ボーカルミキサーがピッチ補正の罠を暴く
音程をはずしていても、MIXで綺麗になる!!
歌ってみた界隈では、当たり前の話として浸透しつつあるピッチ補正について今日は大事なことをお伝えしたいと思っています。
ときたま動画で流れてくる「めちゃくちゃ音痴を修正した」系の作品。
これらをみてると、どんなボーカルトラックも綺麗に聞こえるようにしてもらえると錯覚します。
実は、これらの動画はある条件を満たしているから成立するといっても過言ではありません。その真実についてこの記事では掘り下げていきます。
ピッチ補正とは
ピッチ補正とは、ボーカルの音程を補正する作業のことです。専用ソフトを使います。
たとえば、「ドレミ〜」と歌うべき歌を「ドレファ〜」と歌ってしまったとします。ミり半音高いファの音が間違っている部分です。
この歌唱データを専用ソフトに取り込むとこのように表示されます。
ひとつひとつの波形を上下に動かすことで音程を変えることができるのです。正しい音程のところにグリッド線も引かれているので、誰にでも簡単に正しい音を導くことができます。
今回の例では、ファの音をひとつ下にずらすだけで正しい音程になります。
しかもこのソフト、趣味レベルで楽しむ人でも手が出せる価格帯で販売されています。つまり、ピッチ補正をすること自体はプロだけの特権ではなく、歌を趣味で録音してる人にもできることなのです。
ここで、気になることがあると思います。
「どんなにめちゃくちゃでも本当に補正できるの?」と。
どんな声でも音痴は解消できるのか?
まったく修正した痕跡を残さずにという条件がつくと無理ですが、多くの音程によるエラーはピッチ補正で解決することができます。
ただし、一部ピッチ補正が難しい声があります。
激しいエッジボイス、がなり、デスボイスなどのノイズ成分の多い声質です。これらの音は、ソフトがノイズとして検出してしまい正確な音程を識別できないのです。
そのため、より強引な処理が必要になり。自然な補正からは離れてしまう傾向にあります。
冒頭でお話しした、ピッチ補正のサンプル動画でも、こういった声を取り扱ってるものってあまりないのではないでしょうか。
クリーンな発声であれば、ある程度音程が外れていっても修正はできます。
さらに、自然な感じに仕上げたければ、せいぜい上下1音程度のズレに収めることをおすすめします。
ピッチが良い=上手い歌ではない
ピッチ補正ソフトをつかうことで、大抵の音程は正しく補正することができます。
でも、歌が上手いって音程がいいだけなのでしょうか?
上手く聞こえる要素のうちの一つではありますが、音程が正しく歌える以前にできなければいけないことはたくさんあります。
そのなかでも、しっかりとした声を出すというのは歌の良し悪しを決める大きな要素になります。
どれだけ表面上の音程があっていても、かすれたような弱々しい歌声でリスナーは感動するでしょうか?ちょっとくらい音程がずれていようが、しっかり耳に届いてくる声の方が良く聞こえませんか?
ピッチ補正マジック動画の正体
近年の歌ってみたを中心に歌い手と呼ばれる方々の歌は、とにかく声質・発声で勝負してると言っても過言ではありません。
声を気に入ってファンになる方が多いのです。
逆にいえば声さえよければ、ピッチを外していようと、リズムがよれよれだろうと、MIX時の編集である一定のクオリティになるということです。これこそが、今回僕が1番伝えたかったピッチ補正の罠の部分です。
つまり、「何でもかんでもMIXでどうこうできるとは思わない方が良い。」ということです。
僕たちがMIXでできることは、あくまでもあなたの歌声という素材を最大限魅力的に調理することです。その調理の過程に音程いじることや、リズムをいじることが含まれていると考えていただけると良いかと思います。
もしも、できることとできないことの判断が難しければ、相談ください。
客観的に判断させていただきます。その上で、やりたいことに近づくためにはどうすればいいのかもお伝えできるかと思います。
最後にですが、僕はそういった動画に反対してるわけではありません。
エンタメとして面白いですし、めちゃくちゃな歌が綺麗になっていく様はとても見ていてワクワクするんですよね。でも、意外とエンタメとして見てない人が最近増えてるように感じていて、余計なトラブルが発生するのではと思ったのです。
テレビのドッキリのキレ芸の切り抜き動画を、本当にその人が怒ってると勘違いして見てる人が増えてるのと同じだと思っています。
なので、あくまでもエンタメはエンタメ。
あなたの歌はあなたの歌である。
この一線はしっかりと引いた上で、ピッチ補正を有効に活用して理想の歌ってみたを仕上げて行きましょう!
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