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太陽にほえろ! 1973・第70話「さよならはいわないで」

この原稿は、事件の核心、物語の展開について詳述しております。ネタバレ部分もありますのでご注意ください。

第70話「さよならはいわないで」(1973. 11.16 脚本・柏倉敏之 監督・児玉進)

永井久美(青木英美)
柚木麻江(有吉ひとみ)
美容師(直木晶子)
拳銃を持った男(小原秀明)
北口初代(川口節子)
安田泰三
ひろちゃん(松田剣・子役)
影山(川辺久造)

 予告篇の小林恭治さんのナレーション。
「一発の銃声が街に響く。刑事たちは散っていく。彼らの日々は危険に満ちている。だが、荒々しくそれに立ち向かってゆく。そんな彼らも傷つき、項垂れることがある。そんな時、優しい恋人の眼差しが、彼らに安らぎを与えてくれた。しかし、犯罪の魔の手は彼らの恋人も巻き添いにしていくのだった。次回「さよならはいわないで」にご期待ください」

 殿下の恋人・柚木麻江(有吉ひとみ)が初登場。幼稚園の先生で殿下にはお似合いの彼女だったが、当時、殿下ファンからの嫉妬の声があがり、第79話、第87話に登場するが、悲しい結末を迎える事になる。第34話「想い出だけが残った」で描かれたボスの大学時代の恋人・加代子(江波杏子)との悲恋と、ワーカホリックの殿下に対する麻江の複雑な気持ちがリンクする。それを見守るボス。決して自分のように悲しい思いはさせたくないと・・・

 麻江を演じた有吉ひとみさんは、本名の鈴木えみ子として、竜雷太さん主演「でっかい青春」第30話「クビになった雷先生」に不良女学生の役で出演。「太陽にほえろ!」では、第521話「ボギー刑事登場!」からボギーの姉・春日部正子役でセミレギュラーとして再登場することになる。

 脚本の柏倉敏之さんは、これが「太陽にほえろ!」初参加。民放テレビ草創期からのベテランで「特別機動捜査隊」(1963年)や虫プロアニメ「W3(ワンダースリー)」(1965年)、「快傑ライオン丸」(1972〜1973年)などを手がけてきた。島刑事と恋人・麻江の三部作(第70話・79話・87話)は全て柏倉脚本によるもの。

 捜査第一係。久美が花束を持って入ってくる。殿下が花屋に注文した豪華な花束だった。みんなに冷やかされる殿下。照れながら「彼女の誕生日なんですよ、今日」と殿下満面の笑み。「とっても素敵じゃない島さんらしくて」と久美。殿下が彼女に会いに行こうとすると女の死体が発見されたと通報。しかしボスは「早く彼女のところへ行ってやれよ」と優しくいうが、殿下は柚木麻江(有吉ひとみ)に「仕事だから」と断りの電話を入れる。少し残念そうな麻江。実はご馳走を用意していたのだ。

 死体発見現場。女性は何者かに手で首を絞められていた。死後15時間が経過していた。犯行時刻は前夜の夜10時前、長さんが被害者のものと思われるハンドバッグから「海南商事株式会社 人事課 北口初代」の名刺を見つける。会社は豊島区、自宅は新宿区と判明する。年齢は30歳前後、所持金には手をつけられていないので顔見知りの犯行と思われる。

 殿下は海南商事をへ向かう。北口初代の死に驚く上司・影山(川辺久造)。彼女は独身、アパートで一人暮らし。管理人によると初代は春に結婚の予定だったが、相手は誰かわからない。預金通帳によれば、2ヶ月連続で100万円ずつ下ろしている。部屋からは初代を写した8ミリフィルムが発見される。北口初代(川口節子)は撮影者に対して終始「甘えるような」笑顔で写っていることから、撮影者は「男」であると山さんが推理する。解剖の結果、被害者は妊娠5ヶ月だった。「酷いことしやがる」と怒るゴリさん。解剖に立ち会った殿下が悔しそうにその状況を話す。

 被害者を演じた川口節子さんは、東宝のバイプレイヤーで『隠し砦の三悪人』(1958年)あたりから東宝娯楽映画に出演。『三大怪獣地球最大の決戦』(1964年)のサルノ王女の侍女役などで特撮映画ファンにもお馴染み。「太陽にほえろ!」では第9話「鬼刑事の子守歌」で殿下に口説かれるホステス役で出演、以後、第709話「タイムリミット・午前6時」(1986年)まで断続的に出演している。

