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vol.9 出来の悪い娘の在宅介護 【ALS(筋萎縮性側索硬化症)】

体が動かないということ

2017年5月には、立つことも座ることもできなくなっていました。ALS(筋萎縮側索硬化症)の初期症状は2つのタイプがあって、「手や足に力が入りにくくなるタイプ」と「舌や口が動きにくくなるタイプ」があります。

母は後者の方で、球麻痺の症状から出ました。舌の動きが自分の思うようにならず言葉が不明瞭になり、コミュニケーションに障害が生じます。

そして、舌やのどの筋肉の力が弱まり、食べ物や唾液を飲み込みにくくなり、むせることが多くなるタイプです。

コミュニケーションが取れないこと

母は、この頃には「う〜」や「あ〜」の声が出せるのみになり、口からは何も摂ることができなくなっていました。コミュニケーションができなくなっていくと無気力になり、生活の意欲を奪います。

言葉だけではなく、手足も動かないため、ジェスチャーで伝えることもできなくなります。そうすると自分の思いを伝えることをあきらめて、自分の殻に閉じこもるようになります。

コミュニケーションが取れないことは、体が動かないことと同じくらい精神的につらいですよね。

だからこそ、進行具合や残った体の機能を考えて、コミュニケーションの手段やルールを決める必要があります。身体が全く動かない母からすると、視界以外は遠い世界。ベッドに寝てそこから見える世界は狭く、このくらい大丈夫か〜と黙って視界からいなくなると、私がどこにいるのか、いつ戻ってくるのか、どんどん不安が増します。動けない体では自ら確認しに行けないので情報を取りようがないんです。

でも、私もすこーし休みたいよ〜

一方で、私からすると別の場所に行っても「家の中じゃが〜」「庭にいるだけじゃが〜」「15分じゃが〜」と言いたいところです。
うとうとしていたから庭の草を取っていただけじゃが〜ということも何度もありました。(太陽を浴びると元気になるんです)少し言ってあげると落ち着くんじゃない?と当然思われるところですが、自分の思うときに自由に動けないとプチストレスも溜まります。わかっちゃいるけど〜という気持ちです。

言葉も文字盤もコミュニケーションはリラックスが大事

頭はしっかりしているので、私より記憶力はよく、私への指摘もなかなか厳しい。透明文字盤もコツがいるので、ヘルパーさんは大変だと思います。言葉が読み取れないときは、険しくなる母の顔を見てヘルパーさんは緊張が増して、どんどん読み取れなくなる。
文字盤も言葉と同じで双方がイライラしたり緊張すると伝わらないんですね。リラックスしていないとコミュニケーションはどの方法でも伝わりにくいんです。焦らずリラックスがポイントになります。

コミュニケーションのコツ

リラックスした後は想像力を持ってコミュニケーションをとっていきます。「何が言いたいのか」を表情・視線、場面から考えて、その人に合ったコミュニケーションツールで読み取り「○○してほしい?」と確認するとスムーズです。顔の表情を出す筋肉は残りやすいので、眉毛を少しあげて窓の方を見ていると「窓を開ける?」「カーテン閉める?」といった感じです。

頻度の多い訴えや言葉をあらかじめ書いて置き、「はい」「いいえ」で答えられるようにしておくのも一つです。

話の内容を先読みしたり、わかったつもりにならないようにすることも大事です。「あ〜〜あれねっ」と文字盤で読み取るのをやめてしまうと、ぜんぜん別のことだったということもあります。

初めての人は、無理だわと諦めたくなるんですが、諦めず、怖がらないず、単語から始めて時間をかけると、しだいに慣れて読めていくものです。

誰もが自分の思いを最後まで伝えたいと思い、わかってほしいと思っています。諦めてもいいなんて思いません。

文字盤のいいところは、意見が合わないときも目と目を合わせて会話するところにあります。ケンカみたいな会話も目を合わせていると、母も私も段々とバカバカしくなって最後には笑ってしまいます。

この文字盤で、まだまだいっぱい話そう!ALSにならなかったら、こんなにも、目を見て話すことなんてなかったんだから。もしかしたら文字盤だからこそ伝えられることもあるんじゃないかな。ALSになっていっぱい諦めることもあったけど、まだまだ諦めなくてもいいことはたくさんあるはずだから。

#ALS #介護#文字盤



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