【不動産(投資)編】不動産リース契約が問題になった「かぼちゃの馬車事件」とは?

2023年5月18日、クレジットカードで有名なクレディセゾンとスルガ銀行が資本提携を行うというと発表されました。
このニュースが流れると、一定数の批判や疑問の声がニュースやSNS等で見受けられました。
「スルガ銀行は不正融資問題が完全に解決していない状態で資本提携をするべきではない。」というものです。
 
この不正融資問題は不動産投資の手法の一つである「サブサブリース」が始まりとなっていて、今回はこの事件を解説したいと思います。
 
スルガ銀行の不正融資問題とは、2017年末ころから発生した、スマートデイズという不動産業者のサブリース賃料不払い(支払いができない状態になったこと)から露呈したものです。
 
まず、不動産サブリースとはどういうものかについて解説します。
今回の事件は「かぼちゃの馬車」という名前でシリーズ化していたシェアハウスに関する問題でした。
シェアハウスやマンションをイメージしてお読みください。
 
①シェアハウスやマンションなどの不動産を所有するオーナーがいます。
②不動産業者(今回の事件でいう「スマートデイズ」)がそのシェアハウスやマンションを一棟丸々オーナーから賃借します(これを「マスターリース契約」といいます。)。※
③不動産業者が、そのシェアハウスやマンションの入居者を探し、各部屋を賃貸します(これを「サブリース契約」と言います。)。
※不動産業者はオーナーへ、「サブリース賃料」として毎月一定額を支払います。
 
サブリース自体は適法なものですし、実例も多いです。
今回の事件は以下のような流れでした。
 
1.副収入を得たいサラリーマン(現状はシェアハウスやマンションなど持っていない人)などを対象に、スマートデイズがサブリースによる投資を持ち掛ける。※
2.スマートデイズが探してきた土地を紹介して、「ここにこんなシェアハウスを建てます。○億円です(この時提示される金額は実際よりかなり割高)。これをローンで購入し、サブリース形式で契約をしましょう。」と持ち掛ける。
3.本来なら億を超える融資など下りないはず人でも、融資窓口であるスルガ銀行がスマートデイズと一緒に不正を働き、被害にあった投資家たちの保有資産情報等の書類を改ざんして融資が下りる形にする。
4.客となった投資家は(融資も下りたので)割高な金額でその土地と建物を購入してオーナーになり、サブリース賃料を得るためにスマートデイズと契約する。
5.スマートデイズが資金繰りに窮し、最終的には破綻して、オーナーへのサブリース賃料の支払いがなくなる。
6.オーナーには購入金額よりはるかに少ない金額でしか売れないシェアハウスと、ローン負債が残る。

※スマートデイズの件にかかわらず、ほかの事例でも1に記載しているとおり、新しくアパートやマンションを建てさせるところから始まることが多いです。

例えば、毎月のローン支払い額が30万円だったとしても、サブリース賃料としてスマートデイズから毎月50万円がオーナーに支払われるため、差額の20万円が収入になる、という前提であったものが、スマートデイズの破綻によって毎月30万円のローン負債だけが残ってしまったような状態です。
シェアハウスを売ってその売却代金でローン負債を相殺しようとしても、割高で買ってしまっているため全く足りないのです。
報道の中では、1億円で買ったが6,000万円でしか売れなかったというような話もありました(もっとヒドイものもあったと思います。)。
また、シェアハウスの賃料収入で賄おうとしても、入居率があまり良くない極小シェアハウス(入居者で集まれるようなリビングもないような物件)であったため、それも足りません。
 
健全なサブリースであれば、不動産業者はそのシェアハウスが最大でどれだけの賃料収入を得られ、いくらのサブリース賃料であれば無理なく毎月オーナーに払えるか、といったことをよく分析した上で契約します。または、実際に収益として発生した賃料の80%とするなどの方式もあります(ただ、それでも一定期間ごとに不動産業者からサブリース賃料を減額するよう交渉される、という事例は多いようです。)

しかし、スマートデイズはそのような考え方ではなく、割高で不動産を売った差分の利益※からサブリース賃料を還元していて、たくさん物件を売らなければ回らない自転車操業になっていたようです。
※厳密には、建築業者からキックバックを受け取っていたようで、その利益です。
 
オーナーたちは契約の不履行を理由にスマートデイズに賠償請求したいものの、スマートデイズは破産しているためそもそも支払うお金を持っていません。どうしようもない状態です。
そのため、一緒になって不正融資を働いていたスルガ銀行に交渉したのです。
 
当時スルガ銀行は営業担当に厳しいノルマが課されていて、この達成のため多くの不動産融資を実施したく、スマートデイズと一緒に不正を働いていたようです。
 
交渉は難航しましたが、結果、各オーナーが持っているシェアハウスをスルガ銀行に渡すことでローン負債を支払ったことにする「代物弁済」という手法がとられ、一部のオーナーは問題を解決しました。
(異例の解決策です。)
 
冒頭のクレディセゾンとスルガ銀行の資本提携の話に戻ります。
かぼちゃの馬車事件で被害者が何名いて何名が問題を解決したのか、という細かい情報まではわかりませんが、この問題は全面解決しているとはされておらず、冒頭の批判の声が出たのです。
また、クレディセゾンはそんなスルガ銀行と資本提携して大丈夫なのか、といった疑問の声もありました。
今回の提携により今後両企業の株価がどうなっていくのか、注目です。
参考に、過去10年の両社の株価チャートです。
スルガ銀行はかぼちゃの馬車問題が社会問題になった2018年ごろから急下落しました。

クレディセゾン株価(過去10年)
スルガ銀行株価(過去10年)


ちなみに、当時被害者のオーナーたちはスルガ銀行の株を買い、株主になることで株主提案としてスルガ銀行へ被害者救済の意見をする、という手法もとっていたと聞きます。
被害者全体が購入した株がどのくらいなのか、現在もオーナーたちは株を保有しているのかなど細かいことはわからないのですが、仮に問題が解決して被害者たちが一斉に株を売るみたいなことになったとき、多少なりとも株価に影響するほどのインパクトがあるのか、素朴な疑問です。
 
不動産投資にも様々な手法がありますが、難しい話のときはぜひ専門家へセカンドオピニオンをした上でご検討ください。
本記事が参考になれば幸いです。
 
 

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