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娯楽映画研究所ダイアリー 2022年8月15日(月)〜8月21日(日)

8月15日(月)本日更新!
今回は娯楽映画時層探検の楽しみを「銀座15番街」の拙連載と個人的に連動して語ります。

娯楽映画の昭和『佃の渡し』があった頃【佐藤利明の娯楽映画研究所】

8月15日(月)『夜の流れ』(1960年・東宝・成瀬巳喜男・川島雄三)

9月に入ってすぐ、2本のラジオ番組(いずれも東京)へのゲスト出演が決まりました。いずれも何度か出演している番組なので、楽しみです。詳細決まり次第、お知らせいたします。

今宵の娯楽映画研究所シアターは、成瀬巳喜男特集『夜の流れ』(1960年・東宝・成瀬巳喜男・川島雄三)。井手俊郎さんと松山善三さんによりオリジナルシナリオだが、成瀬監督が『流れる』(1956年)で描いた花柳界の母(山田五十鈴)と娘(高峰秀子)の確執と融和をリフレイン。前作は時代の波に飲まれていく切ない物語だったが、今作では娘(司葉子)のドライさ、母娘で一人の男(三橋達也)を取り合うというプロットとなり、カラーワイド作品らしく「華やかさ」「オールスター感」が増している。

川島監督らしさと成瀬監督らしさが同居する「隠し芸大会」的な味わいもある。とにかく華やか、司葉子さん、山田五十鈴さん、宝田明さん、三橋達也さん、白川由美さん、水谷良重さん、草笛光子さん、星由里子さんと東宝オールスター! 様々なエピソードが重層的に描かれるが、司葉子さんに伺った話では、若い芸妓たちのシークエンスを成瀬巳喜男監督、山田五十鈴さんを中心とするベテランたちのシークエンスを川島雄三監督が撮ったとのこと。星百合子さんもそう仰っていた。ロケ地マニアとしては、三橋達也さんが入院する「築地外科病院」が築地川の三吉橋のたもと、中央区役所の斜め前にあることを確認できたこと。この作品については、改めてレビューを書く予定です。

8月16日(火)『人間狩り』(1962年・日活・松尾昭典)

この1ヶ月、全集中で取材・構成・執筆を続けている「加山雄三ラストショー」コンサートパンフ。文字量、情報量も多く、かなり充実の内容になったかと。あと一息。今年は、時を超えて、想い出深き、永遠の夏となりそうです。盟友・鈴木啓之さんと27年前の「若大将グラフィティ」(角川書店)を上梓したときの「熱」で取り組んでいます。コンサート会場、ライブビューイングの映画館でも発売予定です。ご参加の方は、ぜひ、お求めください。

念願の初DVD化『人間狩り』(1962年・松尾昭典)をスクリーン投影。新宿→渋谷→青砥団地→西熱海ホテル→赤羽→町屋→京成町屋駅。日活刑事映画の決算!36時間に迫った時効。果たして犯人は何処に? やー、これは映画時層探検のホームラン映画です! クライマックスの町屋駅のサスペンス。京成電車の描写など、のちの「特捜最前線」(東映・ANB)の遙かなるルーツとしても楽しめる。傑作!

8月17日(水)『ブライアン・ウィルソン 約束の旅路』(2022年・ユニバーサル・ブレント・ウィルソン)・『国際秘密警察 指令第8号』(1963年・東宝・杉江敏男)

『ブライアン・ウィルソン 約束の旅路』(2022年・ユニバーサル・ブレント・ウィルソン)。感動的なドキュメンタリー。天才音楽家の心の闇と、音楽の光。苦労、苦難の日々から生まれた素晴らしい音楽。「ペットサウンズ」、30年越しの「スマイル」の完成。弟のデニス、カールへの想い。そして精力的にステージに立ち、アルバム作りを続ける現在!最高!

ブライアンが心を許した元ローリング・ストーン誌の編集者ジェイソン・ファインと、西海岸のゆかりの地を、ドライブしながらの対話。つらい想い出に涙をし、自分の音楽の創作の秘密を語る。楽しいこと、悲しいこと、すべてに向き合う「音楽旅」

ブルース・スプリングスティーン、エルトン・ジョンのブライアンへの愛、天才のサウンドへの称賛のことばに、うんうんとうなづきながら、至福の95分でした。

ブライアンは、ビートルズの「ラバーソウル」を超えることができるか?と、心から湧いてくる音楽を苦悶しながらカタチにしてきました。その答えは、ぼくたちが知っています。

