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『東海道お化け道中』(1969年3月21日・大映京都)デジタル4K修復版 「妖怪特撮映画祭」で上映

五反田イマジカ第1試写室で、この夏、「妖怪特撮映画祭」で上映、安田公義監督、特撮・黒田義之監督『東海道お化け道中』(1969年3月21日・大映京都)デジタル4K修復版初号試写を拝見した。

いやぁ、すごい! 旧作のリマスターの大事さを改めて認識。この作品、昭和44年の春休み、『ガメラ対大悪獣ギロン』(大映東京・湯浅憲明)と二本立てで公開された。

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このとき、ぼくは幼稚園の年中、年明けから小児腎臓病で絶対安静の日々。病院から帰ってきていたが、ずっと自宅リビングのソファーで日がな一日テレビばかり観ていた。もちろん映画館に行くことなど無理、なので『東海道お化け道中』『ガメラ対大悪獣ギロン』の封切りは、兄と父だけ。お土産の劇場パンフ、というか、漫画の冊子やガムなどがビニール袋に入ったセットを、兄たちが帰宅後に、夜遅くまで見入っていた。

ようやく『東海道お化け道中』をスクリーンで観ることが出来たのは、その年の夏休み。病気も快癒して、自宅から近い、足立区の「梅田大映」で、なぜか『赤胴鈴之助 一本足の怪人』と一緒に「夏休み子供大会」みたいな数日間の興行だった。

実は、スクリーンで観るのはその時以来。テレビ放送、ビデオテープ、レーザーディスク、DVDと繰り返し観てきたが、この4K修復版で、その印象が大きく変わった。

「大魔神」三部作同様、「妖怪」三部作も、一作毎に、作品のテイストを変えている。「妖怪百物語」は長屋もの、「妖怪大戦争」は妖怪バトル、この「東海道お化け道中」は股旅やくざ時代劇となっている。

それゆえ、子供にはいささか地味というか、妖怪が出てくるまでの時間が長く「妖怪大戦争」の後だけに…だったが、大映京都作品を観続けてくると、あまりの丁寧な作りに驚嘆した!

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東海道を舞台に、やくざ同士の抗争に巻き込まれて、祖父・左卜全さんを殺され、自身もやくざに生命を狙われる7歳の少女お美代(古城門昌美)。彼女が、東海道由井宿にいる父親を訪ねる道中ものとして、物語が展開していく。

古城門昌美ちゃんが、健気で、なかなか芝居もうまく、つい感情移入してしまう。心許ない少女の道中をサポートする、股旅やくざの銭座の百太郎(本郷功次郎)が、本作のヒーロー。渡世人に身をやつしても、不正義は許さない。長谷川伸作の股旅もの、市川雷蔵さんの股旅ヒーローの系譜にある。

さらにコルゲンコーワのCMで「おめえ、へそねぇじゃねえか」のフレーズで一世を風靡し、「丸出だめ夫」で子供達の人気者だった保積ぺぺさん! 彼が演じる馬子・新太は、子供なんだけど、大人顔負けでガッチリお美代を助ける。その頼もしさ!これが年少観客の共感を誘ったことだろう。

やくざたちのキャスティングも、お馴染みの面々。火車の勘蔵・山路義人さん、その子分・五郎吉・上野山功一さん、用心棒の先生・俵権九郎・五味龍太郎さん、そして大映時代劇といえば!の丑松・伊達三郎(ちなみにクレジットでは伊達岳志名義)さん! 憎々しさのオンパレード^_^

そしてキーマンが、百太郎を裏切る弟分・賽吉・戸浦六宏さん。サイコロ賭博好きが高じて、賽の目の「賽吉」と名乗っているが… 後半の戸浦六宏さんの芝居が素晴らしい!子供心にもグッときた。

妖怪の見せ場も、いろいろ仕掛けられていて、じわじわと「火車組」の悪い奴をこらしめていく。中盤の八つ墓山や、クライマックスの百鬼夜行は、4K化の恩恵で、あの妖怪、この妖怪の姿や、怖さ、ディティールが眼前に拡がる。まさに眼福、至福!

クライマックスの賽の目博打のシーンは、1960年代末の「女賭博師」ブームがここに極まり! 世界映画史上、最年少の女賭博師誕生! 子役相手に、大真面目で悪役芝居に徹する山路義人さんと、伊達三郎さん! すごいなぁ。

仕掛けの映画だけにセット撮影主体だが、細かいディティールや当時の空気感や、役者たちの息遣いまで、デジタル4K修復で、手に取るような密度が味わえる。1969年、映画界に斜陽に歯止めがかからなくなってきている頃だが、大映京都の時代劇スタッフが会得して来たノウハウが、細部に宿っている。

妖怪たちが素晴らしい! 百々爺、蛇骨婆、ぬらりひょん、土転び、のっぺらぼう、泥田坊、妖怪水車、火吹き婆、ひょうすべ、白粉婆、青坊主、一角大王、毛女郎、狂骨、烏天狗、一つ目小僧などなど、一体一体が、4K修復で本当にはっきり味わうことができる!

「妖怪百物語」ではルーキー新一さん、「妖怪大戦争」では若井はんじ・けんじさんと、人気コメディアンがゲスト出演してきたが、今回は島田洋介・今喜多代さんコンビがコメディリリーフとして中盤に登場。たっぷりドラマに絡んでくれる。

この夏、「妖怪特撮映画祭」でスクリーン上映。サウンドもグッと良くなっていて、渡辺宙明先生の音楽も、クリアなサウンド堪能できる!

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