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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年9月12日(月)〜9月18日(日)

9月12日(月)『アメリ』(2001年・フランス・ジャン=ピエール・ジュネ)・『ラスト・エンペラー』(1987年イタリア・中国・英・仏・米・ベルナルド・ベルドリッチ)

9月16日(金)「映画と音楽、そして対話」(すみだトリフォニー小ホール)の準備。箏奏者の西陽子さんがセレクトした『アメリ』(2001年・フランス・ジャン=ピエール・ジュネ)を20年ぶりに娯楽映画研究所シアターで投影。ダイアナ妃が事故死をしたその日から、アメリ(オドレイ・トトゥ)は、奇跡を起こして人々に「小さな幸せ」をもたらす。音楽を担当したヤン・ピエール・ティルセンは、フランスのミュージシャンで、クラシック音楽とフランス・フォーク・ミュージック、そしてミニマル・ミュージックのような構成で、アメリの奇跡のように「小さな楽器=おもちゃのピアノ、ヴァイオリン、メロディカ、木琴」、タイプライター」を重ねて幸福なサウンドにしていく。アメリが働くカフェのBGMが、ハリウッド・ミュージカルのスタンダードばかりなのも嬉しい。

続いてはピアノの林正樹さんセレクトが演奏する『ラスト・エンペラー』(1987年イタリア・中国・英・仏・米)を二十数年ぶりにスクリーン投影。紫禁城でのロケーション。ヴィットリオ・ストラーロの見事なキャメラ。清朝最後の皇帝で、のちに満州国皇帝となった愛新覚羅溥儀の生涯を描いた歴史大作。ジョン・ローンが溥儀、ジョアン・チェンが第一夫人・婉容を演じ、坂本龍一が甘粕正彦大尉として暗躍。ピーター・オトゥールのイギリス人家庭教師のキャラがいい。

9月13日(火)『すばらしき世界』(2020年・ワーナー・西川美和) ・『ひまわり』(1970年・イタリア・ヴィットリオ・デシーカ)

今宵は、ピアニストの林正樹さんが音楽を担当した、役所広司さん主演の『すばらしき世界』(2020年・ワーナー・西川美和)を試写以来のスクリーン投影。今回は音楽に耳を集中して観る。やくざ映画ではなく、人生の大半を刑務所で過ごしてきた一匹狼の主人公の更生をテーマにしたドラマ。周囲の人の善意、見てみぬふりができない主人公の激情。林さんの静かなピアノが主人公の心象風景を、観客に共有させてくれる。梶芽衣子さんがとてもいい。

続いては、箏奏者の西陽子さんセレクトによる『ひまわり』(1970年・イタリア・ヴィットリオ・デシーカ)。ヘンリー・マンシーニによるテーマ曲。タイトルバックのひまわり畑。12日間だけの夫婦生活の楽しさと別れの切なさ。第二次大戦のロシア戦線、ウクライナで行方不明となった夫・マルチェロ・マストロヤンニを探すために、ソフィア・ローレンは10年以上の歳月をかけて、ソ連へ。マストロヤンニが暮らす街には原発のサイロがある。そのヴィジュアルのショック。悲しい現実を前に、なすすべもないソフィア・ローレン。そして今度は、マストロヤンニが苦労をして、ミラノへとやってくる。その再会・・・。これを小学一年生の時に、おふくろに連れられて銀座で観た時は、とにかく大変な話だと思ったが、半世紀経って観るとしみじみ味わい深い。

9月14日(水)『オズの魔法使』(1939年・MGM・ヴィクター・フレミング)・『モダンタイムス』(1936年・ユナイト・チャールズ・チャップリン)

今宵は、ギタリストの山田岳さんが演奏してくれる「虹の彼方に」と「スマイル」が登場したハリウッド・クラシックスの二本立て。ジュディ・ガーランドの出世作となった『オズの魔法使』(1939年・MGM・ヴィクター・フレミング)は、我が生涯のベスト映画でもある。何もかもマスターピース。そして何度見ても新鮮。

9月15日(木)『禁じられた遊び』(1954年・フランス・ルネ・クレマン)・『道』(1954年・イタリア・フェデリコ・フェリー二)・『男と女 人生最良の日々』(2019年・フランス・クロード・ルルーシュ)

今宵は、明日のすみだトリフォーニー小ホールでの『映画と音楽、そして対話』で、箏奏者の西陽子さんが演奏する三本の映画をスクリーン投影。ルネ・クレマン監督『禁じられた遊び』(1952年・仏)は、戦争で孤児となった5歳の少女・ポーレット(ブリジット・フォッセー)と牛追いの少年・ミシェル(ジョルジュ・プージュリー)の物語。全編、ナルシソ・イエペスが音楽を担当。主題曲「愛のロマンス」はギター入門曲として日本でも大ヒットしたが、元はタイロン・パワーとリタ・ヘイワースのハリウッド映画『血と砂』(1942年)の挿入歌でもあった。何度見ても切なく、何度見ても辛い。ラストの駅でのポーレットの「ミシェル!」の声の切なさ。

