学に加え、選択科目の量子論、統計物理、相対論、振動波動論etc)の担い手は多くは統合自然科学科の教員であり、東大に入学した理系学生の皆さんは統合自然科学科の教員の方々から物理の基礎を教わることとなります。

さて、脱線はともかく、物理系3学科の違いを紹介すれば

・理物、統合自然科学科では物性理論に加えて素粒子理論などの高エネルギー物理学や宇宙理論も扱うが、

・物工では物性および量子コンピューターや量子情報を重点的に扱う

といった点でしょうか。その分カリキュラムにおいても、物工では相対論などの扱いは比較的軽め(とはいっても、カリキュラム的には一般相対論も4年生までにちゃんと講義で扱います)に抑えつつも、その分固体物理学など物性理論に関わってくる項目をかなり重点的に扱います。

その一方で、電磁気学や量子力学、統計力学などの物理学の基礎理論も網羅しているので、たいして3学科内に差がないと言う意見も聞かれます。実際に学部が物工で大学院から理物に行った先輩、もしくはその逆を辿った先輩も過去には複数おられたと、聞いたことがあります。

実際に私も3Sセメスター(今年の4月から7月末までですね)物工で講義を受けてみて感じたことは、工学部だからと言って応用ばかり扱うのではなく、講義は基礎的な物理学を重点的に扱いますし、さらには結局1番実力がつく瞬間は、講義を聞いている時ではなく、自分で納得できない点や、不思議に思った点、もやもやする点を、納得するまで専門書にあたって調べたり、友達と議論して結論を出した時だと(少なくとも私は)思います。そういった点では、学科選びよりも結局は自分がどこまで興味を持って勉強していけるかが本質的な問題な気もします。

結論としては、学科選びも当然重要ですが、あまりそれに惑わされすぎず、自分の興味のあることについて、勉強し、考え続けていく姿勢が大切なのだと思います。

それでも伝えたい、物工の魅力や私の志望動機は次章!

②物理工学科の魅力

①でも書いた通り、物性分野や量子技術分野に強いことが物工の1つの特徴でしょう。ただ、それだけが物工の魅力ではありません。

僕が考える、物工の1番の強みは”計数工学科の姉妹学科である”ことでしょう。虎の威をかるなんとかみたいですが、もう少し詳しく説明すると、物理系の科目に加えて、計数工学科の講義が履修できますし、履修が推奨されています。

聞いている限りの話になりますが、理物だと物理一筋、統合自然科学科でも科学中心の履修となるらしく、計数の勉強もできるといったところも物工の大きな魅力でしょう。

では、具体的に計数工学とは何を学ぶ学科なのかといえば、巷では工学部数学科と言われてもいる通り、数学の勉強を中心としつつ、工学的な要素も兼ね備えた学科となっています。

具体的には、近年人気上昇中の人工知能を扱うための統計や確率論、グラフ理論などを学ぶ講義もあれば、機械システム構築のための制御論や回路学、信号処理論などを扱った講義もあります。

このように、物理の勉強を中心としつつも、純粋数学的な基礎数学理論から所謂工学部的な制御論などの学問について学べるのは物理工学科ならではの特徴でしょう。

この点については物理工学科の教授であり、量子コンピューターの世界的権威である古澤教授も、物理工学科の強みとして述べておられました。これこそ虎の威を借る狐ですね笑。

少々脱線にはなりますが、教育系ユーチューバ―のヨビノリたくみさんのYoutube動画において、物工の教員との対談の動画があるので興味のある方はご覧ください。物理工学科のHPにもリンクがあるようです。

実際に私も、2年生の進学振り分けに際して、計数との連携に強く魅力を感じ、第1希望としました。2A, 3Sと履修した今でも、やはり計数工学科科目は興味を持てましたし、特にグラフ理論や測度論及びそれを用いた確率論の勉強はとても面白いと感じました。

最後に、もう一つ述べるとしたら、実際今計数工学科の教員をされている方にも学部は物工出身だという方が複数おられます。物理の勉強を中心としつつも、他の様々な分野にも触れられるという点が物工の大きな魅力だと私は思います。

③前期教養を振り返って

さて、これまで延々と学科の紹介(宣伝?)をしてきたのでこの章では僕の駒場時代について振り返りたいと思います。

とはいっても僕が2年生になる4月からちょうど緊急事態宣言が発令されコロナ禍に突入したので1年生の話が中心となります。

入学当初は、進振り先についてそこまで深く考えてはおりませんでした。理科一類を選択したのも、大学でどうせ時間を割いて勉強するなら理数系の分野がいいなあといったやや漠然とした思いが理由でしたし、実際四月に入学してからは、進学先の決定よりも新しいクラスというコミュニティでの人間関係の構築や、サークル選び、上京してからの一人暮らしなどに気を取られていた気がします。

とはいいつつ、流石に大学での勉強も全くないがしろにしていたわけではなく、ある程度は(笑)真面目に授業にも出席し、テスト勉強も行っておりました。進振り点が足りないと学部選択の際に云々、、、といった理由もありますが、それ以上に特に理数系の分野に後期で進むとなれば、前期教養の理数系の科目の理解が浅いようではスタート地点にすら立てないと言った思いもありました。特に、理物は進振り点が高く云々といった話もありますが、ひたすらに高い点数を稼ぐ必要があるというよりは、前期教養で扱う内容ぐらいしっかりと身につけた人が進学できるという意味ではあまり問題ないのではないかなとも私は思います。

