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2024年6月実施 第1回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【生物】


全体概観:標準


6月段階での習熟度を考慮して少し難易度は控えめになっていたのではないでしょうか。
実際に東大の問題を見たら分かりますが、登場するワード自体は教科書レベルで十分理解できるもので、その組み合わせで馴染みのない概念を取り扱っていくことが多いです。実際に東大で行われているような研究テーマが題材に上がることも多く、最先端の研究を追体験できると考えると非常にテンションが上がりますね。
初見のテーマを扱う難問に怯えるだけではなく、興味を持って食らいついていけると知見がどんどん広がっていきます。受験勉強としての範疇を超え、新しい世界を知るキッカケとして東大レベルの問題にチャレンジしてもらいたいと思います。

1:妊娠時の血糖調節、ミトコンドリア糖尿病 やや易


・グラフから得るべき情報がわかりやすく、そこまで複雑な分析は必要とされませんでした。
・知識問題を取り切るのにはやや詳細な知識が必要とされたため、今は難しくても早いうちに定着させたいですね。
・ミトコンドリア病の遺伝については、父由来、母由来で遺伝するものを今一度整理しておくと良いでしょう。性によって生じる遺伝の差の例としては他に伴性遺伝などがあるため、これを機に周辺知識も身につけましょう。

A:易
髄質と皮質、それぞれから分泌されるホルモンはしっかり覚えましょう。豆知識ですが、アドレナリンは副腎を表す英単語である"adrenal"に由来して命名されているんですよ。

B:やや易
「成分に着目して」とありますが、インスリンがペプチド系だと知らないとどうしようもないですね。ペプチド系と分かった上で、消化器官による分解という考えに至らないといけないので初見だと少し難しいかもしれません。インスリンに関するこの話題は頻出寄りではあるので、これを機に覚えましょう。

C:やや易
確実に違うもの、確実に合っているものは即座に判断しましょう。肥満細胞は理解度がやや低いと思われ、食細胞かどうか迷った人もいるのではないでしょうか。肥満細胞はヒスタミンに関わるもので食細胞ではないのですが、あやふやな理解だと念の為選んでおく…ということにもなりうるので周辺知識も含めて復習しておきましょう。

D:標準
単純なグラフの読み取り問題かと思いきや、グラフには感受性に関わる情報はなく、リード文冒頭にしれっと書かれている記述を考慮する必要があります。急いでいても、リード文は落ち着いて整理しながら読みましょう。

E:標準
対照実験に関する問題で、「比較したい条件以外の条件は変えないようにする」ことを意識しましょう。マクロファージの量が比較したい条件なので、それに用いる「マクロファージを抑える機能」以外は極力変えないでおきましょう。抗体そのものを取り除くのではなく、「機能」だけを取り除くのです。

F:本実験のまとめ問題です。リード文、実験1〜4、未使用の情報があればここで使うと考えた方が良いですね。

(あ)易
実験4では、アポトーシスとネクローシスの可能性が一気に排除され、実験3を見ると明らかに物質Xによるものだとわかります。複雑な情報処理はないですが、ここからさらに図表やグラフが増えると難易度は上がるでしょう。 

(い)やや難
「生物学的意義」と言われてもどのように書けばいいのか…と少し困惑した人もいるでしょう。直接的な機能と、それがもたらす重要性、をセットで書いておけばいいと思います。

G:やや易
(1)〜(4)の選択肢はどれも、文章としては正しいです。間違っているものを探すというよりは、より問題に合致しているものを探す意識の方がいいかもしれないですね。発病と密接に関わる選択肢は、(2)と(4)です。

H:やや易
考えられることとありますが、受精等に関する知識がある程度ないとおそらく考えつくことは難しい、ある意味では知識問題とも言えるでしょう。父由来のミトコンドリアは、精子のモーターとして卵子に進入する以外に子に伝わる経路がないことを踏まえると、その段階で分解されるのではないかと考えられます。

I:標準
「全て選べ」系は、全部の選択肢に目を通す必要があるので、特に時間がキツい試験中には難易度が上がります。「必ず」という表現は「100%」の時にしか使えない表現で、「99%」でも「必ず」とは言えないです。そのため、反例となる可能性が1%でもあるなら否定できる、ということを意識しておけば判断はある程度楽になることでしょう。 

2:光阻害の回避 標準


・植物の光合成経路についての周辺知識をある程度極めておかないと取り組みづらい問題ではあります。
・IIなどは、登場する物質は教科書レベルのものですが、それらが引き起こすあまり馴染みのない反応がテーマです。このように知識を紡いで新しい知見を得られることも東大の問題を解く醍醐味ですね。

A:易
そこまで難しい単語もないです。強いて言えば、ミトコンドリアのマトリックスと葉緑体のストロマは役割や構造も似ているので、咄嗟の時に間違わないようにしておきましょう。「リン酸化」に関する単語も、「酸化的リン酸化」「基質レベルのリン酸化」などがあります。違いとともに覚えておきましょう。

B:やや易
クロロフィルa,b,cは覚えづらいですが、系統の近いものは持っているクロロフィルの種類も似通っている傾向にあります。系統の単元を復習して、表などにして覚えてしまいましょう。

