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利島_椿産業の未来地図

はじめに

 いきなりですが私たち【合同会社 タロス】は、『もみほぐし店 タロス』の運営と『椿産業』の二つの柱を基に起業しました。今年で2期目を迎えるまだまだ若い会社です。
なぜ起業したか。それは、利島椿産業への衝撃から始まりました。

大学2年生でコロナが流行り、バイト先で働けなくなり利島にUターン者として帰島しました。利島に来た当初はコロナが落ち着いたら、東京で就職するか、東京で起業するかと漠然と考えていました。


副業で椿産業を

 利島に帰ってきて、配達員として働きながら自分の家の椿産業を手伝うことになりました。利島に在住していた幼少期から椿を拾っていたので、どんな仕事か説明は不要だと思っていましたが、草刈りすらした事ない新米農家からのスタートでした。 
 そこで目にしたのが、『椿産業の限界』です。
日本全国多くの自治体が抱えている問題としてある『後継者不足』が利島の椿産業でも起きていると感じました。それに伴い、放置林が増えているのだと感じました。

 その原因を自分事(自責)として、理解するために1年間必死に副業でやることを決意しました。その1年間で学んだことは、椿産業の未来を考える上で貴重な経験になっています。そして今なお副業農家として、椿の作業を毎年続けています。

【現在の課題】

 椿の未来を考える上で、今の椿産業の課題を明確にするべきであると考えます。
簡潔に問題となる核の部分は、一つのみ『椿産業の限界』という課題に行き着きます。
 具体的な課題については、検討や意見は一切せずに洗い出してみると以下の通りになると思います。

椿農家の限界

 椿農家の限界には、大きく分けて二つあります。
①椿農家の高齢化
②新規参入農家が少ない


椿山の限界

椿山の限界は、たった一つ。
うっちゃり山(放置林)の増加

 うっちゃり山には、豊作放置林と呼ばれる山と捨て山があるとと思います。

豊作放置林は、単に担い手の問題ですが、
捨て山は自然現象の問題(光の入り方、土壌の適性等)を理由として、農家自身が決断し、選択した山のことだと定義しています。


収益モデルの限界

 椿農家の収入源は、椿の実を拾いその量に応じて収入が決まります。労働力に対しての対価のみでの収入なのです。なので副業農家が多く、椿産業のみという人は、利島内にはほとんどいません。つまり新規椿農家が継承しようとした場合、今の収益モデルだと副業農家を選択するしかありません。


【解決手段】

 上記で椿産業の現在の課題を考えてみました。しかし問題だけを出して満足するのでは、なんの解決にもなりません。
椿農家や椿山の寿命は、刻一刻と迫り10年後にどうなっているのか。想像できる人は、利島内にも少ないと思います。
そんな中批判ばかりしているのではなく、対案や解決策を検討すること。そしてそれを一つでも多く実行し、失敗しながらも修正、付け加えを行い椿産業を未来につなげることが最重要だと考えます。

これから私なりの考えられる限りの解決手段や打開策を発表していきたいと思います。以下の資料は、東京宝島という東京都の事業の募集で提案したものです。それを参考に考えてみることとします。

①椿産業の観光化

島内の中でも、タブー視されてきた椿の観光化です。観光と聞くと、島内の農家、島民は不信感を示します。これには、過去の利島の観光客との軋轢や他の観光で有名な他島と比較していることが多いと感じます。

 観光にも種類があると考えています。例えば、海があったり、遺跡があったり、キャンプ場があったりと環境や建造物という観光方法
これをイメージしている農家がほとんどですが、それ以外にもその土地を歩いたり、農家の体験をおこなったり、島での出会いを大切にできたりと今の利島でできる観光の形が必ずあるはずだと考えています。

 椿の観光化をすることで、椿農家の収益モデルの再構築や他の産業への影響、利島になかった商店やビジネスの活発化など多方面での島内の活性化につながると考えています。
それには、まず利島の基幹産業である『椿産業』が今の形で戦えるのか、集客できるのか、客観的に判断し修正、要素の追加を行う必要があります。

②椿を絡めらイベントの企画

 利島の隣の島の伊豆大島では、『椿まつり』と呼ばれる歴史あるイベントが毎年行われています。それを機会に出店やアンコ娘から選ばれる椿の女王コンテストなど様々な催し物が行われています。
 これに習い同じような規模感でやることは、利島の面積宿の環境上不可能だと考えます。ですが、利島のできる形でのイベントを作ることは、可能だと思います。
 例えば、利島の道にある玉石を使ったイベント島内向けに行われる伝統行事への外部参加、その他離島を使った独自のイベントや催しものなど様々考えられます。徐々に参加人数を増やしていき、それに必要な島内の環境も整えていく必要があります。

