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今日の10分日記「失われた東京証券市場立会場」

皆さんは「集団競争売買制度」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
昭和57年までは、東京証券取引所で朝の9時になると、特定ポストと呼ばれる一段高い場所で、机に置かれた檜製の木をバチーンと打ち合わせて、両手を上げて不思議な調子で株の名前と価格を叫ぶ。すると一段低いところにいる証券マンが押し合いへし合いしながら買った売ったと取引をする。

机の上の撃柝(ゲキタク)を打ち合わせることから「ゲキタク売買」とも呼ばれた

これを特定銘柄と呼ばれる銘柄に対して行い、市場における始値と終値を決めていました。
この中で見られたのが、証券マンによる「手振り」と呼ばれるハンドサインです。江戸時代の大阪から始まったこの文化は、場の喧騒の中でも情報を素早く正確に伝えるために長年使われていました。

手振りで注文を伝える証券マン

東証では1999年まで実際に証券マンが取引を行う立会取引が行われていましたが、1999年4月30日に立会場も廃止され、同年7月に大阪証券取引所も立会取引を廃止。
今では東京証券取引所の立会場には、東証Arrowsと呼ばれる施設が作られ、よくニュースなどで見られるガラス張りの建物が作られています。

確かに人が対面で取引をするのは非効率ですし、コストもかかります。しかし、この立会取引が廃止されて、株式取引が無機質なものになったとのではと感じます。
実際、世界最大のニューヨーク証券取引所は「資本主義の根源にあるアニマルスピリッツを失わないための工夫」として、立会取引を世界で唯一続けています。

ニューヨーク証券取引所では今でも立会場でフロアトレーダーが活躍している

デジタル化が叫ばれている時代だからこそ、そういった人間らしさは失ってはいけないものなのではないでしょうか?

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