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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年6月27日(月)〜7月3日(日)

6月27日(月)『ゴーストブック おばけずかん』(2022年・東宝・山崎貴)・『監獄ロック』(1957年・MGM・リチャード・ソープ)・『フランケンシュタインの怪獣 サンダ大映ガイラ』(1966年・東宝・本多猪四郎)

これから東宝で山崎貴監督『ゴーストブック おばけずかん』試写。なかなか楽しく拝。妖怪たちのキャラが面白く、特にクライマックスのボスキャラ・ジズリのドラゴン感がカッコ良かった。子供たちは夢中になるかも?

今日の午後、テレビのクルーが事務所(兼自宅)に来訪して2時間、インタビューを受けました。局や番組名は情報解禁時にお知らせします。本やDVD、フィギュアが溢れている娯楽映画研究所が初めて電波に乗ることに…。デジカメでサクッと思っていたら2カメで照明も設置。酷暑の中、本当に本当にご苦労さんです。

6月27日(月)の娯楽映画研究所シアターは、エルヴィス・プレスリー3本目の映画『監獄ロック』(1957年・MGM・リチャード・ソープ)と東宝怪獣バトルの最高峰『フランケンシュタインの怪獣 サンダ大映ガイラ』(1966年・東宝・本多猪四郎)をスクリーン投影。

2本の共通点は、ラス・タンブリン!前者では、ロバート・J・ブロンナーがエルヴィスのために考案した「監獄ロック」の振付を、エルヴィスが友人のラス・タンブリンに、二人きりの時に披露。あの特徴的な膝を曲げる動きを、ラス・タンブリンがアドバイス。

ロバート・J・ブロンナーは、ラスの盟友でもあり、のちにジョージ・パルの『親指トム』のアクロバットダンスを、二人で考案。というわけで、そのラス・タンブリンが『ウエストサイド物語』(1961年)で日本でも大人気になり、『サンダ対ガイラ』の主演に!

というわけで、娯楽映画研究家としては、関連作品なのであります!
ちなみに『監獄ロック』のエルヴィスは、憧れのジェームズ・ディーンをイメージして役作り。そして、ジェームズ・ディーンに憧れて俳優になったわれらが古谷敏さんが、『サンダ対ガイラ』にご出演!!

娯楽映画研究所999本目の記事! 今週末公開バズ・ラーマン監督『エルヴィス』にちなんで、やはりこれ!

6月28日(火)『ベイビー・ブローカー』(2022年・韓国・是枝裕和)・『いかすぜ!この恋』(1965年・アライドアーチスツ・ノーマン・タウログ)・『キングコングの逆襲』(1967年・東宝・本多猪四郎)

是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』。予想を遥かに越えて、本当に良かった。ソン・ガンホ、当たり前だけど抜群。観ながら、前田陽一監督作品を観ているような気分に。バラバラの訳あり連中が、次第に疑似家族になっていく。最後の夜のホテルのシーンに涙。あと口も爽やかで、最高の映画体験に! 前田陽一監督の『神様のくれた赤ん坊』(1979年・松竹)『喜劇 家族同盟』(1983年)を思い出しつつ。素晴らしい作品です!

是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』を観ていて、心掴まれるのは、俳優たちの芝居の良さ。昭和20年代から40年代にかけての邦画を観ている身としては、ソン・ガンホにしても、カン・ドンウォンにしても、キャラクターの打ち出し方が往年のバイプレイヤーの味。

しかもヒロインのイ・ジウンと、刑事の ペ・ドゥナの対比などは日活映画における撮影所のスターと新劇女優の共演のようで、何もかも行き届いている。そして子役!サッカー少年のイム・スンスの「うまさ」が全部持っていってしまう。まさに昭和の子役! 

