2024年10月実施 第3回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【国語】
■第一問
全体概観:標準
少々解きにくい問題もありましたが、全体的には読みやすく得点を狙えるポイントも多いセットでした。今回の結果に一喜一憂することなく、どこができたのか、できなかったかをしっかりと分析して次に生かしましょう。特に、傍線文の分析や論理関係の整理と言った基本的な作業が疎かになっている場合は要注意です。今一度、現代文の基本的な解き方を確認しましょう。
(一) 難
傍線部のかなり後までいかないと根拠を拾えないというかなりトリッキーな問題でした。最初に本文全体に目を通してからの方が解きやすかったと思います。内容説明問題の原則は、論理関係を押さえて傍線部の各要素を言い換えるということに変わりはありません。ただし、時間があれば一度全文を読んでから各設問に取り掛かるといった方針をとった方がいい場合もあると教えてくれる問題でした。
(二) 標準
指示語の含まれる内容説明問題です。指示語の部分は確実に抑えて得点したいところです。「それ」の内容は直前の絶対時間とすぐにわかるので、後は解答欄に合わせて修飾すればいいでしょう。後半部は本文に直接の根拠があるわけではないので、本文を参考にしつつ自分の言葉で表現する必要があるので注意が必要です。
(三) やや易
理由説明問題です。この話は第八段落を受けて第九段落から展開しており、傍線部後は抽象化した後の話になっていることに着目すると、根拠を拾う範囲の決定は比較的容易だったと思います。後はその範囲を過不足なく要約すればよいです。
(四)標準
内容説明の120字問題です。付帯条件はありますが、まずは基本的な内容説明問題と同じ手順で取り掛かりましょう。すると、「その生活の仕方」という指示語を含む表現と「影」という比喩の処理が求められていることに気が付きます。これらを意識したうえで、本文から適切に根拠を拾えばよい答案が書けるでしょう。
(五)標準
(a)呼応はまず問題ないでしょう。(b)タイショウは同音異義語の多い言葉故、文脈の中でどの意味で使われているのかに注意を払う必要があります。(c)結語は普段使わない単語かもしれませんが、そうであっても文脈から推測可能でしょう。いずれにせよ、どれも間違いたくはない問題でした。
本文をあまり読まずに漢字問題を解いて点を落としたというような人は、本番で同じ過ちを犯さないように気を付けましょう。
■第四問
全体概観:やや易
テーマがはっきりとした文章で本文自体も読みやすいので内容の把握はさほど難しくなかったでしょう。筆者が組み立てた論理を適切に追っていけば解答に困ることはあまりないような問題でした。
(一):標準
内容説明の問題。まずは傍線部内の「そこ」という指示語の内容を直前から明らかにしましょう。そのうえで、「書物を読まないでよいという結論は出てこない」→「書物を読むべきである」という変換ができると十分です。あとは、傍線部の理由を端的にまとめてあげると満点です。
(二):やや易
内容説明の問題。「読書に『溺れる』」は明らかに比喩が含まれた傍線部ですから、比喩の内容を適切に紐解いて解答を作ることが求められます。東大の問題では比喩の説明が要求されることは非常に多く、そういった意味ではこの問題は文理問わず解けるようになっておきたいです。「溺れる」という表現が否定的なニュアンスを帯びていることを把握して直前二段落を要約すれば満点の取れる設問でした。
(三):標準
内容説明の問題。「顔容」はあまり普段使いする熟語ではないかもしれませんが、漢字から「顔つき、容姿」などといった意味を推測できるでしょう。ここでは、「本の『顔容』」という文脈で使われており、(二)と同様比喩表現であることがわかります。傍線部前後を適切に把握して比喩を解釈しながら傍線部の理由まで説明できれば満点の取れる問題でした。
(四):やや易
内容説明の問題。傍線部を分析して、「老残の日々」、「こうやって」、「消し去られることでしょう」の三要素に分解し、直前から根拠をひとつずつ拾っていけばよい問題でした。結果的に最終段落の要約に終始した形となり、難しくはなかったはずです。
■第二問
全体概観:やや易