フェデリコ・フェリーニ監督、ジュリエッタ・マシーナ、アンソニー・クイン主演『道』(1954年・伊)は、旅芸人で粗野なザンパノ(アンソニー・クイン)と心が美しい少女・ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)の物語。主題歌“Tema Della Strada”は、のちに歌詞がつけられて「ジェルソミーナ」として、ニラ・ピッツィ、ザ・ピーナッツたちが歌っって大ヒット。沢田研二、美輪明宏はそれぞれ自分で作詞をして歌っている。

そして1966年の初作から半世紀以上の時をへて、ジャン=ルイ・トランティニアン、アヌーク・エーメが主演、クロード・ルルーシュが演出した『男と女 人生最良の日々』をスクリーン投影。「老い」をテーマにしながら、あの時の「パッション」が人生の最後の日々を美しいものにしてくれる。本当に素晴らしい。施設に入った余命行くばくもないジャン=ルイが、息子の計らいで、かつての恋人・アンヌと再会。薄れゆく記憶の中で「あの日々」の感覚が蘇っていく。回想シーンで、第1作の名場面とフランシス・レイの音楽がふんだんに登場。奇跡のような映画である。

鰐淵晴子さん、「徹子の部屋」(9月15日放送)冒頭でいきなり、僕の話から始めてくださり、驚きました。ラピュタ阿佐ヶ谷でのトークの写真も番組で紹介。嬉しいやら、お恥ずかしいやら。鰐淵さん、ありがとうございます。

インタビュアーを務めている藤重博貴さんは、2015年、秋田放送局勤務のときに、電話をくださって「加山雄三さんのラジオ番組をやります。出てください!」「今日は一日加山雄三三昧」を企画。まだ20代の若者でしたが、相当なカヤマニアでした。

番組では、星由里子さん、中真千子さん、佐藤利明で「若大将シリーズ」を語るというコーナーに出演させて頂きました。

それから七年、先日、加山雄三ラストショーのリハーサル現場に、取材に行ったとき、やはり取材に来ていた藤重さんと再会しました。若大将が結ぶ縁です。藤重さんのインタビュー、さすがの「熱」です! 彼のカヤマニアぶりが発揮されてます!

9月16日(金)すみだトリフォニーホール 小ホール「映画と音楽、そして対話」

すみだトリフォニー小ホール。「映画と音楽、そして対話」。多くの方々に足をお運び頂き、ありがとうございました。林正樹さん、西陽子さん、山田岳さんの素敵な演奏とともに最高の夜となりました。2023年、両国アートフェスティバルの芸術監督を務めさせて頂きます! 素晴らしいキックオフになりました! これから一年、宜しくお頼ん申します!

撮影:ムトー清次さん

【プログラム】

プロローグ 隅田川に撮影所があった頃
 トーク カチューシャ〜日活向島撮影所

第一部   日本映画と音楽 演奏:林正樹(ピアノ)
     M1)ラストエンペラー
 対話と音楽 蒲田行進曲〜ゴジラ〜男はつらいよ〜どですかでん
     M2)すばらしき世界

第二部 ヨーロッパ映画と音楽 演奏:西陽子(箏)
     M3)ひまわり
 対話と音楽 ひまわり〜道〜禁じられた遊び〜黒いオルフェ〜男と女
     M4)アメリより
 
第三部 ハリウッド映画と音楽 演奏:山田岳(ギター)
     M5)虹の彼方に
 対話と音楽 荒野の七人〜トゥナイト〜さらば青春の光〜シャイニング
     M6)スマイル

第四部 音楽で映画を創る〜明日に向かって
     演奏:林正樹 西陽子 山田岳
     M7)ニューシネマ・パラダイス(ピアノ、箏、ギター)

芸術監督・ナビゲーター 佐藤利明

9月17日(土)「警視庁物語 行方不明」(1964年・東映)・「刑事物語 小さな目撃者」(1960年・日活・小杉勇)・「刑事物語 ジャズは狂っちゃいねぇ」(1960年・日活・小杉勇)

昨夜は「刑事映画」三本立て。東映「警視庁物語」最終作では、クライマックスの浅草「片手洋食・ベル」「新世界」にときめき、日活「刑事物語 小さな目撃者」では男の子の「七色仮面」お面とマント、「同 ジャズは狂っちゃいねぇ」の白木秀雄クィンテットに興奮!

「刑事物語 小さな目撃者」(1960年・日活・小杉勇)は、墨田区の薬品倉庫の守衛夫婦が殺害され、幼い息子が目撃者となる。所轄は向島署だが撮影は北区の史跡西ヶ原一里塚の前。犯人の1人が殺害されるのは江東楽天地だが亀戸駅前のマルコー前(現在のドンキホーテ)で撮影。と微妙なロケ地ズレを楽しむ。白鬚橋も度々登場。日活映画だけど男の子は終始、東映の「七色仮面」コスプレ!

9月18日(日)

今日は東京も雨、雨、雨… 明日からスタジオワーク、明後日は打合せ、水曜もコンサート。なので25日(日)阿佐ヶ谷ネオ書房「娯楽映画の昭和VOL.7 東京物語」の素材準備。ここのところラジオ、コンサートと音楽モードだったので映画脳に戻って…

よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。