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ブロードウェイシネマ「パリのアメリカ人」

 松竹ブロードウェイシネマ「パリのアメリカ人」はミュージカル映画の金字塔『巴里のアメリカ人』(1951年・MGM・ヴィンセント・ミネリ)をベースにした2017年のイギリス上演版。

本日の試写は東銀座の松竹本社・試写室、つまり東劇ビルで観た。ジーン・ケリーとレスリー・キャロンの『巴里のアメリカ人』が日本で最初にロードショー公開されたのが東劇だった。それゆえに感無量!



 ジーン・ケリーが演じたジェリー・マリガン(ロバート・フェアチャイルド)、オスカー・レヴァントが演じたアダム・ホックバーグ(ディヴィッド・シードン=ヤング)、ジョルジュ・ゲタリーが演じたアンリ・ボレール(ハイドゥン・オークリー)の三人と、レスリー・キャロンが演じたリズ・ダッサン(リャーン・コープ)、それぞれの1945年を深掘り。戦争の影と、戦後の開放。

 ガーシュインのソングブックミュージカルとしても最高の選曲!ジーン・ケリーへの限りないリスペクト!ラストの後ろ姿に痺れた!

 映画ではニナ・フォッシュが演じた、ジェリーのパトロン、マイロ・ダヴェンポート(ゾーイ・レニー)が素晴らしく、ジェリーとリズとの三角関係が、より味わい深くなっている。しかも映画では、アンリとジェリーとリズの関係をハラハラ眺めていたアダムも、リズに惚れて、四角関係、いやマイロを入れて五角関係となるのが面白い。

 特にアンリと両親が、第二次大戦中、レジスタンス活動をサポートしていて、使用人の娘だったリズがユダヤ人だったために、ナチスから守るために便宜を図っていたために、アンリとリズの関係が「そういうことなのか!」と深くなる。それゆえ、ジェリーの苦悩、リズの切なさが、ドラマを深くする。

 アラン・ジェイ・ラーナーが書いた映画のオリジナル・シナリオを踏襲しながらの2017年版の脚色により、ジーン・ケリー版のスノビズムがなりを潜めて、戦後の「パリに残ったアメリカ人兵士」「ナチスから解放されたフランス人」の関係がちゃんと描かれている。

 とにかくナンバーが充実。ご存知のガーシュイン・チューンが次々と登場。それだけでニヤニヤ、ワクワクする。「Shall We Dance?」「But Not for Me」「Liza」「For You, For Me, For Evermore」「They Can't Take That Away from Me」などのガーシュイン・チューンの配置も見事。オリジナル歌詞を変えずに、ドラマに合わせて。これがソングブックミュージカルの良さ!


【ナンバー・リスト】
Act I
Concerto in F – カンパニー 『巴里のアメリカ人』
"I Got Rhythm" – アンリ, アダム, ジェリー, カンパニー ”Girl Crazy”(1930)
Second Prelude – Lise, Female Ensemble
"I've Got Beginner's Luck" – ジェリー 『踊る騎士』(1937)
"The Man I Love" – リズ ”Lady Be Good”(1927)
"Liza" – ジェリー  "Show Girl "(1929)
"'S Wonderful" – アダム, アンリ, ジェリー, カンパニー
"Shall We Dance?" – マイロ  Funny Face (1927)
Second Rhapsody/Cuban Overture – カンパニー

Act II
Entr'acte – オーケストラ
"Fidgety Feet" –ジェリー, カンパニー "Fidgety Feet" (1926)
"Who Cares?" –マイロ, アダム, アンリ Of Thee I Sing(1931)
"For You, For Me, For Evermore" –リズ, アンリ, ジェリー, マイロ The Shocking Miss Pilgrim (1946),
"But Not for Me" – アダム, マイロ  ”Girl Crazy”(1930)
"I'll Build a Stairway to Paradise" – アンリ, アダム, カンパニー ” George White's Scandals”(1922)
An American in Paris – Company
"They Can't Take That Away from Me" – Adam, Jerry, Henri 『踊らん哉』(1937)
"Epilogue" – Orchestra

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