出典が江戸時代の文章でしたので、読みやすかったという方が多いのではないでしょうか。メインで登場する人物は3人のみで、さらに場面ごとに2人までしか登場しないといったことから、話の大きな流れは理解しやすかったと思います。一方で、傍線部には重要単語や敬語が存在したり、主語や目的語となる人物が省略されているなど、難しいポイントもありました。地の文か会話の中か、誰の誰に対する気持ち・行動なのかや、話の流れといったものを理解した上で解答を作成する能力が試されていました。
文理1ア:易
「〜そむ(初む)」が「〜し始める」の意味だと分かれば直訳するだけです。「恋/ひそめ」と読んでしまうと誤読となってしまいます。男は中間に尋ねていますので、恋を潜めていたわけではありません。解答として記述する必要はないですが、誰が誰に恋心を抱いているのかも理解しておきたいです。第一段落では男が姫に恋心を抱き始めた経緯が書かれています。
文理2イ:標準
主要な登場人物は身分の低い男と身分の高い姫の2名であること→「思し召し入れ」が「思い入る」の尊敬語であること→「に」が尊敬の対象を主格とする格助詞であること→主語の「あなた」(=あの人・あちらの物の意)が姫を指していることの順で理解していくのがよいかと思います。話の流れとしては、男からの一方的な片想いだった恋心ですが、姫から男へも恋心が向けられ、両想いになっていくことが述べられています。古文の勉強では自立語や助動詞の暗記がメインになってしまいがちですが、助詞を押さえておくのも大事だということを実感させられる問題となっています。
文3ウ:やや易
理由説明問題ですので、前後の流れを押さえましょう。後ろでは場面が転換していますので、直前の内容を見ていけばよいということがわかります。主語がわからなくなってしまっても大丈夫、設問に書いてあります。このようなことはよくあるので、設問文もよく読むようにしましょう。さて、長歌の内容が取りづらければ一度飛ばして、「長歌に(中略)との御事、このかたじけなさ、(傍線部)」から解答の骨組みを作っていきましょう。「御事」と尊敬の接頭語がついていますので、長歌は姫から贈られた物であるとわかります。その長歌が「かたじけない」(=畏れ多い・ありがたい)と感じたから、というのが解答の骨組みとなります。あとは長歌の内容を要約すれば満点となります。ここでも難しい箇所はありませんので、「一緒に逃げる」、「命懸け」といったポイントを含めればよいでしょう。
文1エ理1ウ:やや難
「せむかたなし」(=なすべき方法がない・どうしようもない・仕方がない)という単語を思いつけばすぐにわかるかもしれませんが、思いつかない場合でも品詞分解して一つ一つ訳していけば部分点はもらえると思います。「せんかた/つき/ぬれ/ば」ですが、「せ/む/かた/つき/ぬれ/ば」と分解してもOKです。順にサ変動詞「す」未然形、婉曲助動詞「む」連体形、名詞「かた」(=方法)、カ四動詞「つく」(=尽きる)連用形、完了助動詞「ぬ」已然形、確定条件接続助詞「ば」ですので、直訳すると「するような方法が尽きてしまったので」→「なすべき方法が尽きてしまったので」となります。ここまでで及第点かとは思いますが、傍線部の前後に繋がるように「なすべき方法」を説明できると満点です。そこでは男や姫が生活を送っていくために様々な仕事をしていることがわかります。そこで「生活していくために」と加えればよいでしょう。解答例ではより意訳をしていますが、ここまでで及第点はもらえると思います。
文1オ理1エ:やや難
品詞分解後は「いかに」がどこに係っているかを特定しましょう。「おくれたり」には係っていないので、「女なれば」の接続によって流れたと考えるのが自然です。そこで「いかに女なれば」をカギカッコで括って繋がるように訳していきましょう。「『いくら女であるから』といって」までが定まります。「おくれ」を「先立たれる」と訳すと、前の部分と繋がりません。江戸時代の文章では、重要古語と同じ言葉であっても現代語に近い意味で用いられていることがあります。そこで、現代語の「遅れる」を当てはめ、何に遅れているのかを補えばOKです。男は捕まった夜に「成敗」に遭っていて、おそらくこれは殺された、あるいは切腹したということでしょう(解説では「死罪」(=切腹)となっています)。その後、姫は自害を勧められますが、姫はそのような考えはなかったので、(傍線部)と来ます。よって遅れているのは、自害の実行ということになります。解答例はさらに意訳していますが、ここまでで及第点はもらえると思います。
