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『無責任清水港』(1966年1月3日・東宝・坪島孝)

深夜の娯楽映画研究所シアター。東宝クレージー映画全作視聴。

12 『無責任清水港』(1966年1月3日・東宝・坪島孝

4月17日(日曜日)は、坪島孝監督としては2作目のクレージー映画にして、初の時代劇『無責任清水港』(1966年1月3日)。前年の正月映画『花のお江戸の無責任』(1964年・山本嘉次郎)に続いての大作。お馴染み次郎長一家の物語だが、ベテランの小国英雄脚本は、あくまでも「植木等=フリーランスの無責任男」のキャラを守っているので、次郎長一家という組織と、追分三五郎(植木等)の距離感を弁えている。それがいい。

 だから追分三五郎はあくまでも、次郎長(ハナ肇)には草鞋を脱がずに、牢屋で意気投合した森の石松(谷啓)の食客(いそうろう)に徹している。アンチ組織、アンチ義理人情のドライな一匹狼のやくざなのである。心優しき、坪島監督の演出は明るく、ホンワカしているので、パワフルな無責任男には見えないけど。三五郎は無銭飲食を重ね、イカサマバクチをして荒稼ぎをする。

 ただし、そのやり方が鮮やかなので「処世術」であり「ポリシー」であるので、いやらしくない。植木さんのキャラは、徹頭徹尾明るく元気で、テレビのコントやクレイジー舞台公演でのノリ。古澤作品の常軌を逸したキャラを基準にすると物足りないと感じるけど、かなり面白い。

 クレージー映画を順番に見てくると、谷啓さんのキャラが本作から、本格的に立ってきている。時代劇の前作『花のお江戸の無責任』の白井権八もかなりウエイトがあったが、本作では、完全に植木等さんと並列。

 三五郎と石松コンビがメインなので、大政(平田昭彦)、大瀬の半五郎(土屋嘉男)などの豪華キャストの次郎長一家が少しもったいないけど少年時代にエノケン映画が大好きだったという坪島孝監督ならではのテイストは、昭和40年代のクレージー映画の「もう一つの柱」となっていくのも納得。

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