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娯楽映画研究所ダイアリー 2021年8月16日(月)〜8月22日(日)

8月16日(月)『忘れられぬ瞳』(1939年・東宝)・『ドレミハ大学生』(1938年・東宝)

 岸井明さんと神田千鶴子さん主演、渡辺邦男監督『忘れられぬ瞳』(1939年2月11日・東宝東京撮影所)。これは初見だった。原作・脚色は川端二郎。タイトルのトップに<主演・岸井明、神田千鶴子>と出てから配役クレジットとなる。1936(昭和11)年の『唄の世の中』では、失業してもジャズ・ソングを楽しく歌い、モダン東京ライフを謳歌していた岸井明さん演じる主人公。それから一年半。日中戦争が始まり、国家総動員法を施行した近衛文麿内閣が総辞職、平沼騏一郎内閣となって1ヶ月後に封切られた『忘れられぬ瞳』。ジャズ・シンガー岸井明と、数々の歌声を映画やレコードで披露してきた神田千鶴子さんの、ボーイ・ミーツ・ガールの音楽映画でありながら、時代の息苦しさの軋みを感じる。

岸井明さん、藤原釜足さんのカレッジ音楽コメディ!マドンナは江戸川蘭子さん!

8月17日(火)『楽園の合唱』(1937年・P.C.L.)

10月発売CD2枚組の大長篇ライナーを一通り書き上げる。1日掛の推敲に入る。昭和11年から16年にかけての5年間を定点観測するような曲目解説。情報が多いのは常のこと。エッセイや感想文じゃないのだからキリリと引き締めて^_^

今宵は、ポンコツ会見前に、この人たちが一堂に会する「1937年東宝オンパレード」と副題のついたアノ映画を観てましたよ。次から次へと1937年の東宝スターがずらり。エノケン、ロッパ、エンタツ・アチャコ、永田キング!夢の競演!


8月18日(水)『イン・ザ・ハイツ』(2021年・ジョン・M・チュウ)・『天と地と』(1990年・角川映画)・『影武者』(1980年・東宝)

 リン・マニュエル・ミランダのミュージカルの映画化『イン・ザ・ハイツ』(2021年)東宝シネマズ日本橋で。大傑作! とにかく素晴らしい!ナンバーのひとつひとつが最高! 毎日でも観ていたい傑作ミュージカル! ノックアウトされました! この「旗を掲げろ!」にノックアウトされた!

 現代の「ウエストサイド物語」というと陳腐に聞こえるけど、このミュージカルが果たした役割はそれほど大きい。しかも安易な対立の構図を作らずに、誰もが夢を抱き、前進するために頑張っている。挫折しそうになるけど、絶望はなく、幾つもの小さな幸せが、希望につながる。クライマックスの「旗を掲げろ!」の素晴らしさ! 「ウエストサイド物語」の「アメリカ」と比べたときに、このナンバーの前向きな意味がよくわかると思います。
この映画がコロナ禍で作られたことの意味! ミュージカル映画としてもパーフェクト!

国立映画アーカイブ「生誕120年円谷英二展」。コンパクトですが、あっ!と驚く展示も。いろいろ勉強になりました。

山内静夫さんの訃報。小津映画のプロデューサーであり、「男はつらいよ」第一作で、御前様のお嬢さん・冬子さんの婚約者でもあった山内静夫さんには、公私共にお世話になりました。松竹本社へ月に一回、出社されていた2002年頃、時々「ビール飲んで行こう」と歌舞伎座近くでご馳走になり、映画談義。鎌倉芸術館に山田洋次監督の講演会に行ったら、山田監督が急遽来られなくなり、山内さんから「佐藤くん、話出来るでしょ?」と急に振られて、佐藤蛾次郎さんとトークをしたこともありました。写真は、12年ほど前、衛星劇場「小津を語る」という番組で、小津安二郎監督のお話をお伺いした時です。気さくで、優しい、素敵な方でした。別な番組のロケで、山内さんのお宅を拝借して撮影したこともありました。つまり、里見弴先生のお宅です。ご冥福をお祈りします。

初公開以来となる、角川春樹監督『天と地と』(1990年)を、アマプラで。原稿を書くためなのだが、ヴィジュアルはともかく、エピソードの重ね方が平板。お正月の時代劇スペシャルみたい。それゆえに歴史的な時系列はよくわかる。

続いては黒澤明監督『影武者』(1980年)。先程の眠気が飛びました^_^

8月19日(木)『たそがれの湖』(1937年11月21日・東宝映画東京・伏水修)・『船出は楽し』(1939年4月1日・東宝映画京都・伏水修)・『直撃!地獄拳』『直撃地獄拳 大逆転』(1974年・東映)

昭和12年、こんなに素敵な音楽映画を演出した伏水修監督のセンスに惚れ惚れ。岸井明さん、江戸川蘭子さん主演!

ディズニー+「ホワット・イフ?」第二話「もしもティ・チャラがスターロードだったら?」ピーターではなくティ・チャラがヨンドゥに拉致されたら? サノスも改心するほどのワカンダの良心^_^ パロディではなく、ヒーローの性格によって世界はこれほどまでに変わる。ラストの献辞に涙ナミダ…

昭和14年の神戸。椿澄枝さんが街に溶け込んでいる。伏水修監督『船出は楽し』。戦前の神戸ロケが素晴らしく、ドキドキする!岸井明さん&徳山璉さんのビクターの売れっ子コンビの快作!


