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『快人黄色い手袋』(1961年・松竹大船・市村泰一)

ラピュタ阿佐ヶ谷「蔵出し!松竹レアもの祭」の目玉作品!川内康範先生、原作・脚本による、伴淳三郎主演のヒーロー映画『快人黄色い手袋』。最高に美しいプリント上映、本日最後なので、観てきましたよ。

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「月光仮面」「銀座旋風児」など川内康範センセの創出した正義の味方「黄色い手袋」が八面六臂の大活躍! MCUならぬGCU(月光シネマティック・ユニバース)と名付けておきましょう^_^

冒頭、セピア色の画面、月光庵で執筆中の川内康範先生が登場。ストーリーテラーというがアジテーターとして正義論を語り、タイトル。主題歌「黄色い手袋の小父さん」(作詞・川内康範 作曲・小川寛興)が流れるなか、子供のヒーロー・黄色い手袋が颯爽登場!

伴淳三郎さんと鳳八千代さんは、DINKS夫婦。名和宏さんが編集長の「週刊トップ」で活躍するトップ屋。全くの偶然だけど、4年後に「週刊トップ」のトップ屋となるのが「大冒険」(1965年)の植木等さん! そんなことを考えてしまうクレイジー脳。

義賊・黄色い手袋は、政財界の汚職・脱税の悪党たちから大金をせしめて、貧しい人に還元したり、代わりに税務署に納税したり^_^

登場シーンで必ず流れる「黄色い手袋の唄」は、三船浩さんの「月光仮面の歌」のポジションにあたる。歌っているのは森繁久彌さん!「どうせこの世は火の車〜」の森繁節は、新東宝の森繁アチャラカ時代を思わせる。伴淳三郎さんと森繁久彌さんの友情の賜だけど、じつは川内康範先生は、昭和20年代、森繁さんの書生というか弟分で、新東宝時代のアチャラカ映画の挿入歌を川内康範先生が作詞していたのは、森繁さんがバックアップしていたから。

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中盤、マスコミの前に、いよいよ黄色い手袋が現れるか!というシーンが最高。池袋西武百貨店の屋上遊園地に、良い子を集めて、プレゼントをする。ボクシングの米倉健志、力道山、林家三平師匠がゲスト出演。

河田町のフジテレビでの「黄色い手袋 是が非か」討論会では、戦前からのスター、宮城千賀子さん、棋士・木村義雄さんも登場したり^_^

黄色い手袋が、ヘリコプターに乗って、上空から子供たちにふりまくのは、なんとチキンラーメン! タイアップなので、登場人物がやたらとチキンラーメンを食べる。週刊トップの事務員に石井富子さん! エキストラの学生に近藤正臣さんらしき人を見つけたが、一緒に観ていた河崎実監督が「近藤正臣さんいたでしょう」と興奮していたので、間違いないでしょう^_^

伴淳夫婦のアパートの隣人・探偵の紫五郎太に、小坂一也さん。その恋人に「怪獣マリンコング」にも出ていた北條きく子さん! 果たして黄色い手袋の正体は誰か? 彼女の霊感を持ってしても分からず、観客もイマイチわからない(これは市村監督の演出に問題があるのだけど)。

敵のギャング・南支那海の禿鷹(五味勝雄)の配下の役で、川内康範先生も特別出演。活劇シーンは、松竹大船クオリティ^_^ 日活アクションを見慣れていると、悠然とした味わい^_^

勝鬨橋から晴海の見本市会場へと、南支那海の禿鷹の配下を追いかける鳳八千代さんの車が駆け抜けるシーンが良い感じ。

ラスト、有楽フードセンターの前、数寄屋橋公園で登場人物の前に現れる黄色い手袋(実はサンドイッチマン)のプラカードは、「黄色い手袋の唄 森繁久彌 コロムビアレコード」という楽屋オチ。さらにその後ろは、シャッターの降りた、数寄屋橋阪急百貨店。2年後、東宝映画「社長外遊記」で、森繁社長の会社としてロケーション。どこまでも「森繁さんの影」が見え隠れする伴淳映画でありました^_^

上映後、河崎 実監督がひとこと「オレの映画じゃん」。まったくもってその通り!まったく異論はございません^_^

美麗プリントでストレスゼロ! 楽しい映画体験でした。

ちなみに、この「黄色い手袋」は、後に川内康範先生原作、桑田次郎先生画による「黄色い手袋X」として漫画で蘇ることに!

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