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2024年8月実施 第2回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【国語】


■現代文

第一問:やや易

 本文自体は読みやすく、分量も標準的だったので読むのに苦労した受験生は少なかったのかもしれません。しかし、本文の流れの正確な把握が求められる問題が多く、答案作成時に工夫が求められるものもあり一筋縄ではいかないところも多かったのではないでしょうか。本文の構造をきちんと把握して要素を拾うことのできた人は、この調子で学習を進めていってください。今回上手くいかなかった人は、自分がどこで躓いたのかをしっかりと分析して、秋以降の学習につなげてください。

(一):やや易

 「どういうことか」の問題ですが、最終的に答案を作成する上では傍線部の要素を一つ一つ言い換えたとしたとしても正解にはならず、まとめ方に苦労した人もいたのではないでしょうか。具体的な発言を一般化してまとめる必要があります。とは言え、まずは一般的な「どういうことか」の問題と同様に傍線部の分析から始めましょう。すると安保デモと漁民デモが対比されていることに気が付きます。その詳しい説明が第4段落にあり、第5段落冒頭には、「石牟礼や栗原が見出したのは…」と傍線部の発言についての説明が加えられています。それ以降は市民≠大衆の話に移るので根拠は拾えないでしょう。するとここまでの範囲から根拠を拾って、安保デモと漁民デモの対比を踏まえつつ傍線部の趣旨をまとめられると良いです。

(二):易

 文化人類学のアプローチの「意義」を問う設問です。傍線部以降の第8段落では文化人類学の議論の具体例が述べられており、解答の根拠とはなりません。続く第9段落では、「このように…」と具体例を受けてその「意義」が述べられています。一方で第10段落になると人類学的考察をする上で重要なことが述べられており、「意義」からは離れた内容になっています。以上のことから第9段落の内容をまとめると「意義」の説明になるとわかります。高得点を取っておきたい問題でした。

(三):標準

 「どういうことか」の問題ですので、傍線部中の「市民社会」という単語に鍵括弧がついている意味も考えながら、「~議論。」という形で締められるように全要素の言い換えを図りましょう。まず、市民社会への鍵括弧の有無に関しては、ついている方は実態を踏まえずに頭の中だけで考えられた(=観念としての)市民社会像を指し、ついていない方は現実の市民社会を表しているとわかります。前者に関しては、第2、5、7段落で触れられているので、それらをまとめて『観念としての「市民社会」』の言い換えとして書けると良いでしょう。さらに、両者の対比を踏まえて地域の多元的関係を反映していないということも解答に盛り込めるとより良い答案になります。

(四):標準

 「どういうことか」の120字問題です。「本文全体の趣旨を踏まえて」という付帯条件はありますが、まずは傍線部の分析と全要素の言い換えを図るところから始めましょう。傍線部には指示語が二か所あるので、それらをしっかりと押さえることが大切です。このうち前者は最終段落で例示されている内容を指しているのでそれを一般化すればよく、後者は傍線部中の要素を指しています。傍線部後半の「政治的な場」の言い換えは、最終段落の冒頭の内容から「市民社会の具体的な現れ」程度で良いでしょう。これで解答の核となる部分ができたら、あとは「本文全体の趣旨を踏まえて」という付帯条件に沿って、本文を貫く既存の市民社会と現実の市民社会との対比を盛り込めることができれば良いです。

(五):やや易

いずれの漢字も受験生ならば正解してほしいレベルのものでした。漢字での数点の差が合否を分けるというケースは多々あります。漢字に不安がある人はもう一度確認してみると良いでしょう。

第四問:標準

 近年の第四問と同じく、本文が短めなので一度全文を読んでから問題を解いた方が取り組みやすいと言えます。内容としては、とりわけ難解な文章というわけでもなく、本文中から拾える解答の要素も多かったので、比較的解きやすいと感じた人もいたかもしれません。とはいえ、第一問よりも抽象度が高く、比喩の処理も多いので苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。復習の際には、本文から要素を拾えた部分と自分で補う必要のあった部分に注目するといいでしょう。

(一):やや易

 比喩を含んだ「どういうことか」の問題です。比喩を適切に処理しつつ、傍線部の全要素の言い換えをしましょう。第1段落で反復されている内容から「穴」は単語が欠けていることを指すとわかります。第2~3段落の具体例を一般化すると「外部に立つ」とはある単語を有する他言語と比較することであるとわかります。本文中の要素のみで十分解答可能な問題でした。

(二):やや易

 こちらも本文中の要素のみで十分解答可能な問題です。傍線部直後の第5段落に現れる傍線部の言い換えに気づいて解答の枠組を固められるかが大きな分かれ目となったのではないでしょうか。レトリックが多用されている第四問でも、まずは傍線部の前後を中心に本文をしっかりと見て拾える要素がないかを確認しましょう。

(三):標準

 付加の助詞「も」を含む「どういうことか」の問題です。この場合、「思わず」と並列されている言葉も解答の要素として含める必要があります。(実際にこの「も」の処理を求める問題は、過去に東大の第一問で出題されています)「思わず」の並列対象は「ふと」であるので、あとは両者の類似点をまとめれば良いです。

(四):標準

 筆者の行動の変化の理由を問う問題です。カフカの小説にまつわる具体例を見ると、その理由の一つとして、「思わず」という単語を使わなくてもそれに相当する表現は可能だということへの気づきを挙げられます。しかし、単にこの気づきだけで筆者がこれまで頻繁に使っていた単語を連発しないようになったとは考えにくいです。この気づきによって、筆者が過去の自分を反省したから行動を変えたなどと考える方が自然でしょう。理由説明問題では、「解答」だから「傍線部」が成り立つかを確認する癖をつけ、そこに飛躍があると感じたら言葉を補ってそれを埋められるようにしましょう。

