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『妖怪大戦争』(1968年・大映京都・黒田義之)「妖怪特撮映画祭」で上映

この夏、大映特撮映画の祭典「妖怪特撮映画祭」が開催される。特撮映画好きとしてはたまらないラインナップである。

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 そのなかでも目玉となるのが『大魔神三部作』と『妖怪三部作』4K修復版。先日、五反田のイマジカ第一試写室で『妖怪大戦争』4K修復版の試写を見せていただいた。昭和43(1968)年、水木しげる先生の「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメ化をきっかけに空前の妖怪ブームが到来。その拍車をかけたのが春休みの『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』と二本立て公開された『妖怪百物語』(安田公義)でした。まだ幼い子供だった僕は、銀座大映でこの二本立てを観て、その恐ろしさと面白さに夢中になった。

 それまでの怪獣ブームから、僕たちの興味は妖怪ブームへとシフト。昭和43年10月からは、東映制作のドラマ「妖怪大作戦河童の三平」、円谷プロの「怪奇大作戦」がスタート(これは妖怪じゃないけど怪奇というカテゴリーで)。そうしたなか12月14日に大映系で公開されたのが、満を辞しての第二作『妖怪大戦争』だった。同時上映は、大映東京製作による梅図かずお先生原作『蛇娘と白髪魔』(湯浅憲明)。

 これも銀座大映で観たのだが、怪獣メインではなく、妖怪メインの興業で、幼稚園児の僕は、胸が高鳴りました。なにしろその頃、幼稚園で妖怪ごっこをするときは、僕は「油すまし」の役(笑)

 そういう思い入れがある作品なので、これまでもオールナイト上映やVHS、LD、DVD(海外版も含めて)と繰り返し観てきました。そして2021年、KADOKAWAさんによる4K修復版を観て、本当に驚き、興奮、感動の連続。まさに眼福! この夏、劇場で体感することが出来るのが、なによりも嬉しい!

 冒頭の古代バビロニアの盗掘シーン。砂塵の埃までがはっきりと確認出来るし、何よりも復活したダイモンの血走った眼(まなこ)の恐ろしいこと。ダイモンの中には「大魔神」を演じた橋本力さんが入っているので、着ぐるみの造形の素晴らしさもさることながら、その「眼力」に圧倒されっぱなし。

 『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972年で我らがブルース・リーに蹴飛ばされた(飛んだのはスタントのジャッキー・チェンだけど)日本を代表するダークサイドの王! 4K版で終始感動的なのは、この橋本力さんの「眼力」と、ダイモンに乗り移られる伊豆守を演じた、最高の悪役俳優・神田隆さんの「悪のコラボ」!

 吸血シーンの毒々しい赤。屋敷の庭の池から出現する河童の造形の良さ! そして(模擬)水中シーンでもスモークの向こうに「何が映っているか」がはっきりと認識できるのがすごい。

 吸血妖怪ダイモンの日本侵略に、荒れ寺に住んでいた日本妖怪たちが団結して、立ち向かうというシンプルな構成は、当時の幼児にも十分わかる(ここ大事なところ)内容だった。油すまし、ぬっぺっぽう、からかさ小僧、二面女、ろくろ首たちのコミュニティに、頼もしき青坊主!(このマスクは既に『釈迦』1962年の魍魎として東洋!)そのお腹でなんでも見通せてしまう雲外鏡のおじさん! それぞれが出身地のお国訛りでローカライズされているのが、子供心に楽しかった。

 終始ナイトシーンの映画なので、4K修復版の底力を感じる箇所が随所に、荒れ寺のシーンや、妖怪決戦の特撮シーンで、誰がどこにいて、何をやっているかがハッキリとわかるのがすごい。大映京都育ちの今井ひろしさんのキャメラ、特撮に目の届く黒田義之監督の緩急自在の演出は、笑いと怖さの塩梅が絶妙で、やっぱり面白い。

 クライマックス、日本妖怪が結集しての百鬼夜行の合成は、まるで絵巻物を見るような味わいで、一体ずつのディティールもよくわかる。スクリーンを見つめながら、妖怪の名前を反芻してしまった(笑)






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