だから現代の韓国の物語なのにプログラムピクチャーを観ている安心感がある。バラバラの登場人物たちが、赤ちゃんを通して繋がっていき、それぞれの欠落、屈託を補い合いながら、かけがえのない関係になる心地よさ。「生まれてくれてありがとう」作ってくれてありがとう!の映画なのです。

6月28日(火)の娯楽映画研究所シアターは、エルヴィス・プレスリーのTickle Me『いかすぜ!この恋』(1965年・アライドアーチスツ・ノーマン・タウログ)を米盤DVDからスクリーン投影。なにもかもアベレージのプレスリー映画。例えていうなら若大将映画。ただ、唯一のアライド・アーチスツ作品で、ソフト化に恵まれず、VHS時代からレア作品。ぼくのブログ「佐藤利明のTickle Me」はこの映画に因んだもの。

続いては、東宝怪獣映画の成熟期の『キングコングの逆襲』(1967年・東宝・本多猪四郎)を昨年発売のBlu-rayからスクリーン投影。モンド島→北極→東京と、スケール感のある空間移動。コングvsゴロザウルス、コングvsメカニコングの怪獣対決を堪能! 宝田明さんのダンディぶり!

6月29日(水)『銀座化粧』(1951年・新東宝・成瀬巳喜男)・『銀座のお姐ちゃん』(1959年・東宝・杉江敏男)・「ミズ・マーベル」第4話「レッド・ダガーズ」・『静かなる対決』(1946年・ユナイト・エドウィン・L・マーティン)

神保町シアターで成瀬巳喜男監督『銀座化粧』(1951年・新東宝)。銀座四丁目の服部時計店から始まる。地下鉄入口、そして日本堂前で時間を聞いて、昭和通りを渡って家に帰る春夫ちゃん!坊やのパトロールが楽しい。嗚呼、東京時層探検!

神保町シアター『銀座のお姐ちゃん』(1959年・東宝・杉江敏男)。やー、やっぱり中島そのみさん最強!最初から最後まで笑いっぱなし。なんといっても、その「おやじ」上原謙さんのシルバーの恋。東宝娯楽映画最強トリオは、やっぱりザギンのちゃん姐! 明朗をはるかに超えた爆笑篇。

note「佐藤利明の娯楽映画研究所」記念すべき1000本目の記事、UPしました!これもまた、東京映画時層探検の楽しみであります!2020年4月、コロナ禍で始めたnote「佐藤利明の娯楽映画研究所」。連日、映画原稿を書いているうにち1000本目の記事となりました。今日、神保町シアターで観た『銀座化粧』には格別の想いがあります。どなた様も、今後とも、よろしくお頼ん申します!

ディズニー+「ミズ・マーベル」第4話「レッド・ダガーズ」。舞台はパキスタンのカラチへ。ニュージャージーで育ったヒロイン、カマラが曽祖母の秘密を探るために、祖母の招きでカラチへ。これまでアメリカのパキスタン・コミュティの物語だったが、ここで一気に、1947年6月4日の分離独立運動の混乱、騒乱のなか「何があったのか?」のドラマへと拡がっていく。

カラチには、ある秘密組織の基地があり、カマラはそこに招かれる。やー、面白い。赤いバンダナの青年(アラミス・ナイト)が登場。カマラ(とその能力の源であるバングル)を守るための組織なのである。ここからアクション、アクション、またアクション。

このバンダナの青年を演じているアラミス・ナイトは、パキスタン系の俳優で『ダークナイト・ライジング』(2005年)に、セリーナ・カイル=キャット・ウーマン(アン・ハサウェイ)に助けられた男の子を演じていた子役!
というわけで、イギリス統治下、英国の思惑でインド・パキスタンを分離させらた民族の物語と、異次元からやってきた連中とカマラの曽祖母たちとの戦いがリンクしてきて、エライことになってきた。

カラチの市場でのカーアクション、バトルシーンのヴィジュアルも迫力満点。かつての007映画やインディ・ジョーンズのようなエキゾチックな娯楽映画の味わいもある。次回も楽しみ!

