見出し画像

理一から理学部へ

はじめまして
 こんにちは。2020 年夏の進学選択で理科一類から理学部に進学しました、東大特進スタッフの中島と申します。
 私は現在、理学部の生物情報科学科というところに在籍しています。聞き慣れない名前かと思いますが、非常に簡単に説明すると、「生物と情報、両方やっちゃえ!」的なダブルメジャーと言える学科です。
 ご存知の通り、理一からは工学部に進む学生が多いので、理学部は割と少数派です。しかし理系の場合だと工学部や理学部、教養学部など別の学部でも、学科によって似たようなことをやっている所も少なくないので、学部より学科ベースで考える方が賢明でしょう。というわけで、ここでは「なぜ理学部に進んだのか」というよりは「なぜ生物情報科学科に進んだのか」をメインにお話ししたいと思います。


理一を受験した理由

 今では完全に理系に進んだ私ですが、高 2 の終わりぐらいまでは文理選択すら迷っていました。理由は、どちらも面白いと感じていたためです。受験だけを考えれば文系で受けた方が入りやすいように感じていましたが、理系に進んでおけば後から文転もできそうだということで、結局は理系を選び、とりあえず進学選択に強そうな理一に進学しました。正直に言えば、信頼していた友達に「お前は理系だろ」と言われてそのノリで決めてしまった部分も否めないのですが、そんな感じで決めても進学選択でどうとでもなるのが東大のいいところだと思います。
 ポジショントークかもしれませんが、文理選択で悩んでいる方は、(理系科目が極度に苦手でなければ)理一か理二に入っておくのがおすすめです。理転より文転の方がハードルは低いですし、大学受験の理系科目で学ぶ知識や思考は文系に進んでも有利に働くことは間違いないと思います。


一年生は駒場外国語大学

 そのような感じで大学に入ったので、前期教養課程の間に自分のやりたいことを探さなければ、と思っていました。ですが振り返ってみると、1 年生の間に1番やったのは中国語でした。TLP中国語コースでは中国語の授業が週5 コマあり、とにかく忙しかったです。その分得られたものは大きかったですが、膨大な授業をこなしながら友達付き合いをワイワイしていたら一瞬で 1 年間が過ぎ去っていきました。
 入学時のイメージでは 1 年生の間に進路が大体決まっているはずでしたが、まだこの時点では「うーんとりあえず工学部?」くらいの考えしかありませんでした。


時間をくれたコロナ

 1 年生の間はバタバタしていてじっくり将来のことを考える余裕がありませんでしたが、ちょうど 2年生になる頃にコロナが流行りだしました。そのときに大学に入学した代は本当に大変だったと思いますが、私の場合はコロナのおかげで色々なことを考える時間ができていい機会になりました。自粛期間中、友人と会うことも減り、授業も 1 年生の時ほど忙しくなかったので、自分の興味の赴くままに色々なことにチャレンジしたり、本を読んだりしていました。オンライン授業になると様々な授業を簡単に覗けるため、授業に潜ったり(履修せずに授業を聴きに行くこと)、ガイダンスだけ受けてみたりもしていました。


興味と成績の板挟み

 前期教養の授業を取る上で非常に難しいのが、自分の興味と得られる成績のどちらを優先して授業を選ぶか、という部分です。この原因は、希望する学科に行くためには点数(成績)が必要という進学選択の仕組みによるものです。
 大学の授業には、良い成績を取りやすい授業と取りにくい授業が存在します。それに関する授業の口コミ的な情報が出回っていて、それを参考にする人が多いのですが、どこまで成績を優先するかが非常に難しいのです。興味のある授業や学科選択で参考になりそうな授業を取ったはいいものの、成績が足りなくて行きたい学科に行けなくなってしまっては
元も子もありません。逆に点数ばかり気にしていてもそれはそれでつまらない、そんな板挟みの間で私は苦労しました。
 結局私が良かったなと感じるのは、1 年生の間はとにかく点数を取ることに集中して、2 年生になって余裕ができてからじっくり考えることです。1 年生のうちにある程度授業を取っておけば、2 年生になるとどの科類でも少し負担が減るので、その間にガイダンスなどに参加してよく考えるのがおすすめです。