■古文

全体概観: 標準~やや難

軍記物語『義経記』からの出題でした。近年、古文は恋愛系などの物語類が多く出題されていますが、軍記物語などの珍しい出典でも変わらず得点できる実力をつけましょう。今回、位置関係の把握まで時間内にすることが出来ず得点が伸びなかった人は、次から丁寧に主人公らの動きを追うことを意識できると良いと思います。後述していますが、前書きや問題文も解答のヒントになることがあるので、本文が難しくても諦めずに頑張りましょう。
以下、問題番号は文系の問題に準拠します。

(一):やや易

訳出に極端に苦労するような単語はなかったように思われます。ア・ウは助動詞の意味を捉えることは容易く、文意に沿って少し説明を補えるかが満点への分かれ目になるでしょう。カは「あはれみ」を正しく訳せるかが鍵となります。

(二):標準

直訳から誰が何を受けるから緊張しているのかきちんと文意を踏まえて推測する必要があります。前の文章からだけでなく傍線部の後の文章も文脈を読み解くのに大切です。また、古文や漢文では問題文がヒントになることがあります。今回では「使命」の内容を明らかにして~とあるので、家来がどんな使命を受けるのかを述べれば良いと問題文からも分かりますね。

(三):やや易

傍線部以降和歌までの部分を読み取れたかが得点に大きく影響します。和歌の直後「かき消すやうに失せ給ふ」に注目しましょう。

(四):やや難

形容詞「あやし」を怪しいという意味で捉えることがまず大前提です。文を読み取ったうえで、国に惑ふ者が他国を目指す人を示していると分かる必要がありますが、自分がどの浦にいるのか分からなくなるのは普通なのに国を迷っている→この近辺の浦から来た者ではない→他国を目指している、というように思考を展開するのはなかなか難しいかもしれません。

(五):難

文脈だけでなく、前書きを読み一行がどこにいるのか地理的関係を把握しなければ解けません。時間がない中で冷静に情報を整理し、一行が初めの位置まで押し流されてしまったのだと理解するのは難しいのではないかと思います。一方、押し流されてしまったと分かれば急いで報告しようとしたからという理由を考えるのは容易で、得点の差が開く問題となったのではないかと思います。

■漢文

全体概観: 標準

文章全体としての主題は、大事を成す者には自分に打ち勝つ能力が備わっているということです。内容としてはそこまで難解なものがなかったため、比較的読みやすい文章である印象でした。漢文においては、一つの文字についてその意味で使われている熟語と一緒に覚えておくと、思い出しやすいです。今回意味が分からなかったものについては、そのように関連付けて覚えると良いでしょう。また、(二)に出てきた「而る後已む」の訳し方については知っておくと便利ですので、覚えておくと良いでしょう。

(一):標準

現代語訳の問題です。東大の問題では傍線部に送り仮名が振られていないため、文脈により単語の読み方や意味が変わることを正確に捉えることがポイントです。

a:文脈から、大事を成し遂げることができる人が持つ能力のことだと分かります。少し後に「自ら克つ」という熟語が出てきて、それと「自勝」が同じ意味であることを認識できれば、自分に打ち勝つ力という意味だと導き出せます。

b:「自」という文字は返り読みの際には「~より」と読み、「~から」という意味になります。「其」は指示語ですので、曾文正のことを指しています。「少年」の部分ですが、「少き年(わかきとし)」と読んで若い頃という意味を表します。現代では「少年」という単語は高校生くらいまでを指すことが多いですが、漢文では20代頃のことを指します。そのため、現代語訳では「少年」という単語は避ける方が適切です。

c: 「発心して」悪い習慣を治そうとしたという文章中の「発心」の意味を問う問題です。一般的に「発心」という語は仏門に入ることを意味しますが、ここではその意味ではなく、単に「思い立って」という意味に訳すのが適切です。「発」という字は何かを始めるという意味を表すことが多く、「発作」「発起」「出発」などの語句との連想で意味を捉えると良いでしょう。

(二):標準

文正が大敵のごとく見ていた「之」が指す内容が悪い習慣であるということは前後の文脈から判断できます。「根株を抜く」という単語は、根本や根幹といった単語から類推されるように、悪い癖を根本から修正するという意味だと分かるでしょう。「〜後已む」は直訳では「〜したらやめる」ですが、「〜するまでやめない」と訳すときれいな和訳になります。例えば「死して後已む」だと「死ぬまでやめない」という意味です。

(三)(文科のみ):やや易

傍線部の前が対句の構造になっています。対句の構造の前半部分については[注]に意味が書かれているので参考にしましょう。後半部分について、「血気」は「体内」という意味だと[注]に書かれています。「積習」の意味は「蓄積」や「習慣」「慣習」といった単語から、長年続いている悪い癖という意味だと推測できます。問いに対する解答としては、文中で筆者が文正のことを高く評価している点に注目し、例えば「成就するまでやめなかった点」と答えると良いでしょう。

(四)(理科は(三)):標準

第二段落全体の内容を把握できれば解ける問題です。第二段落では偉人たち三人の例を挙げ、小さな日課を積み重ねることの大切さを説いています。傍線部の一つ前の文章がその大切さについて説明しているので、そこを中心に解答を作成すると良いでしょう。

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