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夏の終わりとサンフランシスコ 2019【猫町旅日記】2

サンフランシスコ旅行の一日目、8月29日。レンタカーで走り出したのはお昼過ぎだった。ホテルのチェックインまではまだ時間を持て余してしまうから、車を借りたのは正解だった。初日は車でしかいけない場所へ行こう。まずはサンフランシスコの象徴ゴールデンゲイトブリッジを目指す。三度目のサンフランシスコだが、金門橋はやっぱり毎回行かないと気が済まない。車で橋を渡ると、やっぱりテンションがあがる。橋のサンフランシスコ側にお土産やさんがあるウェルカムセンター、渡った先に景色の綺麗なビスタポイントがあるが、『ripple』のジャケット撮影のときにはこの観光客ひしめく場所で僕は猫の被り物で撮影した。14年前の話だ。

インターナショナルオレンジと称される橋の美しさもさることながら、サンフランシスコ湾の向こう側に見える市街地の、空と海の淡い青に溶けていく感じがとても良い。早速いろいろ細々としたお土産を買って、先が思いやられる。お土産を選ぶときは「わー、これ微妙!面白いから◯◯くんにあげよう」というのが基本姿勢。この旅行最初の食事はウェルカムセンターにある Bridge Round Houseでラテとビスケット。汗ばむくらいの晴天。

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初めてサンフランシスコを訪れた時に印象に残ったのがベイエリアの町バークレー。UCB(カリフォルニア大学バークレー校)で有名な学園都市だが、やっぱり僕の根っからのモラトリアム気質と空気が合うのだろうか。ゴールデンゲイトブリッジから車で1時間かけてバークレーへ向かうことにする。サウサリートやミルバレー(エイブラムズ先生とストロベリー・ポイント小学校4年生の奇跡の名盤が生まれた町だ)といった自然豊かな風景を駆け抜けて、サン・クェンティンからリッチモンドまではサンフランシスコ湾をまた別の長い橋で渡る。

やっぱりバークレーは時間の流れ方が独特な、居心地のいい町だった。最初に向かうのはもちろんレコードショップだ。カリフォルニアに来たら行かないといけないお店、Amoeba Music(アメーバ・ミュージック)は体育館みたいなところに無限にCDとLP、Tシャツやらバッジやらメモラビリアがひしめくお店。初めてここに来た2000年(19年前!)、僕は圧倒されて頭が痛くなり、なぜかキャロル・キング『つづれおり』の中古CDだけ1枚買った。今回はたっぷり時間をかけて広い店内を散策、そして散財。カリフォルニアとレコード、なんと幸福な時間。

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そしてアメーバの隣にあるのがRASPUTIN MUSIC(ラスプーチン・ミュージック)。ここも地下のアナログフロアとCDのフロアとものすごい量の音楽。お店に入るとバッグや荷物をカウンターに預けるように言われた。以降、古着屋さんなどでもこの荷物預けパターンが多かった。どのレコード屋さんにもお客さんがたくさんいて活気がある。一生かけても聞けない数のレコードが世界に溢れていて、無限のコレクターがいるわけだけど、僕はジャズやソウルにはそんなに食指が伸びないので、ロックの、それも80年代以降のインディの棚をパタパタとすれば気が済む。ラスプーチンではThe Nationalのライブにオープニングアクトを務めるカナダのALVVAYSのレコードを買った。

アメリカに来て一番重宝したのは僕が使っている携帯キャリアが提供するアメリカ放題というサービスだった。SPRINTという回線のあるところなら日本にいるときと同じようにiPhoneが使えてお金もかからないし、フリーWi-fiも街中のそこかしこにあるから地図だってお店の情報だって簡単に調べることができた。バークレーで有名なスーパーマーケットがあるのを知って立ち寄った。Berkeley Bowl(バークレー・ボウル)という、オーガニックなスーパーマーケット。売り場に溢れるその物量と質、色鮮やかさは眼福。日系のお店らしくてお寿司なんかもたくさん扱っていた。結局この日の晩御飯はここでサラダバイキング、それとクラムチャウダーとおにぎり、それをイートインスペースで。さすがに疲れてきた。

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カリフォルニアの太陽はなかなか沈まず、19時頃からだんだん日が暮れてくる。夕暮れ時にフリーウェイをバークレーからサンフランシスコに向かって走ると、耳の奥にサイモン&ガーファンクルの「America」が流れてくる。左ハンドルと車線にも慣れて、独特なスカイラインを眺める余裕もできた。市内に入ると急な坂の上り下りが増えてきてワクワクする。ビクトリア様式の家が並ぶ。ダウンタウンに入ってくると治安の良し悪しが雰囲気でわかった。僕の泊まるホテルはかつて「マーク・トウェイン・ホテル」という名前だったらしいが、リノベーションされてシンプルで小ぎれいな宿に変わっていた。昔はどんなふうだったのかな。この部屋にこれから3日間お世話になる。

チェックインしてスーツケースを広げたら、またひとつ身軽になった気がした。もう21時前、夜の街を歩いてみるとUrban Outfitters(アーバン・アウトフィッターズ)があったので覗いてみる。前回2005年に来たときは洋服だとかいろんなものを買ったお店、今回は品物を眺めて少し子どもっぽいなと思ったところに時間の経過を感じる。ケーブルカーとすれ違うと、やっぱりワクワクした。借りた車は翌日の朝に返却することになっていたから、もう少し夜のサンフランシスコ市街を流してみることにした。

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2005年に『ripple』のジャケット撮影で偶然たどり着いたとても風景の美しい印象的な場所があって、それは高級住宅街のなかにあって、ベイブリッジと高層ビル群と海を見下ろす丘だった。車をゆっくり走らせて、かすかな記憶を頼りにiPhoneの地図を睨む。ものすごい傾斜の坂を上ったり下ったり。そしてNob Hill(ノブ・ヒル)とRussian Hill(ロシアン・ヒル)の中間くらいのところに「ここだった!」という間違いない場所を見つけた。とても静かで、風がやんで凪の状態になると遠くの潮の音が聞こえて
、14年前と何にも変わってないように思えた。あ、14年前はサンフランシスコ名物のアシカの声が聞こえたのを憶えている。今回はついにアシカの姿を見なかった。

サンフランシスコはアメリカのなかでもとにかく抜群に家賃や物価が高い街で、そのなかでも一番裕福なエリアを歩いてみると、ほのかな灯が漏れるマンションや瀟洒なビクトリアンハウスの窓からは、それでも、この街ならではの日常的な営みを感じる。もちろんこんなところに住んだりはできないけど、もしここに住んだら…ということを夢想してみるのも楽しい。夢とうつつを行き来する感覚。そろそろ眠たくなってきた。僕の時計には現地時間とあわせて日本の時間もディスプレイされているから2つの時間を過ごしているようにも感じる。ホテルに戻って、スーパーで買った地ビールを飲んで就寝。長い一日、DAY1終了。(断続的にしばらく旅日記が続きます)

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