生物情報科学科、なんかかっこよさそう
 

さて、なぜ生物情報科学科に進学したのかという点についてお話ししましょう。
 高校生の頃は、化学に興味がありました。そのため大学に入ってからも化学系の学科に興味を持っていたのですが、だんだんと「なんか違うかな」と思い始めるようになります。
 「大学に入ると生物は化学になり、化学は物理になり、物理は数学になり、数学は哲学になる」などという人もいますが、大学の勉強は高校までと少し雰囲気が変わってきます。そんな中で私は生物に興味を持ち始め、生物に関わる学科に進みたいと思うようになりました。
 それと同時に、2 年生になってから情報系にも関心が向き始めます。コロナ自粛の暇つぶしにプログラミングを勉強してみて、面白いなと感じるようになったのです。プログラミングを使えば様々なことが自動でできる、そんなかっこよさに惹かれました。
 しかし一方で、純粋な情報系に進むのもつまらないなと感じていました。性格上、人と同じことをするのが嫌いなので、人気のある情報系に素直に進むことは私の中の変人プライドが許さなかったのです。
 そんな状況で各学部のガイダンスを見ていると、
「生物情報科学科」という文字列に目が留まります。生物…? 情報…? あれ、これやりたいことどっちも書いてあるじゃん。ということで学科を詳しく調べてみました。すると、定員 12 人の少人数学科で、設立されてから 10 年ちょっとの新しい学科だということがわかりました。
 生物と情報が両方できる。少人数で手厚い教育が受けられそう。学科同期とも仲良くなれそう。できたばかりの学問分野で、これから大きくなっていきそう。チャンスに溢れている感じがする。やばい、なんかワクワクしてきた。という訳で、生物情報科学科への進学が決定しました。


生物情報科学科、どんな感じ?

 実際に進学してみた印象は、ほぼ予想通りでした。生物と情報をどちらもしっかりでき、少人数でアットホームな学科です。2 つの分野をしっかり学べるというのは、飽きっぽい自分の性格にもピッタリでした。
 進学前の想像と少し違ったのは、「生物+情報」というより「生物情報」だという点です。つまり、「生物情報科学」という分野のために生物と情報を勉強しているということです。ちょっと何を言っているかわかりませんね。生物情報科学について、軽く説明します。
 生物情報科学とは何なのでしょう。
 例えば、あなたがある病気にかかったとします。普通なら、その病気の薬を飲みますね。ですが生物情報科学が進歩すれば、「その病気の薬」ではなく「あなた専用のその病気の薬」を飲めるようになります。
あなたの DNA を読み取って、あなたにぴったりな薬を提供するのです。
 これはあくまで一例ですが、このようにゲノムのデータから情報を読み取って活用していくのが生物情報科学です。面白いと思って頂けたでしょうか。おおーと思った方は、ぜひ生物情報科学科へ。


やりたいことが見つからない人へ

 やりたいことが見つからない人は、特に東大生や東大受験生の中には多いのではないでしょうか。やりたいことが見つかっていない状態は、別に悪いことだとは思いません。可能性が無限大ということなのですから。
 ですが、「やりたいことが無い」よりも、「やりたいことが多すぎて何をやるか決められない」方が人生楽しいと思いませんか?これはこれで大変ですが、人生ワクワクします。
 ではそうなるためにはどうすればよいのか?その答えは、とにかく新しいことに挑戦する以外ありません。もっと簡単なのは、とにかく気軽に「ポチる」ことです。今はネット上でも新しい世界にどんどん触れることができます。臆することなく、飛び込んでみてください。ただじっと瞑想していてもやりたいことは浮かんできません。とにかくやってみる、この姿勢が大事です。
 しかし、高校生の段階で経験できることはある程度限られています。やりたいことに出会えなくても不思議では無いと思います。そんなときは、未来の自分の可能性を最大化するための努力を今はしてみてはどうでしょうか。未来の自分に託すのです。大学受験でいえば、大学生になった自分に委ねるということです。
 その考え方で言えば、東大に入るのはベストな選択だと思います。入学後に 1 年半の猶予が与えられ、その中で今後の人生を決めることができます。そのために今、勉強を頑張っていると思えばどうでしょうか。辛いことも大変なことも、未来の自分のために乗り越えていきましょう。


東京大学理学部 生物情報科学科
中島 史翔(2019 年度入学)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?