ラジオの副読本としてUPした記事が、ぼくのnoteでの歴代最高既読数になりました!驚いてます。

今宵の娯楽映画研究所シアターは、記念すべき第1作『国際秘密警察 指令第8号』(1963年・東宝・杉江敏男)。国際秘密警察のエージェント・北見次郎(三橋達也)が、南ベトナム・サイゴンでの政府要人(ヘンリー大川)暗殺に端を発する国際産業スパイ事件に挑む。第一作はシリアスな冒険活劇という作り方で北見次郎のキャラクターもクールなエージェント。のちのナンパなプレイボーイ・スパイというよりは非情な秘密諜報員という感じ。失踪するサイゴンの日本商社員に夏木陽介さん、その同僚で事件の調査を上司から命じられる熱血サラリーマンに佐藤允さん。敵の女スパイに水野久美さん。東宝映画の前身、P.C.L.第1作『ほろよひ人生』(1933年・木村荘十二)の主演、大川平八郎=ヘンリー・大川さんが冒頭で殺される。東宝映画30年の歴史が体感できる。本作ではまだ、東京→名古屋間は「特急こだま」で移動。食堂車のシーンに、当時のメニューの豪華さを感じる。

8月18日(木)『国際秘密警察 虎の牙』(1964年・東宝・福田純)

森英恵さんの訃報。2005年、川島雄三監督DVDのブックレットで、日活映画の衣裳を手がけていた頃のお話をロングインタビューさせて頂きました。川島監督の話、小津安二郎監督の思い出をたくさん伺いました。ご冥福をお祈りします。森英恵さんに日活時代の話を伺ったインタビュー原稿。改めて読み返してみると7000文字もありました。ノンクレジットで参加された作品の話もあり、改めて、映画史としても、貴重な証言をして頂いたと… どこかで、皆さんに読んで頂ける場があれば…

今宵の娯楽映画研究所シアターは、シリーズ第二作『国際秘密警察 虎の牙』(1964年・東宝・福田純)。若大将シリーズのように演出は、杉江敏男監督→福田純監督にシフト。今回は、架空のアラバンダ共和国から始まる。自称平和主義のアラバンダ共和国・産業次官・クリマ(中丸忠雄)が、ダム建設資材購入のために日本へ。セールスマンに化けた北見次郎(三橋達也)はクリマに取り入りボディガードとなる。クリマの通訳でアラバンダ在住の明石梨江(白川由美)も来日、しかし父は失踪していた。その行方を探すうちにクリマの陰謀が明らかになる。福田純監督らしくキレの良いアクション、テンポの良い展開。本作で「国際秘密警察シリーズ」の方向性が固まった。脚本は安藤日出夫さん。

8月19日(金)第7回両国アートフェスティバル シンポジウム

8月20日(土)BSP「 たけしのこれがホントのニッポン芸能史 」・『国際秘密警察 火薬の樽』(1964年・東宝・坪島孝)

この夏、娯楽映画研究所開設以来の目まぐるしさ。植木等さん、クレイジーキャッツ、加山雄三さん、石原裕次郎さん、宝田明さん、ゴジラ、エルヴィス…子供の頃から憧れてきた方々・ジャンルの仕事を続けることが出来る喜び。講演、ラジオ、テレビで語り、思いを伝えることができ、やっぱり幸せです。

1995年、仲間たちと執筆した「若大将グラフィティ」(角川書店)カバーを外すと… なんと若大将の四面写真!
この夏、27年の時を超えて、鈴木啓之さんと、久しぶりにコンビを組んで、「加山雄三ラストショー」パンフレットの仕事をしています。

表1と表4
カバーを外すと…
加山さんの四面写真が!

1961年8月20日「スーダラ節」(植木等)が発売されました。ここからクレイジーキャッツの快進撃にさらに拍車がかかります。明日、2022年8月21日(日)20時から21時。NHKラジオ第2「クレイジーキャッツの音楽史」第3回「スーダラ節の衝撃」オンエアです。

『国際秘密警察 火薬の樽』(1964年・東宝・坪島孝)。巨悪が「ワールド電器」という関連企業を隠れ蓑にしている秘密結社「世界統一同盟」。元ナチスの残党が日本の財界人と企業を操って世界統一をはかる。そのネーミングがタイムリーすぎてクラクラ。「世界統一」「ワールド・・・」関沢新一脚本。

世界統一同盟の隠れ蓑企業・ワールド電器!

明日8月21日は、は我らがイデ隊員、二瓶正也さんのご命日。ご本人から「ビデオ持ってない?」と想い出深い作品としてお話を伺った、坪島孝監督「国際秘密警察 火薬の樽」をスクリーン投影。坪島孝好みのコメディタッチで、二瓶さんがコメディリリーフとして映画をさらってしまう!最高におかしい!