C:やや難
カルビンベンソン回路が「回路」であるが故に起こる現象です。回路中のどの反応で、どの物質が関わってくるかを正確に把握していないと難しいですね。ただ、一度経験しておけば解きやすくはなるので、解説を見て納得しておきましょう。

D:やや難
活性酸素が発生する、つまり電子が過剰になるという条件をNADP+が不足する、と解釈できるかがポイントです。そこからさらにCO2の不足、それを引き起こす乾燥による気孔開口の抑制まで考えを巡らせなければいけないので、少し難しかったのではないでしょうか。

E:標準
選択肢をよく見ると、(1)(2)から1つ、(3)(4)から1つ選べと言われているに等しいです。Pm値の解釈さえできれば、「光化学系に電子が少ない」という状況が汲み取れます。このように、何らかの「比」について考察していくのは他の領域でもよく見られます(昼夜間人口比など)。絶対的な値でなくて相対的な値を採用することで、極端に小さい、または大きいオーダーの数値を我々の考慮しやすいオーダーまで落とし込めます。分母が大きければ比は小さくなる、vice versa. ということを念頭に置いておけば良いでしょう。

F:やや難
Eで行った考察を踏まえた上で、電子の受け渡しの比率を考える必要があります。4行程度の記述は一見多く感じますが、説明上必要な記述を書き連ねると自然に4行くらいは埋まってしまうものです。「4行」という文字が目に入り、大問2の中盤にあることもあって時間の兼ね合いで飛ばすという判断をした人もいるかもしれませんが、一度考察してみる余地はある問題です。

G:やや易
どれも良く読んで考えれば分かる選択肢ですが、大問の後半にあるうえに全て選ぶ系の問題で、グラフの読み取りも必要なため、取りかかるハードルが高く見えるかもしれません。

H:易
クロロフィルの吸収スペクトルのグラフを見たことがあれば、赤青にピークがあるP導入株のグラフを見て一目で判断できるはずです。葉緑体が緑に見えているのは赤青を吸収して緑を反射しているから、という情報と合わせると覚えやすいですよ。

I:やや易
複数の経路とは、リード文中にもあるフォトトロピンの経路に加え、実験5で示唆された葉緑体の経路です。実験よりいずれの経路も必要であるとわかるため、それを書けば良いですね。

3:ニッチ 易


・テーマとなる植生や種多様性は生物の最後の方にある単元なので、6月段階ではそこまで理解度が深くないのではないでしょうか。ただ問題の内容としてはそこまで苦戦せずに解けるレベルなので、前提知識を付けた上で復習してみると良いでしょう。

A:やや易
この時期に植生などについて極まっている人もなかなか少ないと思いますが、早いうちに詰めておきたい単元ではあります。落葉広葉樹などに属する種類は基本的に暗記事項ですが、ただの暗記ではなく例えば資料集の写真などを見て、「確かに雑木林って落ち葉多いわ」というようなイメージと結びつけて覚えておくと良いでしょう。

B:やや易
暖かさの指数などについても暗記事項ですが、成育できる下限は水が凍る少し上、というイメージでいいでしょう。下限を0と再定義し、それを基準とした相対温度を考えていると思えば、各気温から5℃を引くというのも納得できますね。

C:標準
ブナとミズナラの環境への耐性は直接述べられていないため、推測する必要があります。どこまで自分で考えたものを書いていいのかというのは悩みどころですが、かなりのヒントが指定語句として与えられているので、そこは意図を汲み取って考えてみましょう。

D:やや易
(2)のグラフの読み取り方が少し難しいですが、風下と風上の比が小径木→大径木でどのように変わるかを追跡します。(3)もやや引っかけチックで、棒の高さは同じですが目盛りが違います。焦っていると気づかない可能性もあるので気をつけましょう。

E:標準
知識に加えてイメージ力も問われる問題です。要約すると、幼木なら小さいからお互いに影響を与えず成長できるが、成木は葉を広げて大きくなるから近くにいる木を蹴落としながら育つしかない、ということです。

F:易
食物連鎖が永遠に続くと仮定すると、エネルギー減損が0ということになり矛盾します。実際は永遠どころか5〜6段階までしか続かないようです。

G:易
恐らくこの模試で1番正答率が高いだろう問題です。競争的阻害は実例とともに確実に覚えておきましょう。

H:やや難
ニッチ中立、ニッチ分配の考え方はあまり馴染みのない概念でリード文や図から読み取る必要がありますが、少し抽象的な表現なため自分なりに落とし込んで考える必要がありました。自分は、フィンチは適応によりそれぞれ得意とするフィールド、つまり島を確立していったため、島を分配したというようにイメージしました。

I:標準
散布図から得られる情報の有意性を考える必要があります。数学で扱う相関という概念を思い浮かべましょう。(a),(b)のグラフにおいて示したいのはニッチ中立説ですが、このデータに見られる相関は、有意とは認められなかったようです。一方(c)から得られる相関は、ニッチ分配説を支持するのに有意であると判断されたのです。

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