ふりむき

芸能界を目指すとちこのお話④ 【読者モデル編2】

【前回までのあらすじ】

街角スナップから読者モデルへ声をかけていただいたとちこ。
初めての読者モデル撮影は、緊張と経験のなさからボロボロのデビュー戦となるのでした。


そこからは、単純なものでした。

「超」が付くほど負けず嫌いのとちこは、いろんなファッション誌を読み漁り、モデルさんがどんなポーズをとっているか、どんな表情をしているか、研究に研究を重ねました。

鏡を見て表情の練習をしたり、ケータイで自撮りをしてみたり・・・

ダイエットも頑張った。
とちこは背が低いので、ただでさえちんちくりんに見えてしまう。

幸運なことに、翌月、翌々月と読者モデルの撮影依頼を頂くことができました。

とちこを読者モデルとして拾ってくれた、イケメン樋口さん(♀)にも、
「とちこちゃん、最近、頑張ってるね」
と認めてもらうことができました。

できることが少しずつ増えた撮影は、少しずつ楽しいものになっていった。

思えば、部活も楽さで選んでいたとちこからしたら、生まれて初めての努力でした。

数か月が過ぎ、樋口さんとも仲良くなった頃、撮影の合間にこんな話をした。

とちこ「初めての撮影の時、緊張しすぎて翌日筋肉痛になったんですよー」
樋口さん「すごい、緊張してたもんね~」
とちこ「(・・・やっぱり、見てわかるくらいの酷さだったんだ・・・)」
樋口さん「でも、懲りずにとちこちゃん呼び続けてよかったよ」

確かに、なんで樋口さんはあんなブサイクに写ったとちこを再度撮影に呼んでくれたのだろう?
とちこが編集者なら、「撮影向いてない」と思って、もう呼ばない。

樋口さん「とちこちゃんさ、街角スナップの時にカメラマンやアシスタントの子にも、ひとりずつにお礼言って、すごいいい子だと思ったの。
忙しい中、撮影のお願いしてるわけだから、お礼言わなきゃいけないのはこっちなのにね」

・・・そうだっけ?
とちこはとっても気が弱いので、「ありがとうございます」と「ごめんなさい」だけでだいたい生きている。

だけどその気の弱さが幸いして、こうして撮影に参加することができている。

「ありがとう」って魔法の言葉。

この世界に限った話ではなく、社会は「人」と「人」。
ひとつひとつの出会いを大切に生きていけば、きっと自分一人では到達できない世界にたどり着くことだってできる。

今回のとちこは「ありがとう」という言葉にありがとう

つづく🐑


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