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2024年8月実施 第2回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【物理】


全体概観: やや易

 全体として近年の東大物理と比較して点の取りやすいセットだと言えます。特に、第二問は電磁気学の学習を終えている人は短時間で高得点を狙いたい大問でした。第一問は誘導が丁寧で、問題文を正確に読み取ることができればある程度の点は取ることができるでしょう。第三問は計算は煩雑ではないものの現象がそれなりに高度であったため、熱力学に習熟していないと得点が伸びにくかったかと思われます。東大物理においては解答が完全記述式なので、正解することだけではなく、たとえ正解できなくても得点が得られる記述をすることにも重点を置いて復習を行うことが大切です。

第一問: やや易

標準的な車体の力学模型の問題です。仕事率の定義、運動エネルギーと仕事の関係、力のモーメントといった基礎的な事柄を理解し、問題文を正確に読み取ることができれば制限時間内で十分な得点を確保することが可能な問題だと考えられます。

I

仕事率や運動エネルギーの定義が分かっていれば丁寧に問題文を読むことで解ける問題です。rとRといった大文字と小文字の混同や添え字の誤り、正負の間違いといった些細なミスで点を取りこぼさないよう注意しましょう。

II

(1) これは落とせません。Ⅰで得た式を連立すれば解けますし、自動車全体をひとつの系として捉えて運動方程式を書くこともできます。
(2) 慣性力を含めた力、モーメントのつり合いを考えて立式すれば解ける問題です。ただ、今まで重心まわりの力のモーメントばかり考えてきたため慣性力による力のモーメントを考慮して立式した経験があまりない人もいたかもしれません。働く力をもらさず図中に書き込むことが大切です。
(3) 前輪、後輪のそれぞれが道路から離れない、滑らないという四つの条件の式を立てても解けますが、実際には前輪が道路から離れない、後輪が滑らないという二つの条件の式を立てるだけで十分です。このことに試験中に気付くことは容易ではないでしょうが解説を読んで理解を深めておきましょう。

III

IIが解ければ容易に解けますが、IIが解けていなくとも現象を理解できていれば答えることは可能だったのではないかと思います。最後の問題だからといって必ずしも難しいわけではないので、解ける問題を探し一点でも多く点を取りに行く意識は大切です。

第二問: やや易

直流電量下のコンデンサーとコイルの扱い、電気振動に関する基本的な問題です。設問数も多くないので電磁気学が得意な人なら制限時間内に完答を狙うことも可能でしょう。手を止めることなくこの問題を解くことができれば電磁気学の学習がよくできている証拠だと言えます。代表的な素子については、公式とスイッチの切り替えに対する振る舞いは把握しておきましょう。電磁気学の問題はほぼ毎年第二問で出題されるので十分に対策を進めてください。

I

(1) コンデンサーの電荷は直前の値を維持するということと、コンデンサーにおける電荷と電圧の関係が分かっていればすぐに答えられます。
(2) コイルの電流は直前の値を維持するということとが分かっていれば答えられます。
(3) 定常状態においてコイルを流れる電流、コンデンサーの電荷が一定であることが分かった上で回路方程式を立てれば解けます。
(4) 選択肢のすべてのグラフが正弦曲線となっているので振動中心と時刻t=0における値に注目しましょう。

II

(1) iが一定の割合で増加すると問題文にかかれていることもあり、正答率は高いでしょう。
(2) 電荷が最大となるとき、コイルを流れる電流は0であり、コイルを流れる電流が最大となるとき、コンデンサーの電荷が0であると分かれば、あとは回路のエネルギー保存を用いるだけです。本番で出題されれば確実に得点したい問題です。
(3) 自分でグラフを描く問題は東大でも何度も出題されています。特徴的な値と、連続性、微分可能性に注意して描きましょう。グラフの描き方についての指示がなされる時もあるので問題文を注意して読みましょう。

第三問: 標準

気体の膨張に伴い一定の割合で圧力が減少するような気体の状態変化の問題です。計算は煩雑ではなかったものの、現象を理解して制限時間の中で正解するのに苦戦した人も多いでしょう。ピストンにかかる力や気体の内部エネルギー変化などを丁寧に追っていく緻密さが必要になります。また、東大物理では答案は完全記述式で、解答用紙に書かれた方針や考察にも配点があると考えられます。このような問題で方針や考察を書いた答案の方が白紙の答案よりは点が期待できるでしょう。

I

ピストンにかかる力のつり合いの式から容易に答えを導けます。確実に取りたい問題です。

II

(1) Iと同じようにして解けます。これも合わせたい問題です。
(2) 解答のようにグラフを用いて求めるのがよいでしょう。熱力学をきちんと学習していれば取れる問題です。
(3) 熱力学第一法則を用いる問題です。この問題までは似たような問題を経験している受験者も多いでしょう。
(4) 熱力学における微小量の扱いに慣れてないと戸惑うかもしれませんが誘導にしたがってエまでは答えられます。オについてはつり合いの安定性について考察する必要性があります。ここで躓いた人は解説を読んでもう一度考察してみてください。
(5) (4)オができた人は容易に答えられたでしょう。

III

(1) 定義通り積分を用いて計算することもできますが熱力学第一法則を用いる方が解きやすいです。
(2) 定義通り計算するだけです。I、II(5)の結果を代入する前の形まではたどり着きたいです。
(3) エネルギー収支を考えれば前の問題が解けていなくても正解することができます。この問題のように最後の問題が簡単な場合もあるので注意しましょう。

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