6月29日(水)の娯楽映画研究所シアターは、ランドルフ・スコット主演の西部劇Abilene Town『静かなる対決』(1946年・ユナイト・エドウィン・L・マーティン)をアマプラからスクリーン投影。1946年に製作されたギルド・プロダクションの小品かと思いきや、これは面白かった。日本での公開は1952(昭和27)年12月に公開されている。

6月30日(木)寺田倉庫「鈴木敏夫とジブリ展」・『燃える平原児』(1960年・FOX・ドン・シーゲル)

今朝も、あぢー。これから天王洲まで。東海橋のたもとで溶けないように、水分保持。皆さんも、ご安全に! 明日は、いよいよバズ・ラーマン『エルヴィス』初日です!『エルヴィス』は、単なる伝記映画でなく、ロックが誕生し、黒人の音楽だったリズム&ブルースを、抜群の音楽感性の白人の若者が「世界の音楽」にしてしまった「音楽革命の時代史」でもあります。エルヴィスが変えたエンタメ史のうえに、僕らが生きていることを気づかせてくれる映画です。

寺田倉庫「鈴木敏夫とジブリ展」。鈴木敏夫プロデューサーの少年時代から現在まで、圧倒的な情報の海を漂う心地よい空間。最後のコーナーで、蔵書8800冊を一堂に会した書棚に、ぼくがこれまで出してきた本が、ほぼ収蔵されていて、感動しました。本当にありがとうございます。娯楽映画研究家の仕事をしてきて良かったなぁ!

6月30日(木)の娯楽映画研究所シアターは、ドン・シーゲル監督とエルヴィス・プレスリーの異色西部劇『燃える平原児』(1960年・FOX)をスクリーン投影。お仕着せのミュージカル・コメディに食傷したエルヴィスが演技派を目指して出演した本格ウエスタン。


7月1日(金)『百花』(2022年・東宝・川村元気)・『エルヴィス』(2022年・ワーナー・バズ・ラーマン)・『殺し屋の烙印』(チャールズ・マークィス・ウォーレン)

川村元気監督『百花』試写。わかりやすく丁寧に、母・原田美枝子さんと息子・菅田将暉さんの物語が綴られる。原田美枝子さんが圧倒的で、認知症の現在と1994年の若き日の美しさを見事に演じ分けている。時代の再現もさりげなく、ミステリー仕立てで母子のトラウマが明らかになっていくスリルもある。フォトジェニックで静謐だけど、わかりやすい。このわかりやすさが、川村元気さんらしさなのかも。

TOHOシネマズ日比谷スクリーン1で、本日初日『エルヴィス』再見。やー、素晴らしかった。オースティン・バトラーにエルヴィスが乗り移り、1956年から1977年を駆け抜ける。やはり、ラストパフォーマンスのこの曲に魂が震える。大スクリーンで観るのをオススメします。次はドルビーシネマで!

バズ・ラーマン『エルヴィス』を観た勢いで、1969年、エルヴィスにとっては最期の西部劇『殺し屋の烙印』(チャールズ・マークィス・ウォーレン)をスクリーン投影。可もなく不可もなくのアベレージ作品ながら、エルヴィスの孤高のガンマンぶりがカッコいい。ほぼマカロニ風味^_^

「エルヴィス」におけるトム・パーカー大佐の描き方が悪いのではなく、大佐(自称)そのものが米芸能史上最悪のパラサイトだった。「アマデウス」におけるサリエリ的存在。それでもなおエルヴィスの音楽、パフォーマンスが如何に素晴らしかったか!今宵もエルヴィスの歌を聴きながら晩酌。

7月2日(土)『如何なる星の下に』(1962年・東宝・豊田四郎)・『ジュラシックパーク』(1993年・スティーブン・スピルバーグ)