 先ほど新聞社から連絡があり、千葉真一さんが新型コロナ感染による肺炎で亡くなったとのこと。ショック・・・ 千葉真一さんの訃報。結構ショック。通信社からの電話でいろいろ話て、今は『直撃!地獄拳』(1974年・東映・石井輝男)をスクリーン投影してます。コロナめ… 引き続き『直撃地獄拳 大逆転』(1974年・東映・石井輝男)。良い意味で映画が壊れている。マナーに、気をつけろよ! 千葉真一さん、佐藤允さん、郷鍈治さんの「地獄拳」シリーズ2本を連続で。おかしいけど、悲しい。面白いけど、悲しい。サービス精神の塊のような娯楽映画。千葉真一さんのアクションのキレの良さ!素晴らしい。ご冥福をお祈りします。

 千葉真一さんのショックが続いている。お話を伺ったのは2度ほど、とにかく「情熱」のひとでした。熱く語る映画への夢。いつも具体的な話でしたが、実現を見なかったのは残念です。存在そのものがスター。存在そのものがアクション。ブルース・リー亡き後の喪失感を、質より量の活劇で埋めてくれた。「殺人拳」「直撃拳」シリーズを文芸坐で観て、ひっくり返った十代。アチャラカすれすれなのに、アクションが決まっていて、結果、カッコいい!となる。その千葉真一さんが、こんなにあっけなく…ワクチン接種さえしていれば…なのかどうかは神のみぞ知ることだが、新型コロナウイルス感染がもたらす悲しみを、改めて実感。やはり、皆さん。色々な考えがあるかも知れませんが、ワクチン接種をすべきだと思います。
「マナー、マナー知ってるのか?」

8月20日(金)『風流演歌隊』(1937年・PCL)・『白蛇小町』(1958年・大映京都)

本日8月20日のしんぶん赤旗に山田洋次監督「キネマの神様」評を執筆しております。

ようやく、近所のクリニックで、ファイザーのワクチンを接種しました。これから15分の経過観察。長い道のりでした。昼過ぎから、新聞への千葉真一さんについての原稿をまとめます。

帰宅して、通信社に送る原稿を執筆。いま、推敲していますが、少しだるくなってきました。シャワーを浴びて、冷房をかけてますが、ああ、これかな?接種後の反応は、という感じです。でも、仕事は仕上げないとね。

千葉真一さんの追悼文。入稿しました。通信社の記事なので明日以降、随時掲載されると思います。映画の記事を書くのは楽しいですが、追悼は切ないですね。

 今宵の娯楽映画研究所シアターは、大映名物、化け猫、狸御殿、そして白蛇! というわけで毛利郁子さん主演『白蛇小町』(1958年6月15日・大映京都・弘津三男)を楽しく、コワく、面白く観た。

 ファイザーのワクチン(1回目)を接種した腕の筋肉痛が始まり、キーボードを打つのがしんどくなってきた。原稿を書いている時、結構なスピードで打つのだけど、ちょいとリズムがついていけず。書くのを断念。

 岸井明&藤原釜足のモダン壮士音楽映画『風流演歌隊』(1937年)のレビューは明日にします・・・でも、明日になると、書きたいこと、書こうとしていること、忘れちゃうんだよねぇ(笑)

 戦前のエンタテインメント探検! 明治の演歌師を岸井明さん、藤原釜足さんが演じて、次々と「書生節」を歌う。映画による流行歌論。(明治から)五十年先の未来の歌も!ジャズソングも!

8月22日(日)『風流浮世床』(1939年・東宝・岡田敬)・『三大怪獣地球最大の決戦』(1964年・東宝・本多猪四郎)

今宵の娯楽映画研究所シアターは、岸井明さん、藤原釜足さんの落語映画『風流浮世床』(1939年・東宝・岡田敬)。今回も大家さんは、徳川夢声さん。春本助次郎さんに加えて、三遊亭金馬師匠、蝶花楼馬楽(のちの林家彦六師匠)、嵯峨善兵さんらの店子が乱暴過ぎて大爆笑! 穴どろ・柳谷寛さんを捕まえて、みんなでコキ使うおかしさ。「寄り合い酒」の再現が、おかしい。前作『おほべら棒』(1936年)超えのアナーキーな笑い。面白いのなんの!

 日本映画専門チャンネルで放映された「三大怪獣地球最大の決戦」4K(ダウンコンバート)版を、娯楽映画研究所シアターのスクリーンに投影。子供の頃から繰り返し観て、DVDではサルノ王女・若林映子さんとコメンタリーも行ったのに。なんて新鮮なんだろう! クリアな画質で、関沢新一さん脚本のワンダーなドラマに改めて感心。

 1月なのに、この暑さ、日本脳炎、宇宙円盤クラブ、20世紀の神話、黒部渓谷に落ちた謎の巨大隕石。テレビ番組にはインファント島の小美人が出演するし、上野の山には金星人が現れる。

 サルノ王女失踪、国際的な陰謀などなど、あれこれ盛り込んで、ラドン、ゴジラが出現。キングギドラが暴れ出し、金星人を狙うクーデター一味の暗躍。富士山麓でのラドン対ゴジラ、夢の対決。キングギドラ単体でによる都市破壊。モスラの説得…

 これだけのエッセンスが、クライマックスの三大怪獣対宇宙怪獣に集約されて、ラストは「ローマの休日」となる。
これで八十六分! なんて素晴らしいんだ!4K化されて、円谷英二監督の特撮演出、ミニチュアワークの素晴らしさを、堪能!
前作「モスラ対ゴジラ」が、怪獣対決ものの完成形とするなら、こちらはあらゆる可能性に満ちた発展形!

 4K化されて、改めて本篇の充実を実感した次第!



よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。