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第3回東大本番レベル模試 日本史所感

総評:標準
文章中の暗示が比較的わかりやすい大問が多かったという印象です。しっかりと勉強し、知識が身についていた人は思うように点数が取れたのではないでしょうか。逆に、前提知識が曖昧だったと感じた人もいるかもしれません。でも、現役生の歴史科目の得点は秋冬にぐんと伸びるものなのでそれほど気を落とさないでくださいね、これからさらに精を出す心持ちで復習をしっかり行いましょう!
今回も、文章から問われていることを把握したり、細部にも着目しながら解答の方向性を決めて行ったりと、東大日本史において持っていれば強い武器になるスキルが問われていたと思います。問題文を見ただけでは解答が思いつかないような問題では、しっかりと文章を読み、見当違いの解答をしないことが失点を防ぐ大きなポイントです。また、拾わなければいけない部分と、取れなくても気落ちせず切り替えていくべき部分の濃淡をしっかり見極めることができたかどうかも大変重要です。この所感や解答解説を読み込んで、その見極めの感覚をより鍛えていってください。本番までまだ時間はあるので、頑張っていきましょう!

第1問
A:標準
文章(1)〜(3)と対応する問題でした。政策の「推移」について述べなさいという設問でしたので、天武天皇から聖武天皇にかけての段階的な政策に注目して解答を作れたかどうかが鍵となります。文章中の「政府から派遣された地方官」といったような歴史用語(ここでいう国史)を示唆する部分を見逃さず、しっかり解答の中に盛り込むことが重要です。第一問では国史・郡司について問われることが多いので、これを機に理解を深めておきましょう。

B: やや易
文章(4)、(5)を丁寧に読み解いて、自分の表現と用語を用いて言い換えることができれば点数を稼げる問題でした。「大寺院で教学を学び、葛城山などにこもった僧の中から」という記述から、南都の僧を想起できた人はそう多くなかったかもしれません。しかし、関連する部分で密教が示唆されていることから予測することが可能です。平安時代の仏教文化については頻出なので、理解が曖昧だった人は解説をよく読んでしっかり頭に入れておきましょう。

第2問
A: 標準
時代に対応する中国王朝と、その特徴がわかれば素直に解ける問題です。日本史を学ぶ上で中国大陸の諸外国との関係は非常に重要となります。日元貿易において、膨大な銅線や陶磁器が日本へもたらされた、そして明王朝では海禁政策が取られていたという基本的な知識と結び付けられたかどうかがこの設問の鍵でしょう。海禁政策→輸入銭の不足→銭貨を保管する動きというように知識と問題文の内容をうまくつなぎ合わせた解答を作ることが求められています。

B: やや易
「銭貨輸送の短所」で、問題文の記述と時代背景から戦乱・盗難に言及できたでしょうか。「割符」「撰銭」「徳政令」という歴史用語を解答に盛り込むことは基本中の基本でした。文章と設問に忠実に解答を作成し、中世における貨幣経済の知識と理解があれば、解答は難しいものではなかったはずです。

第3問
やや難
時代設定は比較的短い期間のものでしたが、数多くの歴史的出来事が起こった時代であるので字数が余ることはなかったでしょう。(1)で示唆される紫衣事件は容易に思いついたでしょうが、興子内親王が明正天皇を指すこと、さらに明正天皇が古代以来(奈良時代の称徳天皇以来)の女性天皇であることに気づき、さらに解答に盛り込めた人はそう多くないと思います。(1)に「幕府の限界も明らかにした」とあることから、後水尾天皇の譲位強行という史実に基づき幕府の統制力が天皇の意思にまで及ばなかったという評価に言及できるとよかったです。文章(1)-(4)全てにおいて、評価も含めた上で言及できると、満点の答案に近づけるでしょう。

第4問
A: 標準
「第一次世界大戦期の日本の動き」という設問の要求からは、どの出来事を書けばいいのか迷った人も多いでしょう。しかし、文章を丁寧に読み解くことで何に言及すれば良いかは自ずと明確になったはずです。文章(1)でドイツと中国に直接的に触れられていることから、青島占領と袁世凱政府に対する二十一カ条要求に言及することはもちろんですが、ドイツ「も」となっていることに注目できた人はイギリスとの関係にも留意し日英同盟を解答に盛り込むことができるとベストでした。もう一つの要求は、内容自体は迷うことはないと思われます。3行という短い文中で二つの指示に基づいた過不足ない答案を書くには、それなりに凝縮された表現を用いる必要があったでしょう。

B: 標準~やや難
近現代について問われる第四問でみられる傾向として、文章の手がかりをもとに自分の知識に頼って解かねばならないということがあります。本問はまさにそれに該当します。第二次大戦期の国際情勢は目まぐるしく変わり複雑であるため、理解が曖昧だった人はこれを機に復習をしっかり行いましょう。対抗措置を取った国がアメリカであること、そして政府と軍の動きについては書けた人が多かったと思います。しかし、条件であった「南進」の目的が少し難しかったのではないでしょうか。戦中・戦後史は覚えることが多いですが、世界中で同時期に起こった出来事を結びつけて考えられるようにしましょう。


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