7月2日(土)の娯楽映画研究所シアターは、明日、連載原稿で書く予定の築地川映画『如何なる星の下に』(1962年・東宝・豊田四郎)と十年ぶりぐらいの『ジュラシックパーク』(1993年・スティーブン・スピルバーグ)。二作に共通しているのは、未成熟でダメな大人がトラブルの原因となること。前者の森繁久彌さん、加東大介さん、植木等さん、池部良さん。どれもこれもダメ男ばかり。後者はリチャード・アッテンボロー演じるハモンド氏の子供もっぽさが災厄を招く。流石に恐竜たちのシーンは100インチスクリーンに投影すると惚れ惚れする。もちろん前者の佃の渡し、三吉橋、備前橋、聖路加病院などのロケにも惚れ惚れ。

7月3日(日)『女が階段を上る時』(1960年1月15日・成瀬巳喜男)・『ロストワールド ジュラシックパーク』(1997年・スティーブン・スピルバーグ)

7月3日(日)の娯楽映画研究所シアターは、東宝映画における「水商売」シークエンスの集大成ともいうべき『女が階段を上る時』(1960年1月15日・成瀬巳喜男)

いろんな意味で完璧な”夜の女性”映画。高峰秀子さんのバーのマダムの芯が強そうでいて、流されてしまう悲しさ。出てくる男たちの”ダメ男”っぷりは、いつみても共感してしまう。良い男もそうでない男も、結局は女性からの色眼鏡次第。菊島隆三製作、脚本は、かなりの授業料の成果。そういう意味では、小林旭「昔の名前で出ています」を作詞した星野哲郎さん同様のクリエイティブかも。

団令子さん、横山道代さん、北川町子さん、中北千枝子さん、若林映子さん、柳川慶子さんが演じるホステスたちのリアルと東宝映画らしい絵空事感の塩梅。バーのマダム役では日本一の淡路恵子さんの悲しい虚飾の世界。
なんといってもダメ男の両横綱、織田政雄さんの「お人好しゆえの無力な兄」と、加東大介さんの「好人物のようでとんでもない大嘘つき」に尽きる。特に加東大介さんのくだりは、何度見てもおかしくて切ない。

東京風景映画としても、銀座はほとんどが東宝オープンセットだが、築地川、三吉橋、佃の渡し、おばけ煙突などがたまらない。ラストの東京駅で、大阪へ転勤する森雅之さん一家を見送るシーンの高峰秀子さんと東郷晴子さんの芝居。ここですよ、ここが素晴らしい。それまで、森雅之さんの前で揺れ動いていたヒロインが、キッチリ、パーフェクトな”夜の女性”として、その妻に挨拶する。

7月3日(日)の娯楽映画研究所シアター第二部は『ロストワールド ジュラシックパーク』(1997年・スティーブン・スピルバーグ)を久しぶりにスクリーン投影。やはりビスタ画角を100インチのスクリーンいっぱいで観ると問答無用の迫力がありますね。これはイマジカの試写室で試写を観たときに、淀川長治先生が「キングコングやねぇ」とニコニコ囁いてくださった、その一言に尽きます。

猛獣狩り映画の醍醐味、秘境探検もののスリル。そして大怪獣映画のスペクタクル。ドラマはさておいてのジュラシック・パークというアトラクションを体感する楽しさ。ラスト、ティラノサウルスのサンディエゴ上陸は、スピルバーグ版「ゴジラ」の趣きあり。懐かしのブロックバスタービデオのウィンドウの前に追い詰められて、パクリと食われる脚本家のデヴィッド・コープの嬉しそうな顔!

観たそばから忘れるから、何度見ても驚きと興奮がある。やっぱり恐竜が出てきて、暴れるだけで無条件幸福(笑)

「第11回 戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」
8月11日(木・祝) 12時半開場 13時~映画『ゴジラ』上映
上映後、佐藤利明さんトークショー「俳優・宝田明を語る~ゴジラと歩んだ平和への道~」

チケット購入は下記いずれかでお買い求めください。
●スターツおおたかの森ホール1階インフォメーション窓口
●カンフェティWEBサイトhttp://confetti-web.com/heiwaeigasai/
●カンフェティ電話 0120-240-540


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。