文4カ理3オ:標準
姫の発言中の説明問題です。ここで姫はGeneral to Specificの要領で発言していますので、具体的な説明については後続の内容をまとめましょう。「おのおの世の不義という事を知らずや」までと「我少しも不義はあらず」までの2点を押さえればよいでしょう。1行しかありませんので、短く要約することを心がけましょう。
文5キ:やや易
直訳した上で、主語を補えばほぼ満点になると思います。「出家する」や「亡くなる」などの忌み言葉には類義語がたくさんあります。単語帳などでまとめて押さえておくとよいでしょう。
■第三問
全体概観:標準
詩が2作品出題されました。解説にある出典一覧を見ておくと、東大入試漢文における詩の位置付けがわかりますので、ぜひ読んでおいてください。とは言っても、今回はそこまで漢詩として身構える必要はなく、通常の散文と同じように書き下していけばよいかと思います。本文の説明として「年貢の追徴に苦しむ農民を詠じた」とありますから、大きくはずれずに読んでいけたのではないでしょうか。漢文は各設問ごとに正確な知識が問われますので、句法、重要漢字についてはしっかり押さえておくことが大事になってきます。
文理1a:標準
注は読む前に確認して、本文に印をつけておくなどすることをおすすめします(古文も同様です)。今回は傍線部3文字のうち1文字は注で訳が示されていますから、あと2文字だけ考えればよいことになります。「喜」は「おどす」と対比されています。本文の流れを踏まえて回答しましょう。解説に別解もついていますのでよく確認しておいてください。
文理2b:標準
「三百銭」をどうするのかというのは4行目に書かれています。実質4行目の要約問題と言ってよいでしょう。租税にもお酒にもならないような端金ですが、足を運んで来てもらったせめてものお礼に渡すということです。問題を解いていて悲しい気持ちになってしまいました。
文理1c:標準
2bの問題とも連続してきます。書き下すと「君と一酔を成すに堪えざるも」となります。主語は傍線部b「三百銭」で、いかにこのお金が少ないかということをこの句で説明しています。里正は税は徴収することができないとは承知の上で取り立てに来ているのですが、2行目にある通り酔う(=一緒に酒を飲む)ことぐらいはできるのではと考えています。三百銭ではそれすらできないということをここで述べているので、「足りないが」ということになります。傍線部の現代語訳では後続への繋がりにも気を配りましょう。
文理1d:やや易
Ⅰの詩に引き続き、Ⅱの詩でも引き続き農民に課せられた税について述べられています。傍線部直前では衣服を売り税金を納めたということが記されています。ギリギリで税を納めてなんとか「免」れている「縛」と言ったら...、そうお縄です。現代でも税金を払わないと資産が差し押さえられ、場合によっては捕まりますが、それは古代中国(南宋)でも同じだったようです。
文3e:標準
5行目以降の流れを大きくまとめましょう。5行目では衣を売っていたときの話が、6行目では去年長女と別れた話、7行目では次女とわずかばかりの穀物を換えた話、8行目では来年も三女がいるから安心という話をしています。はっきりとは書かれていませんが、(おそらく一昨年までは)税を納めるために衣服を売ってなんとか逮捕は逃れていて、「去年衣尽到家口」、長女、次女の順に売っていき、来年は三女を売るつもりだとなっています。傍線部では去年長女と別れることになった経緯が書かれています。税を払うために売っていた衣類がもうなくなってしまったので、家族(「家口」)を売らなければいけなくなったということです。読んでいて本当に辛いです...。
文4f理3e:やや易
6行目以降で娘を順番に売っていっており、綺麗に構造化されています。去年は長女(6行目)、今年は次女(7行目)、となると来年は三女だなということで8行目を見てみると「室中更有第三女」ということで予測した通りです。ということはなぜ「明年」(=来年)の租税の苦しみを怕れていないのかといえば、三女を売って税に充てることができるからです。
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