「結婚をエサに金を巻き上げたものの、子供ができて邪魔ができた。そういうことですね」とゴリさん。
「そういうことだ。おそらくな」とやるせない山さん。

 海南商事。昼休み、屋上で初代の同僚に聞き込みをする山さん、ジーパン。初代のアパートで聞き込みをする殿下、長さん。渋谷駅、東急東横店の前の横断歩道を歩くゴリさん。

 殺害現場の川の水門近く。「長さん。捜査が行き詰まったら現場に戻れ、と教えてくれたのは長さんじゃないですか」と殿下。しかし長さん「さんざん探したのに、手がかりなしだからなぁ」。殿下は悔しそうに「こういう間にも犯人は笑ってるんですよ」。そんな殿下は、現場で怪しい男を発見。殿下の顔を見ると男は走り去っていく。殿下は男の後を追う。水門のタービン室に入った殿下は、背後から鉄パイプで男に殴打され意識を失う。

 柚木麻江が部屋で食事の支度をしている。テレビのニュースでは、初代の事件の捜査に進展がないと告げている。やがて同事件の捜査中、午前11時頃「七曲署の島刑事が行方不明に」とアナウンサー。麻江、ハッとなる。「島刑事は犯人を追跡中、何らかの危害が加えられた恐れもあり、安否が気遣われています」。蒼白となる麻江。

 一係ではボスが「グズグズしていると殿下の生命が危なくなるんだぞ。誰か姿を見かけたものはいないのか?」と電話口で苛立っている。そこへ「あの、まだ見つからないんでしょうか?」と麻江がたずねてくる。ボスは「大丈夫。滅多にヘマをやるような男じゃありませんよ。島を信じてやってください」と優しく話しかける。殿下の机の上には、萎れかけた花束。

 殺害現場、そして殿下が行方不明になった水門の近く。山さんとジーパンがやってくる。そこには花束を手に立ち尽くしている、海南商事の上司・影山(川辺久造)がいた。「花束でも、と思いましてね。私の部下ですから」。手を合わせる影山。しかし、なぜこの場所を知っている? 影山は「近所から聞いてきました」と山さんの質問に答える。「このままじゃ、あまりにも北口君がかわいそうです。早く(犯人を)捕まえてやってください」と影山。少し怪しい。

 影山を演じた川辺久造さんは、文学座のベテランで、僕らの世代では「ザ・ガードマン」(1965〜1971年)や、「キイハンター」(1968〜1973年)、「水戸黄門」(1969〜2005年)などでの悪役としてお馴染み。なので出てくるだけで「この人、怪しい!」と思ってしまう(笑)

  ここからアクションシーンとなる。 街中を、赤いジャンパーの男(小原秀明)が逃げている。男を追うゴリさんと長さん。東急ストアに追い詰められた男は発砲する。発砲するチンピラを演じた小原秀明さんは、東宝制作の「泣くな青春」(1972〜1973年)生徒・島三郎役や、「われら!青春」(1974年)の生徒・滝井康之役など、東宝テレビ部のドラマでお馴染み。倉本聰脚本「前略おふくろ様」(1975〜1977年)では板前・正を演じることになる。特撮ファン的にはやはり東宝制作の「流星人間ゾーン」(1973年)の天文マニア・城タケル役を演じていたイメージが強い。

 「拳銃をどこで手に入れた」「うるせえ」「オモチャじゃないんだ。こっちへ・・・」さらに男は発砲する。バックヤードに追い詰められるも、弾が切れてしまう。モールには1970年に出店が始まったケンタッキー・フライドチキンがある。山さんとジーパンが到着。男が発砲している拳銃は殿下のものらしいとジーパン。山さんは叫ぶ。「ゴリさん、撃たせるなよ。一人でも傷つけたら、エライことだ!」。ゴリさんは犯人を説得する。「人を殺したらどうなるか若手いるのか? バカな真似はよせ」

