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『東京チャキチャキ娘』(1956年8月14日・松竹大船・番匠義彰)

今宵の娯楽映画研究所シアターは、番匠義彰研究。中村メイコさん主演、杉浦幸雄さん原作「週刊東京」連載の漫画を、三木鮎郎さんがラジオドラマに脚色した人気番組の映画化『東京チャキチャキ娘』(1956年8月14日・松竹大船)を久々に。22歳の若さ弾ける中村メイコさんのコメディエンヌぶりが楽しめる66分、モノクロの小品。

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この年の年末、12月12日に、江利チエミさんが東宝で、長谷川町子さんの『サザエさん』(青柳信雄)に主演して、人気シリーズとなるが、それに先駆けて作られた明朗漫画の映画化作品。昭和30年代に入って、黄金時代となる映画界は、人気漫画を次々と映画化することになる。

番匠義彰監督としては、ちょうど一年前『かりそめの唇』(1955年8月24日)でデビューしてわずか一年。昭和31(1956)年だけで、『むすこ大学』(1月8日)、『駄々ッ子社長』(2月12日)、『ここに幸あり 前編・誘惑の都』(3月28日)、『同 後篇・花咲く朝』(4月4日)、『楽天夫人』(6月15日)に続く、この年六作目となる。このハイペースは、ブロックブッキングシステムによる二本立て興業の時代となり、一定のクオリティを維持しながら多作監督として、番匠監督が徴用されていた証でもある。

東京郊外。世田谷区北沢界隈。東京チャキチャキ娘・茶木千秋(中村メイコ)が、世田谷の光景を見渡す原っぱで主題歌「東京チャキチャキ娘」(作詞・佐伯孝夫 作曲・渡久地正伸)をリズミカルに歌いだしてタイトルバック。この原っぱは、この1月15日公開『子供の眼』(川頭義郎)で、主人公の少年・設楽幸嗣が愛犬と走り回っていたフィールドだろう。ハツラツとした中村メイコさんのキビキビした動き、そしてパワフルな歌声! 

『東京チャキチャキ娘』は、劇中、かなりの頻度でメイコさんが歌うシーンをフィーチャーしている、すべてのアレンジは音楽担当の神津善行さん。本作で、メイコさんと出会い、程なく結婚。今でもおしどり夫婦として知られている。ぼくもB Sテレビ東京「武田鉄矢の昭和は輝いていた」で、神津善行さん、中村メイコさん夫妻と共演させて頂いたことがある。楽屋でこの映画の話を伺ったら、お二人とも懐かしそうに思い出を話してくださった。

さて、タイトルバックが開け、チャキチャキ娘の歌が終わると、卒業したばかりの女学校の仲良し、藤原百合子(泉京子)と柿内桃代(千村洋子)が駆け寄ってくる。早速、千秋は自宅へ二人を誘う。千秋の父・万吉(日守新一)と母・かおり(沢村貞子)は結婚20年で、今でも仲良し。しかし、母・かおりは、極度のヤキモチ焼き。万吉が、亡くなった親友の娘・神山静子(藤乃高子)の面倒をみている事を、浮気と勘違いして大騒動に。

さて、千秋が親友二人と、家に帰ってくると、近所に住む従姉妹・茶木幸枝(古賀さとこ)が一大事と、駆け込んでくる。フェンシングクラブを主宰している父・千吉(永井達郎)が母・花子(水上令子)から、お弟子さんが0なのだから、クラブを閉鎖すべきと詰め寄られてるという。

ここで、童謡歌手出身の古賀さと子さんが登場! 彼女もタップリ、可愛い歌声を披露してくれる。

江戸っ子で、人のピンチには黙っていられない千秋は、ボーイフレンドの寿司屋・宮古トロ吉(福島正剛)、クリーニング屋・渋谷デン吉(長谷部朋香)、消防士・火野カン太郎(末永功)の三銃士に助っ人を頼む。トロ吉の寿司屋は、美ど利寿司で撮影。今、全国展開している「梅丘寿司の美登利総本店」の前身だろう。トロ吉くん、その後、頑張ったんだなぁと(笑)

で、頓珍漢な、フェンシング・チームが出来上がる。そこに飛び込んできた近所で開業したばかりの歯医者・鈴木五郎(川喜多雄二)が千秋と勝負して、鮮やかな剣捌きで圧勝。千秋はたちまち夢中になるが、五郎の恋人は神山静子で、事態は次第にややこしくなってくる。

シーンの変わり目に、必ずメイコさんが歌うシーンが入るので、観ていて楽しい。これがシリーズ化されていたら、と思うほど、明朗音楽青春映画としての楽しさに溢れている。番匠演出は、特に奇を衒ったものではないが、中村メイコさんの芸達者な動き、チャーミングな表情を、きちんとフィルムに捉えて、小気味良いテンポで話を進めていく。

ラスト近く、箱根行きの小田急「箱根号」が登場する。ロマンスカーの前身で、車両最後部はパノラマ窓となっている。

この時の松竹のお盆興行二本立てのメインは、高田浩吉さん主演、音楽時代劇『花笠太鼓』(松竹京都・福田晴一)。江利チエミさん、花菱アチャコさん、伴淳三郎さん、ミヤコ蝶々・南都雄二さん出演の明朗篇。江利チエミさん、中村メイコさんが二本立てで競演するという番組だった。なぜなら、翌日の8月15日には、東宝で、美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみの“三人娘”シリーズ第二作のカラー大作『ロマンス娘』(東宝・杉江敏男)と、宮城まり子主演の音楽喜劇『ボロ靴交響楽』(東京映画・西村元男)の公開が控えていたからだろう。

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【タイトル・クレジット】
原作 杉浦幸雄
   三木鮎郎
  「週刊東京」連載中
脚色 中山隆三

製作 長島豊次郎
撮影 生方敏夫
録音 大村三郎

美術 木村芳男
照明 豊島良三
音楽 神津善行

装置 山中国雄
装飾 星野武
衣裳 田口よし江
現像 神田亀太郎
編集 浜村義康

監督助手 生駒千里
撮影助手 川尻俊介
録音助手 堀義臣
照明助手 飯島博
録音技術 金子孟
進行 浜野敬

配役
中村メイコ・・・茶木千秋
川喜多雄二・・・鈴木五郎
藤乃高子・・・・神山静子
古賀さと子・・・茶木幸枝
日守新一・・・・茶木万吉

沢村貞子・・・・茶木かおり
永井達郎・・・・茶木千吉
水上令子・・・・茶木花子
福島正剛・・・・宮古トロ吉
末永功・・・・火野カン太郎
長谷部朋香・・渋谷デン吉
泉京子・・・・萩原百合子
千村洋子・・・柿内桃代
山名義夫・・・鈴木六郎
佐原康・・・・歯科の客
島村俊雄・・・牛車の男

連続放送中
ラヂオ東京 北海道放送
ラヂオ新潟 ラヂオ福島
静岡放送 ラヂオ京都
新日本放送 ラヂオ山陰
ラヂオ山口 九州朝日放送
ラヂオ熊本 ラヂオ南日本
琉球放送

主題歌 ビクターレコード
A・東京チャキチャキ娘
B・娘 太平記
 佐伯孝夫 作詞
 渡久地政信 作曲
 中村メイコ 唄

監督 番匠義彰


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