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『ちんじゃらじゃら物語』(1962年12月30日・松竹・堀内真直)

ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」で、堀内真直監督『ちんじゃらじゃら物語』(1962年12月30日・松竹)の改題再上映版『喜劇 出たとこ勝負』を美麗プリントで。空前のクレイジーキャッツ・ブームの最中、ちょうど東宝では『ニッポン無責任野郎』上映中の年末興行作品。

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主題歌は、青島幸男作詞、萩原哲晶作編曲「ちんじゃらボッサ・ノバ」。歌うはもちろんハナ肇とクレイジーキャッツ! タイトルバックは名古屋の空撮で「企画 伴淳三郎」と晴れがましい。伴淳三郎さんの芸映が製作に入っていて、関西喜劇人協会代表の伴淳さんの声がけで、藤山寛美さん、芦屋雁之助さん、芦屋小雁さん、三木のり平さん、そしてフランキー堺さん、加東大介さん、有島一郎さん、千秋実さんがズラリと顔を揃えている。

パチンコ発祥の地、名古屋でパチンコを発明した釘師・伴淳三郎さん。軍隊時代の戦友で今はオートバイメーカーの名古屋支社長・千秋実さん。仲の良いふたりだが、千秋実さんが須賀不二夫さんの口車に乗って市長選に立候補してから、関係が怪しくなる。土地ブローカーの須賀さんの狙いは、選挙公約に伴淳三郎さんたちが住む駅裏の再開発を掲げ、一儲けすること。

オールスター映画なので、次々といろんな喜劇人が出てくる。藤山寛美さん、三木のり平さん、それぞれ場面喰いで、笑わせてくれる。で、伴淳さんが勤める玉川良一さんのパチンコ屋に送り込まれてくるパチプロ・サブやん・フランキー堺さんと、釘師・伴淳さんの対決が前半の見せ場。のちにVシネマで作られるパチプロVS釘師ものの元祖!

パチンコ屋の景品も、渡辺のジュースの素、汁粉、オリエンタルマースカレーなどなど懐かしのタイアップばかり。伴淳さんの娘・島かおりさんが勤めているのは名鉄百貨店。伴淳さんの別れた女房は、名古屋の名妓・月丘夢路さん!信じられないキャスティング^_^

で、千秋実さんの会社の社長に、有島一郎さん。その娘・岩下志麻さんが、真っ赤な革ジャンで登場! バイク乗りという設定。

後半は、戦争中にカンボジアで、千秋実さんが現地の娘・石井富子さんに産ませた息子・芦屋小雁さんが日本を訪ねてきてのひと騒動。

回想の戦争シーンは伴淳喜劇『二等兵物語』のノリ。加東大介さんの演芸部隊というと『南の島に雪が降る』を思い出すが、こちらは園芸部隊。つまり、兵隊の糧食を生産するために野菜を栽培する部隊。これは、おそらく原案の小野田勇さんのアイデアだろう。というか、小野田勇アイデアはここだけかも?

クライマックスは鈴鹿サーキットでのバイクレース。レーサー・名和宏さんが悪漢に襲われたために、急遽、バイクに乗るのは… という正月映画らしい賑やかな展開。しかし、番匠義彰監督作のような、パキパキした感じではなく、松竹らしいユルユルな作り方。でも、眺めているだけでも楽しい。もう一度、クレイジーキャッツの歌声が流れて、大団円となる。

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