  ジーパン、平屋のスーパーの屋根の上から犯人側にまわって、上からジャンプ。ゴリさんたちがそのすきに取り押さえる。ゴリさん「拳銃をどこで手に入れた?」「俺が見つけた時には、もう倒れていたんだよ」「どこなんだそれは?」と山さん。その現場である水門のタービン室に急行するジーパンと山さん。木箱の中から、頭から血を流して意識不明の殿下が見つかった。「島さん!」

  夜、警察病院にタクシーで駆けつける麻江。病室では山さんが看病をしていた。「今、眠っています」。殿下は意識を失っただけで、脳に異常はないと山さん。少しホッとする麻江。「ありがとうございます」。殿下がうわごとを言う。「すいませんボス。こら、待て!」たまらず殿下にすがりつく麻江。病気の妻を抱える山さんは、その気持ちが痛いほどわかる。そっと部屋を出ていく。

  一係。夜食のそばをうまそうに啜るボス、ジーパン、ゴリさん、長さん。そこへ山さんが「殿下は彼女に任してきました」と帰ってくる。拳銃を奪った男は近所のチンピラで、倒れている殿下を見て、魔が差したらしいと長さん。ゴリさん、山さんの分のそばを渡す。この辺り、細かいね。殿下を襲ったのは別な犯人。その顔を殿下が見ていてくれたら・・・とゴリさん、山さん。ジーパンは「でも無事だっただけよかったですよ」。捜査は振り出しに戻ったようだ。

 殿下の病室。麻江が氷嚢を替えて部屋に戻ってくると、殿下の目が覚めている。嬉しそうな麻江。「君か、きてくれてたの? ありがとう」。「あの時・・・俺が見たものは・・・靴・・・そうだ!踵!踵に黄色いペンキみたいなものが・・・」しかしそれ以上は思い出せない。「しかし、犯人はどうしてあそこにいたんだろう?」「現場になんか手がかりあったんだろう。犯人はそれを恐れたんだ」。思わず立ち上がり、現場へ行こうとする殿下を、必死に止める麻江。「僕がやらなくっちゃダメなんだよ。そうでなきゃ、僕は刑事失格だ」。思い詰めている殿下。止める麻江を振り切って、出ていく。

 殺害現場で、必死に手がかりを探す殿下。そばに、緑色のベストを着た少年が座っている。「お兄ちゃん何しているの? ウサギのお目目見つけたら、僕に頂戴ね! 赤いガラス玉のことだよ。一つじゃ足りないんだもん!」その言葉にはっとなる殿下。「何?ガラス玉? 坊や、拾ったのか?」「うん!」

 一係。頭に包帯を巻いた殿下が慌てて入ってくる。「大人しく寝てろ、と言ったはずだ」「でも収穫がありました」子供が見つけた「赤い宝石のカフス」を差し出す。殿下のお手柄だ。しかしボスは、すぐに麻江さんのところに帰れという。躊躇する殿下に「すぐに行くんだ。女の気持ちがわからないような奴にはデカだって務まりゃしないぞ」。殿下を廊下に連れ出した山さん。「ボスはな、自分の昔の恋人のことを思い出してるんだよ。好きあっていながら、刑事という職業のためにボスは恋人と別れた。お前たちのように、同じようなケースにぶつかるとな、キリキリと痛むんだよ。その古傷がな」と、第34話「想い出だけが残った」で描かれたボスの大学時代の恋人・加代子(江波杏子)との悲恋の話をする。

 殿下は納得して麻江の元へ向かう。喫茶店、麻江との久しぶりのデート。「事件はもうすぐ解決するよ。そしたら誕生日のお祝い。やり直そう」「もう、いいの」。この事件が解決してもすぐに新しい事件が起こる。それが済んでも・・・と、俯いたままの麻江。視聴者にはかつての加代子とダブる。「だから大事なのよね。あなたのお仕事。私にもよくわかっているの。でも私ダメ・・・もう疲れたの・・・これ以上、夜も眠れないようなあなたを待つ生活・・・耐えられそうもないの・・・」殿下は返す言葉もない。「だから私、今日はお別れを言いに来たんです」

「だけど僕は刑事なんだ。刑事である以上、どうしたって、こういうことはあるんだ。一体、僕にどうしろって言うんだ?」
「・・・」
「僕は、刑事を辞める気はない。刑事を辞める気はないんだ!」
「さよなら・・・」

