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モノクロ手焼きプリント

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自宅暗室にて手焼きしたプリント作品をエッセイと共に記したシリーズです。
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#モノクロ写真

身勝手な写真 モノクロ手焼きプリント#12

人間は生き物の死んだ後をコントロールする。 花だったらドライフラワーにしたり、昆虫や動物は剥製にしたり。 ドライフラワーは人間がその姿を見て癒される為にそうするし、剥製は鑑賞や学術的な用途の為に作製される。用途は様々だが、しかし死んだ後をコントロールしているというのは同じだと思う。 そもそも生き物が生を終えた後の姿というのは、本来は埋葬したり火葬したりしてその姿を長く晒すという事はないのだと思う。 人間が食用や商用などの為に生を終えさせたのなら別として、生き物が生を終えた後

違う視点 モノクロ手焼きプリント#10

少し前に、友人と一緒に広島平和資料館に訪れた。小学生の頃や大人になってからも訪れたことのある場所だったが、2019年にリニューアルしてからは初めてだった。展示内容なども新しくなっているらしく、中がどうなっているのか、そして今一度原爆について知る良い機会だろうと訪れた。 平和公園はよく通るのだがここ2年ぐらいは海外の人がかなり多く、訪れた際も資料館の列は海外の方がほとんどだった。おそらく様々な国から訪れているのだろう人々に混ざりながら、友人と一緒に入場を待つ。 資料館の中は、

もっとモノクロで撮りたい モノクロ手焼きプリント#9

フィルムで写真を撮るようになり、自分で現像やプリントを前提としている事からモノクロフィルムで撮るのが当たり前となっていた。 フィルムやるならモノクロだろう、と。 だが、カラーフィルムはそれはそれで良いと思っていて、フィルム写真家のカラーネガで撮られた作例を見るのは好きだし、過去にカラーネガで撮った写真を見てみると「あぁいいなぁ」となる。なので頭の片隅で「いつかカラーも撮ろうかな」みたいな事は考えていた。 実際、世間的にフィルムカメラが密かに人気だ、と言われてはいるが、それは

白黒写真とは言うものの モノクロ手焼きプリント#7

白黒。 白黒写真。 「しろくろ」とよく言われる気がするが英語では「black & white」というのだから実は「くろしろ」が正しいのかもしれない。 黒白写真。 だが我々が撮っている写真は黒と白の表現だけだろうか? いや、どう見たってグレーもある。 写真家によってはハイコントラストにして黒と白にかなり寄せる人もいるが、それでも二色だけで写真は基本的に成立はしない。 というより、黒と白を繋ぐグレーの方が面積的には多い。 だから黒白写真をこよなく愛する人々にとっては

夕暮れ時 モノクロ手焼きプリント#6

夕方、尾道を歩いていると船着場で停泊している船が目に入る。 夕陽に照らされて船体に美しい陰影が出来ている。 夕陽は普段の景色をドラマチックにしてくれる、カメラを持つ人間にとってこの上ない味方だ。 この船は明日になったらどこかに出かけるのだろうか、それとも暫くここで休息なのだろうか。 なんて思ったがシャッターを切ると私はすぐに次の景色を探してしまっていた。 camera : Leica M2 lens : Voigtlander NOKTON 50mm F1.5 vintag

それぞれの過ごし方 モノクロ手焼きプリント#2

宮島という土地は不思議な場所だと思う。 厳島神社、大聖院、山岳信仰の対象とされる弥山など宗教的なもので溢れかえった島であり、世界遺産を目当てにした観光地でもあり、人々が普通に暮らす場所でもある。 そして私のように広島に在住していて、たまに訪れては少しの非日常を味わって帰る、という場所でもある。私は宮島が好きで1シーズンに一回ぐらいのペースで訪れている。アクセスもしやすくその上いろいろな過ごし方が出来る為、実は「ちょうど良い」場所なのだ。 コロナ禍の時も訪れていたが、その時は

海を眺める背は モノクロ手焼きプリント#1

以前から、新しいレンズや機材を買うと宮島を訪れている。 雑踏、自然、自社仏閣、海といった様々な被写体がそこにはあるので、試し撮りにはもってこいの場所だからだ。 LEICA M2を手にしてからも例に漏れずまずは宮島を訪れた。平日は特に海外の方が非常に多い。西洋の方もアジアの方も沢山。とりあえず皆さん身長が高い。人々がフェリー乗り場で楽しそうに話しているのを横目に、身体の横にM2をぶら下げた私は一人フェリーが入港するのを待っている。 フェリーの中ではいつもは大体鳥居が見える側