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『おしゃべりな真珠』(1965年6月26日・松竹大船・川頭義郎)

ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」で、川頭義郎監督『おしゃべりな真珠』(1965年6月26日・松竹大船)をピカピカのプリントで楽しむ。

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 伊東ゆかりさんが公開直前の6月20日にリリースしたシングル「おしゃべりな真珠」(作詞・安井かずみ 作曲・いずみたく)をフィーチャーした、大人の世界に踏み出した四人の女の子の、恋と愛と性を、みずみずしいタッチでスケッチしたジュニア小説のような世界。原作は今東光先生、脚色は馬場当さん、木下惠介門下の川頭義郎監督による、モノクロの小品ながら、なかなかの佳作。


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 伊東ゆかりさんは、渡辺プロダクションから再デビューを果たしてから東宝のクレイジー映画や、3人娘映画に出演、持ち歌を歌っていた。その最初の出演作品が、ノンクレジットだが、今回の「松竹レアもの祭」で上映した松竹映画『クレージーの花嫁と七人の仲間」(1962年・番匠義彰)のラスト近く、植木等さんたちが「五万節」を歌うシーンで、中尾ミエさんとツイストを踊っていた。その4ヶ月後ザ・ピーナッツの『私と私』(1962年)で中尾ミエさんとワンシーン出演。

本格的な映画出演が「スパーク3人娘」をフィーチャーした『ハイハイ3人娘』(1963年)だった。続く『若い仲間たち うちら祇園の舞妓はん』(1963年)、『続・若い季節』(1964年)と3人娘の音楽喜劇が続いて、初主演となったのが松竹の『おしゃべりな真珠』だった。なので一足飛びに大人の世界を演じたことになる。

高校を卒業した、仲良し四人組。奈々子(伊東ゆかり)は孤児ながら頑張ってスチュワーデスとなり、加代子(金子勝美)はファッションモデル、蘭子(島かおり)は文芸誌の編集者、金持ちの明美(竹村ナナエ)は大学へ進学する。

奈々子は叔父・佐山俊二さん夫婦に預けられていたが、スケベな叔父さんに嫌気が差してアパートで自活を始める。

加代子は作家の母・津島恵子さん公認のボーイフレンド、サラリーマンの三上真一郎さんの後輩の不良学生・川津祐介さんに惹かれて、身体を許してしまう。

明美は、不幸な境遇の従兄・早川保さんに恋をしているが、彼氏が京都に転勤して、寂しい毎日。

蘭子は、貧乏作家・大辻司郎さんの才能に惚れ込んで、身の回りの世話を買って出る。

明朗な青春映画のテイストでありながら、作り手の「大人たち」は、次々と若い女の子たちへハードルを用意して、乙女の甘い恋心はすんなりと成就はしない。

学生ジャズバンドでコンガを叩いている川津祐介さん(川頭監督の実弟)。ホワイトカラーは御免と自由に生きるんだ、ラテンの本場メキシコ(あのう、ブラジルじゃないでしょうか?笑)に行くんだなどと、身勝手なことを言って、加代子を欲望のままに弄ぶ。最初に往復ビンタをして彼女を押し倒すのは『青春残酷物語』のパロディというかリフレイン。

それぞれの女の子の男性への失恋や、幻滅が綴られていくのだが、さほどヘビーではなく、散文的に描いているので微苦笑のうちに映画は進んでいく。

で、乙女チックなのが、伊東ゆかりさん。ニースに住む実業家・五戸(池部良)に見染められて、真珠のネックレスをプレゼントされる。これが主題「おしゃべりな真珠」のモチーフとなるのだが、池部良さんの素敵な「あしながおじさん」ぶりは、この映画に出てくる、すべての男性のなかで一番マトモというか、幻滅させない。さすが大スター(笑)

伊東ゆかりさんの奈々子は、最初、実の叔父さん・佐山俊二さんに手を出されそうになって男性に幻滅。その上での池部良さんだから、まさに雲泥の差。佐山俊二さんと池部良さんの「落差」がおかしい。大体、佐山さんがサラリーマン姿で歩いているだけで「ありえない」と笑ってしまうので(笑)

さまざまな経験を経て、それぞれが、それなりに明日への希望を抱いていく大団円。あと口の良さも含めて、昭和40年の若い女の子たちが生き生きと描かれている。

池部良さんが「これがカプチーノといって」とカプチーノをご馳走するシーンがあるが、伊東ゆかりさんはこの年の12月20日にシングル「すてきなカプチーナ」(作詞・安井かずみ 作曲・宮川泰)をリリース。すでにこの曲は出来上がっていたのかもしれない。

7月14日(水)。ラピュタ阿佐ヶ谷で、14時20分の回上映後、伊東ゆかりさんとトークをさせて頂きます!

https://note.com/toshiakis/n/n1192af4b6ec4

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