星由里子さん、二瓶正也さん

NHK BSプレミアム「たけしのこれがホントのニッポン芸能史」オンエアを、カミさんの叔母さんの家で見てきました。番組のメインストリームは、日本のアクションの始原は日活にあり『勝利者』(1957年・井上梅次)から日活アクションの時代が到来するという話から始まりました。番組ディレクターから相談があった時に、明快に「裕次郎さんが活劇をアクションにした」という話をしました。

そこから雑談で色々話をしたことが、前半の骨子になっていて、しかもNHKならではで、渡辺武信先生、舛田利雄監督、宍戸錠さんの座談会のアーカイブ映像から、武信先生の「ことば」でそのことを語ってもらう。イイですね。

僕は、カメラの前で2時間ほど喋りましたが、そのなかで「なぜ、監督コントで、よーい、ハイ!ではなく、ヨーイ、アクション!というのか?」というディレクターの素朴な疑問に、ジャッキーこと阿部豊監督の話をしました。

大正時代、ハリウッドにわたり、俳優となり映画監督修行をした阿部豊監督が、日本に帰国して監督をしたときに「アクション、キャメラ!」でクランクした話、芦川いづみさん、小林旭さんから伺った阿部豊監督のエピソードもお話をしました。

そのなかで、ディレクターがピックアップしたのが、オンエアされたパートとなります。その確証はありますか? と問われて、すぐに引っ張り出して来たのが、キネ旬「日本映画監督全集」(1977年版)の阿部豊監督のパート。そうかテレビでは、僕の発言の裏を取らないといけないということで、キネ旬の監督全集を書棚から出したという次第。

というわけで、昨夜の番組では、監督コントの始原は、阿部ジャッキーにあり!ということが、検証されたわけで、娯楽映画研究家の役割は、果たすことができたのではと・・・

番組を見ているあいだ、カミさんは、しっかり星よみをしていました^_^
その視点、気づきを、あらためて読むと、なるほど、なるほど、であります。

カミさんの《夏やすみの自由研究「アクションと星よみ」》です。

「明日、テレビのクルーが来て撮影するから」とポソッという主人… 概要をつかめぬまま、お月さまの運行を見たら、6/29は、かに座新月でしたので、家族や仲間と共に、新しいサイクルの始まりを感じました。 そして、その番組は、今日(8/20)...

Posted by Sato Sei on Saturday, August 20, 2022

8月21日(日)『国際秘密警察 鍵の鍵』(1965年・東宝・谷口千吉)

聴き逃しでも配信中です。NHKラジオ第2「クレイジーキャッツの音楽史」は、この4月から6月にかけて、NHK文化センター青山での講座を、基本そのまま放送しております。

受講生の皆さんは、テキスト、画像、映像をご覧いただきながらの講座でしたが、曲もトークも、内容は当日のワンオペ講座のまま。

なのでライブ感あふれる「生放送」のような空気になりました。講座を構成しているときにイメージしたのが、大瀧詠一さんの「ニッポン・ポップス伝」です。

大阪在住の友人で作家の戸田学さんは、ラジオを聴いていて、すぐにおわかりになったと、オンタイムでメッセージをくださり、我が意を得たりでした。

これまでは「総論」でしたが、今夜は「スーダラ節」にフォーカスをした「各論」となります。8月21日(日)夜8時から、NHKラジオ第二「カルチャーラジオ クレイジーキャッツの音楽史(3)スーダラ節の衝撃」。宜しければお聴きください。

NHK文化センターから「クレイジーキャッツの音楽史」依頼があり、しかも「カルチャーラジオ」での放送が決まっていると聞いてイメージしたのは大瀧詠一さんの「日本ポップス伝」です。ラジオを意識して選曲、喋りのみで史実を伝えるか?自分へのトライアルでもありました。でも楽しいし(笑)「クレイジーキャッツの音楽史」こちらのサイトから聴き逃しで10月まで、聴くことができます。大盤振る舞いです!

本日の「クレイジーキャッツの音楽史」第3回「スーダラ節の衝撃」テキストを早速UPしました。聴き逃しのお伴に! もちろん「サポート」も大歓迎です!

今宵の娯楽映画研究所シアターは、谷口千吉監督『国際秘密警察 鍵の鍵』(1965年)。最高!全・黒部進さんファン必見! 電送人間・中丸忠雄さんとの悪役合戦が素晴らしい!ボンドガールのアキとキッシーのお色気合戦。死神博士・天本英世さんのコブラ・フェチ!ほぼセット展開なんだけど、和製外国映画としてかなり楽しい!次はウディ・アレン版を観る!黒部進さんのフイルムキャリアのなかでも、ここまでフィーチャーされた作品はそうそうないし、悪役の造型が本当に素晴らしい。


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。