脱線はともかく、そんな感じで大学での勉強と新生活を楽しみつつ、1年生が終了しました。

このころにはザックリと理数系の分野に進もうかなと決めていた気もします。進学先の候補には、理学部の物理学科や数学科、情報学科(通称理情)に加えて、工学部の物理工学科や計数工学科を挙げていました。

ザックリ説明すると、理学系の勉強をしたいと思いつつも、近年ブームの情報系の学科にも惹かれていました。

そんな中で、数学に関しては自分より優秀な友達もたくさん見てきたので割と早々に選択肢からはずし、理学部物理学科も理学部は就職に、、、といった噂を聞いて足踏みし、選択肢から外しました。今思えばやや消極的な理由だったとも思います笑。

最後まで割と迷ったのが物理工学科と計数工学科、理学部情報学科でした。理情に関しては、私自身そこまでコンピューターには強くないものの、近年のAIブームとともに、私がクラスで最も仲良くしていた2人の友達が理情への進学を決めていたことも大きな理由でした。前期教養のときもこの2人と切磋琢磨して勉強していたので、(これを読んでいる読者の皆さんは意外に思われるかもしれませんが)進路選択において友達の存在は想像以上に大きかったです。

計数工学科に関しては、AIブームと共に、数学をメインに勉強する学科と聞いて興味をもっていました。ある意味下手の横好きだったかもしれませんが、私自身数学が好きというのは1つの強みだと思っておりましたし、それを活かしつつ、近年はやりのAIに触れられる学科として大変惹かれておりました。

物理工学科は、物理が勉強できる学科ということで候補に挙げておりました。また、学科説明会を聞く中で、古澤教授をはじめとした、世界的に権威のある教員の方々が所属していると言ったことも大きな魅力でした。結局、色々と迷った挙句、物理工学科に進学しました。

④進学先の学科で1年間過ごして

私の同期の進振りの記事で、あまり学科内定後の話は見受けられなかったので個人的な体験談になりますが、少しここに綴ります。

まず、後期課程は(散々言われている事ではありますが)忙しいです。さらにやはりその学科に興味を持ってきている時点で学科の友達も皆優秀で驚かされました。専門科目も進度、内容ともに前期教養と比べ物にならず、後期課程が始まった頃は面食らっていました。

ともあれ、やはり自分が興味をもって選んだ学科ということもあって、学科での勉強は楽しかったです。前期教養では、興味をどうしても持てない科目の勉強は億劫でしたが、後期課程ではそのようなことは減ったかと思います。内容はHardですが、自分が興味を持っている分野であるので、学科での勉強はあまり苦ではありませんでした。

とひとまず、後期課程での良かった点を述べてきたので、悪かった点も述べます。

まず初めに、3Sセメスターでは実験が辛かったです。前期教養の物理学実験はオンラインだったので3年生になり初の対面実験をしたのですが、これが大変でした。私に取っては、実験でのデータの測定も楽しいものではなく、家に帰ってからそれをレポートにまとめ上げるのも進んでやる気にはならず、なかなか苦痛でした。尤も、実験はサイエンスの根幹をなす極めて重要な分野ですし、数多くの立派な実験の先生や実験を楽しんでいる学生もいるので、私の適性の問題であったのかもしれません。でもやはり私は、座学の方が面白いという印象をぬぐいきれませんでした。

また、第2章で強調した物性理論の講義、特にやや物性の各論に入る固体物理学も対して興味を持てませんでした。

そうして興味を持てない講義もあった一方基礎的な電磁気学や量子力学などの座学、及び演習は興味をもって受講できたと思っています。更には、複素関数論などの物理でも必須の数学の講義や、先ほど述べた計数の測度論やグラフ理論などは興味を持って勉強でき、大変楽しかったです。

取りとめのない話が続きましたが、こうして学科生活を過ごしてみて、自分の将来の方向性もおぼろげながらに定まったとも感じています。自分がやってて楽しいことを見つけることは勿論重要ですが、楽しくない事に気が付けたのもすごく良かったと思っています。具体的には、将来研究をするなら実験や物性ではなくどちらかというと量子技術関連のことをやりたいな、就職するにしても企業で物性関連の研究よりは、理論系の研究を行なったり、もしくは自身が培った論理的思考力を活かせる、一見専攻と関係のない就職先でもいいかな、、など考えております。尤もすべてまだ自身の願望で、その道を選択できるほどの実力をつけるのが先なのですが、、、笑。

以上大変長くなりましたが、最後に(頑張って)話をまとめると、私の意見としては、将来の選択においては、膨大な選択肢を前に悩みつつも、結局は自分の興味を優先することが重要であり、たとえ選んだ先で思うように行かない事や楽しめないことがあっても、それによって自分の進むべき道が見えてくることがある、という感じです。

以上読んでいただきありがとうございました。物工のことでも進路のことでも何か相談がある方は気軽にスタッフに相談してください。

ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?