見出し画像

『ハイハイ3人娘』(1963年1月29日・宝塚・佐伯幸三)

一昨日、娯楽映画研究所シアターでは、伊東ゆかりさん、中尾ミエさん、園まりさんの「スパーク3人娘」をフィーチャーした音楽青春喜劇『ハイハイ3人娘』(1963年1月29日・宝塚・佐伯幸三)を投影。

画像1

フジテレビ「森永スパーク・ショー」で売り出した”スパーク3人娘”はテレビドラマ「レッツ・ゴー三人娘」(1962年7月〜9月)や、映画へと進出。タイプの違う三人娘を映画でジョイントさせるというプロジェクトは、昭和30(1955)年、東宝で作られた美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみの『ジャンケン娘』(杉江敏男)に倣ったもの。

プロデューサーは「三人娘映画」を成功させた杉原貞雄。つまり「正統派の三人娘映画」として企画されたことになる。渡辺プロダクションのハナ肇とクレイジーキャッツ、スリー・ファンキーズ、田辺康雄さん、水原弘さんが顔を揃えた豪華版。さらに東宝の高島忠夫さん、江原達怡さん、若林映子さん、藤山陽子さん、北川町子さんと、宝塚映画としては、破格の豪華キャスティング。

原作は、川上宗薫さんのジュニア小説「先生・先輩・後輩」。脚色は青春映画のベテラン井手俊郎さんが手がけている。音楽は渡辺プロダクションの平岡精二さん。スタッフ、キャストとも破格なのは、東宝がいかに渡辺プロダクションとのユニット制作に力を入れていたかがわかる。クレージー映画同様、テレビの人気者を揃えた映画は、ヒットが約束されていた。

それは同時に、映画界の斜陽が始まっていたことの証でもある。自前のスター、自前の企画では動員が厳しくなっていた。その活路を渡辺プロダクションとのユニット制作に見出していた。

間宮今日子(中尾ミエ)の家に、毎夕6時きっかりに、水原弘さんの声色で「貴女が死ぬほど好きです」と電話が掛かってくる。その電話の主は誰か? 天野千恵子(伊東ゆかり)と江藤悠子(園まり)は早速捜査を始めるが・・・ 

といったシンプルなストーリーに、今日子の兄で婦人科医・甲太郎(植木等)と房江(北川町子)夫婦。千恵子の兄で楽器店経営・清一郎(谷啓)と妻(横山道代)夫婦。そして学園の江藤教頭(ハナ肇)たちの大人が右往左往。さらに三人娘が「電話の主」ではないかと疑う、同級生・浦太一(高倉一志)、内村満春(長沢純)、折口敬治(手塚しげお)のスリーファンキーズ、今日子の憧れの飯田幸四郎先生(高島忠夫)たちが次々と登場する。

宝塚映画の制作なので、六甲山を望む兵庫県での冬のロケーション。昭和37年の空気が鮮やかに蘇る。なんといっても音楽シーンが充実している。

アバンタイトル、教室で3人娘とスリーファンキーズが、植木等さんの「ハイそれまでョ」をご機嫌に歌う。ツイスト娘・中尾ミエさんの面目役如である。オチに、ハナ肇さんの教頭が出てきたところで、3人娘の歌う主題歌「ハイハイ3人娘」となる。

伊東ゆかりさんのソロは「レディになったのよ」、園まりさんは「マイ・ボーイフレンド」。それぞれ今でいうプロモーションビデオのような作り。ファンへの大サービス。

男性陣は、長沢純さん「ダンス・ウィズ・ミー」、田辺康雄さんの「雲にきいておくれよ」、そしてお待ちかね植木等さん「やせがまん節」(お医者・教師バージョン)

そして中尾ミエさんのソロは、平岡精二作曲によるミュージカル・ナンバー「6時になると」。プロダクションナンバーとして用意されていて、植木等さんも客演。そして「森永スパークショー」のナンバーだったというオチが楽しい。

そしてスリーファンキーズ最大のビッグヒット「ナカナカ見つからない」(作詞・青島幸男 作曲・桜井センリ)。これもフルで歌っているので、貴重な映像記録となっている。

そして高校のOB役で水原弘さんが学園祭のステージで歌う「ハイキング・ヤッホー」。アダルトなイメージの水原さんによる「青春サイクリング」タイプの明るい曲調、かえって新鮮に感じる。

そして、本作のハイライトの一つ、教師と父兄を演じたハナ肇とクレイジーキャッツ全員による「五万節」(学園祭バージョン)が楽しく歌われる。歌詞はこの映画のこのシーンのためだけのバージョンなので、これまた貴重!

そして学園祭のクライマックスは、中尾ミエさんの「星をあげましょう」、3人娘の「青い空を見上げて」(作詞・作曲・平岡精二)。ブロードウェイの「ウエストサイド・ストーリー」の振り付け師・ラウル・アペルと、そのダンサーたちが参加しての大プロダクションナンバー。

「声の主」の正体もわかってのハッピーエンディングに、エピローグ的に3人娘がご機嫌に歌う「ハイハイ3人娘」(作詞・作曲・平岡精二)で賑やかに終幕。

東宝娯楽映画としても、渡辺プロダクションのスターの記録としても楽しく、貴重な作品となった。テレビやレコード、ステージで、ますます力をつけた3人娘は、この年の6月30日『若い仲間たち うちら祇園の舞妓はん』(宝塚・佐伯幸三)、翌年3月20日公開、NHKの人気バラエティドラマの映画化第二作『続・若い季節』(古澤憲吾)で再びスクリーンで弾けることに!



よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。