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2024年6月実施 第1回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【化学】


全体概観


総評:標準
得点しやすい基本問題から、考える時間を取られる問題までバランスよく揃ったセットでした。第一問は、未学習の範囲を題材にした問題に慣れているかどうかで差がつきそうです。このような出題形式は東大入試で珍しくないので慣れておくと良いでしょう。第二問、第三問は比較的簡単な問題と複雑な問題が混ざっていました。半分くらい正答できるとよいでしょう。とはいえ、時間配分などが上手くいかなかった方もいると思いますので、もう一度解答を見る前に解き直すことをおすすめします。きっと試験中より多く解けると思います。入試問題は難易度順には並んでいないため、解ける問題を判断し、試験時間内で極力多くの点数が取れるように勉強してみてください。まだ、未修範囲もあると思いますので、点数には落ち込まず、今後の勉強の指針として活用できるよう、問題自体を分析することが肝要です。

第1問

I:標準


ディールスアルダー反応という高校学習範囲でない反応からの出題でしたが、問題文をよく読み、理解することができればそこまで難しくはないと思います。反応も丁寧に図解してありますので、置換基などを書き足して考えると良いでしょう。エは少し複雑ですが、エができなくてもオは解答できますので、一度全ての問題に目を通すことがおすすめです。
 
ア:問題文の記述に従って推測しましょう。イソプレンが左右対称ではないため、二種類の構造異性体が生じることに注意しましょう。
イ:3種類の化合物それぞれのディールスアルダー反応の結果を書きましょう。対称面からトランス体がAであることは簡単にわかります。立体異性体の情報からCl基がそれぞれの炭素につくシス体がBとわかります。
ウ:イができれば解けます。この問題のみ間違えた方は、単語の定義を復習しましょう。
エ:ブタジエンとイソプレンそれぞれが二つの二重結合をもつため、4種類の反応が起こります。反応生成物の二箇所の二重結合をオゾン分解すると、ヨードホルム反応が陽性になるのは3種類です。
オ:問題文の記述に従って推測しましょう。

II:標準

Iと同様、高校範囲でないアルドール反応からの出題でした。R1,R2の部分を問題文の置換基に置き換えるとわかりやすいです。後半は、発想力が重要だったように思います。
カ:図1-6のR1、R2をHに変えるだけで解けます。
キ:二種類のα炭素があり、どちらについた水素が反応するかで二種類の化合物ができます。
ク:α水素が存在しない化合物を考えましょう。
ケ:ジエチルケトン同士も反応することを忘れないようにしましょう。鏡像異性体(不斉炭素)だけでなく幾何異性体も確認しましょう。
コ:Kの分子式よりKが二つのカルボニル基を持つことがわかります。ここから、分子内でアルドール反応が起こることが推測できれば解けるでしょう。
 

第2問


I:やや易

知識問題は本番では得点したい問題です。間違えた場合は基礎をもう一度復習しましょう。計算問題ではウができるとよいでしょう。エは反応全体が関連した問題であったため複雑だったかもしれません。エは飛ばしその他の問題に時間を割くことも一つの戦略です。
 
ア:知識問題です。
イ:混合物であることから凝固点降下が述べられていれば良いでしょう。
ウ:情報が少ないので、わかっている情報について式を立てます。今回は鉄の質量について等式を立てることで、Fe2O3の質量を知ることができます。
エ:情報の整理が必要です。問題文で与えられている情報の単位がバラバラなのでmolに統一すると良いでしょう。そのあとは反応の中心となっているC原子とO原子の物質収支について式を立てます。
オ:反応物、生成物ともにヒントがあるので、炭素原子、酸素原子の順に数を合わせることで反応式を完成できます。

II:標準〜やや難

得意、不得意が分かれる問題であったかもしれません。二酸化炭素の濃度の平衡について一度、問題を解いたことがあると解きやすい問題だったでしょう。カ、キ、ケは解けると良いと思います。
 
カ:第一段階と第二段階の平衡定数の差が大きいため、第二段階での電離は無視します。
キ:カの続きで、炭酸から生じるイオンの濃度をそれぞれ求めます。
ク:まず、反応式を書き、炭酸ナトリウムと二酸化炭素の反応について、収支を考えます。
ケ:ヘンリーの法則より炭酸の濃度を求めることができれば、平衡定数を使ってHCO3-を求めることができます。
コ:二酸化炭素の分圧が保たれているので、液相の炭酸濃度は変化しません。
 

第3問


I:やや易

ファンデルワールスの状態方程式のa、bを理解できていると解きやすい問題です。計算問題も少ないため、ここは短時間で解き、他の問題に時間を割けるとよいでしょう。
 
ア:iは基本問題です。ii分子間距離は圧力と堆積の関連する項に登場します。
イ:計算方法は単純です。計算ミスをしないように気をつけましょう。
ウ:二つの分子の違いが極性であることに気づけるといいと思います。
エ:bが気体自身の体積より圧倒的に大きい時、分子が会合していると考えられます。
オ:aと一番相関が強いのがbです。bの説明は本文中にあります。
 

II:標準

ヘンリーの法則、気液平衡の応用問題でした。カ、キは正答したい問題です。ク、ケ、コは時間が厳しいかもしれませんが、解き方は理解しておくとよいでしょう。
 
カ、キ:基本問題です。高温になるほど気体は溶けにくくなります。
ク:問題集などで見たことのある問題だと思います。二酸化炭素の分圧の情報から物質量がわかります。
ケ:水、エタノールがそれぞれ、気液平衡の状態にあるかを調べます。
コ:ケができていれば、求めた物質量から堆積を導くだけです。混合溶液の質量が800gであることに注意しましょう。

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