この考えに至ったのは、先日(8月7日から11日まで)きていた国際学生ボランティア団体IVUSAの学生3人と話していく中で見えてきた可能性です。それについては、下の【希望の光】にて触れます。

③『週末農家』という働き方提案

 これは、利島に移住し専業として働くことが不可能だとしたら今の社会状況や利島の将来という2点だけに問題を絞り導き出したアイデアになります。

 昨今の新型コロナウィルスの流行によって、リモート化が進み地方への移住が増えたことは周知の事実だと思います。これは、コロナが流行っている今だから起きている現象だと私は思えません。都内でのストレスや不満と地方を比較したときにのんびり暮らせることへの憧れが一定程度あると思います。

 ただこれは、島内ですぐ実行することができないことなのです。それには、土地の問題と宿の問題の二つがあります。観光を進めていく過程で、椿産業を目的とした観光客が増加することによって、弊社運営の宿の建設を実現していけると思います。結論から言ってこれを解決するためにも、観光というものは切っても切り離せない問題であるとの結論に至ります。


【希望の光】

作業中会話風景

 ここまで課題とそれに対する今考えられる解決方法を検討して来ました。今まで利島の椿が新しい形で生まれ変わることや時代に合わせた働き方、収穫方法、収益モデルなど変わることが少なかったと感じます。
そこで、利島全体の寿命が近づき焦っているのが今の利島だと思っています。
 ここまで希望の薄い話をしてきましたが、まだまだできることはたくさんあります。それをさらに強く思わせてくれたのが、学生ボランティアとしてうちに来てくれた3人です。

彼らは、私と歳も近く似たような価値観をもつ若者でした。上記でも話したような内容を共有し、問題解決に対する個々の考え方、また自分にできることは何か真剣に考えてくれました。
彼ら若者にとっての利島は、何にも縁もゆかりもない島です。ですが、私が熱く話すと同じかそれ以上の熱量で返してきてくれました。

 そんな中実際利島で、自分のやっている学問や大学として企画したいと言ったくれた子や利島へ休学し、来てみようかなと言ってくれた子。また個人的にも遊びに来たいと言ってくれた子。たくさんのありがたい声を頂き利島は、まだ戦えると思わせてくれました。
ですが、彼らの人生は彼らだけのものです。それを伝えた上で、それでも利島のためにと行動してくれるなら協力してやっていこうと話し、またどこかでと船で帰っていきました。

 この先彼らが、島外に戻り心変わりすることも大いにあると思っています。しかしそれでも、私たち利島の椿の未来を考えるものからすると大きな光でした。

学生がくれた色紙

農業体験実施 

 本来は、椿農家体験を夏の下草払い(キッパライ)から実施する予定でホームページ公開とSNSでの宣伝等をおこなってきましたが、宿の問題が解決せず。募集して実施することは延期して、当日のみの実施に変更しました。
 とはいえ、椿農家の新たな収入源としての利島椿の観光化の実現が急務だと思います。なので、なるべく多くの方に利島椿の現状を理解していただきたいと思っています。

テントサウナ

 ここでいきなり『テントサウナ』というワードを出されても不思議だと思います。しかしこれは単に流行りに乗っかるだけでなく、椿産業と大きな関係があります。
椿産業を考える上で、椿の実だけでなく、椿の植え替え、椿の木の利用を考える必要があります。70代の椿農家が話してくれた言葉が私は忘れられませんでした。
 「椿は使えないところがない。椿の実、椿の葉っぱ、椿の木、全部無駄なく使うことができるんだよ。」という言葉です。
 確かに椿の木の老朽化は、深刻な問題です。椿の木は植えてから椿の実を拾えるようになるまで、20年~30年かかると言われています。これは、次の年代が拾えるように投資の発想で行われてきたと思います。しかし自分の子どもが継がない以上、このような思考に至ることはななか難しかったのだと思います。
 話を戻すと、このような椿の木を昔は囲炉裏の炭に使われていたと聞きました。
しかし、時代に合わせ囲炉裏が使われることは無くなっていきました。利島で私に椿の話を聞かせてくれた1件の家のみです。この家ももう間も無く辞めることになりそうとの話です。
 ここまで長く椿の木について話してきました。椿の木を切る理由も椿の木を新しく植える理由もないのが現状です。
これを解決する方法が、『テントサウナ』にあります。それは、椿の木の買取サービスです。利島の山には、古くなり倒れた木が重ねている光景をよく目にします。

山にされた老木

このような使わなくなった椿の木や落ちている倒木を買い取ることによって、椿農家の収入アップと今の椿の木への剪定作業の促進、新たに椿の木を植えることを促すことができると思いました。
 それだけでなく、島内の若者や島外の観光客への椿産業への認知活動にも繋げられると考えています。

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