2024年6月実施 第1回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【英語】
全体概観:標準
リーディング、ライティング、リスニングのさまざまな力を問われ、どの問題も簡単ではなく、処理速度も求められるという、東大英語の要点が詰まったセットでした。また、人種問題についての文章や自由英作文など、英語に限らずこれまでのあらゆる学習・生活の中で見聞きしたことが活きてくる面もあります。初めて東大型の問題に取り組んだという人は、今回の手応えを一つの目安として今後の学習に役立ててください。
1A:標準
各段落や文章全体のテーマは掴みやすいものの、タバコや化石燃料という(それ抜きでは逆に内容・文字数不足に陥るであろう)比較対象にも触れるためには文字数を抑える工夫が必要です。これまでの学習においては論点を把握する訓練が主で、和訳こそすれ、シビアな文字数制限のために日本語に難儀するという経験は少ない人が多いのではないでしょうか。解答例などを参考に、簡潔な表現の習得に努めましょう。
1B:標準
「人種が生物学的根拠に欠く」という主張には意外性があり、1Aに比べると本文を読み進めづらかった人もいることでしょう。一方、中には「ヒトの遺伝的多様性は他の類人猿と比べて小さく、しかも「黒人」の中での多様性の方が人種間の差異より大きい」といった話を聞いたことがあって、すぐに納得できた人もいたかもしれません。後者の方が問題に取り組みやすいのは確かですが、しかし、問題を解くために必要なのは、文章の流れを掴み、空欄に入るべき内容を考えることです。「(話題の提起→)主張→説明(→結論)」という基本的な構造をよく理解しましょう。
2A:標準
ここ数年の東大英語の英作文のテーマを見てみると、この問題のような硬い話題が多いように感じます。論理的に主張を述べる場合、そのような硬い話題の方が論を立てやすいことが多いです。例えばこの問題では、まず、問われているのは「どう考えるか」ですから、現実として正しい/間違い、理想として正しい/間違い、どちらとも言えないなど、主張は幾通りもありえます。次に、「有名人の発言の方がメディアに取り上げられやすい」、「SNSで一般人の投稿したフェイクニュースが大きく広まったことがある」、「自分で考えることなく特定の1人の意見に追従して失敗した」など、各主張に対してそれをサポートできそうな具体例を思いつけるはずです。硬い話題の場合、現代文の学習やマスコミによる報道などで知った事例を活かせることがあるので、この点において柔らかい話題より取り組みやすいかと思います。
2B:標準〜やや難
大学受験の和訳・英訳をプロの通訳や翻訳に比するのは失礼かと思いますが、それにしても、この問題自体が逐語訳の答案では不足であるという点で自己言及的であり、お洒落な問題です。詳細は解説を読んでいただくとして一点強調しておくなら、日本語を英訳しやすいものに言い換えるのは必須技術です。例えば下線部冒頭を「通訳は『縦のものを横にする』ような単純な行為だから」と自分の言葉を付け加えて、内容の正確性が落ちるのも覚悟の上で英訳しやすいように言い換えてみる、そういう試行錯誤を通じて、どこまで有効な言い換えとして認められるかもここから見極めていきましょう。
3 (A):標準 (B):標準 (C):標準
初めて取り組んだ人には衝撃的な難易度かと思いますが、東大英語のリスニングとしては標準的です。共通テストと比べて難しい点として、音声が4〜5分と長い、題材が講義・インタビューなどで日常会話より難解、話者の発音が多様である、などが挙げられます。しかし五者択一の問題しか出題されませんから、事前に問題文と選択肢に目を通し、何を聞きとるべきか把握していれば格段に情報を拾いやすくなるはずです。また、1回目の放送で聞き逃した情報があっても、それがどのタイミングで聞こえてくるかを掴んでおけば2回目の放送で挽回が可能です。
4A:標準
問題文に「文法上または内容上の誤り」とある通り、間違いにもさまざまなパターンがあり、注意深く本文を読む必要があります。また、正しい文であるにもかかわらず文構造を取れなかったことで誤りだと判断してしまうという事態は避けたいものです。一般に、4Aには時間を掛けずに2,3問正解して他の問題に時間を回すという戦略が多いですが、逆に言えば、ここで素早く高得点を取れるほどに精読を訓練しておくとアドバンテージになります。問われる文法知識としては基礎的なものが多いですから、今後の演習においても、少なくとも解いた問題については解説をよく読み、精読力をつけましょう。
4B:標準
(ア)はよく見かけるような和訳問題ですが、(イ)では比喩、(ウ)では“no one is the wiser”という扱いづらいポイントがあります。文脈から文の意味を推測する訓練も大事ですがその前に、まずは(ア)で確実に得点できているかを反省しましょう。
5:やや易〜標準
一般的な受験勉強ではあまり触れないであろう、エッセイの問題です。ただし、基本的な語が意外な使われ方をする問題はなく、文章のテーマも論説文で見かけ得るものですから、特別な対策をしていなくともこれまでの学習で立ち向かう術はあっただろうと思います。よって今回重要だったのは、この大問にどれほど時間を取れたかでしょう。現時点での平均的な受験生が東大英語を頭から解いていると、最終問題である本文にはほとんど時間を掛けられないはずです。どの順番で解き進め、各大問にどれほどの時間を割くのか、これは東大英語突破に欠かせない観点ですから、これからの演習でよく試行錯誤してください。
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