 喫茶店「ロータス」を出ていく麻江。放心状態で歩いている。クルマの中からそっと見ている男。なんと影山である。

 一係。憔悴した殿下が出勤してくる。ジーパンお茶を出して「どうでした?昨日」。殿下は「話し合ってきた。話せばわかるんだ。だから、もう心配しないでくれ」と嘘をつく。しかしボスには通用しない。「本当のことを言ってみろ」「もう、いいんです。別れました」「なんだって?」「今は捜査の方が大事なんです。そんなことどうだっていいじゃないですか」。その瞬間、ボスが厳しい顔で「殿下、こっち向け!」。殿下は、どうしても犯人を逮捕したい。それができなければ、刑事をやめろってことじゃないか。ボス、無言。

 そこへゴリさん入ってくる。赤いイヤリングから、被害者の指紋が発見された。加害者に首を絞められた時に落ちたものだろう。殿下は「宝石店当たってきます」と出ていく。追うゴリさん。殿下は、何かに取り憑かれたように捜査を続ける。

 一係。ジーパンがボスに「だけど相手の彼女だって、ひどいじゃ無いですか? 島さんのどこが悪いって言うんですか?」。久美には「わかるような気がするけどな。女としてはやっぱり」。ジーパン怒ったように「刑事だってな、何も好きで危険に飛び込んでるんじゃないんだよ」と声を荒げる。ボスは殿下が気の毒だからと、麻江を説得に行くと言って出ていく。ボスが「おいジーパン」と声をかけるが・・・「どいつもこいつも鉄砲玉みたいな奴ばかりだな」とボス。

 幼稚園。麻江は幼稚園の先生だったのだ。園庭でぼんやりしている麻江。園児・ひろちゃん(松田剣)が「麻江せんせい、おきゃくさまだよ」と呼びにくる。ジーパンである。「島さんがまた何か?」「いえ」と口ごもるジーパン。意を決して「島さんのことですけど、もう一度考え直してもらえないかな、と思って」「そのお話なら、私もう・・・」。ジーパンは、殿下に頼まれたわけではないこと、自分の判断できたことを不器用に話す。そこへさっきの園児・ひろちゃんが「ぼくの麻江せんせいとったら承知しないぞ」とジーパンを睨む(笑)「お前なんか、帰れ!」。

 ひろちゃんを演じた松田剣くんは、この2年後、浦山桐郎監督の東宝映画『青春の門』(1975年)で主人公・信介(田中健)の6歳の頃を演じている。「太陽にほえろ!」では第96回「ボスひとり行く」、第166回「噂」にも出演している。この頃、よくドラマに出ていた子役で、日本テレビの昼メロ「愛のサスペンス劇場 ガラスの絆」(1975年)では山本學さんと日色ともゑさんの夫婦の間に、人工授精で生まれた息子を演じていた。そのドナーが上田耕一さんで・・・という展開だった。

 美容室。殿下が、美容師(直木晶子)に赤いカフスを見せて「これはあなたのものですね」と小沢宝石店で「あなたに売ったと聞いてきた」と詰め寄る。知らないとシラを切る美容師に、あなたが買って、誰かにプレゼントしたのでは?と殿下。その荒っぽい追及を、頭を抱えて見ているゴリさん。「まだ誤魔化す気ですか!」と彼女の肩をぎゅっと掴む殿下。「刑事のくせに暴力を振るう気?」。見かねたゴリさん「すいません。お手間取らせませんから、ちょっと向こうで話しましょう」と優しく声をかける。いつもとは立場が逆転している。

 お帰りの時間。園児たちを送って母親たちにのもとへ届ける麻江。しかし最後のひとり・ひろちゃんがむずかる。「僕帰りたくないな。ママがいないんだもん。お仕事で」と寂しそう。「じゃ、先生がひろちゃんと遊んであげようか?」「ほんと?」。公園で鬼ごっこをして遊ぶ二人。ひろちゃんが鬼になるが、駆け出した途端に転んでしまう。「危ないな坊や」と助けたのは、なんと影山! 何かを企んでいるようである。ブランコで遊ぶひろちゃん。麻江に声をかける影山。「そういえば、この前、OLが結婚詐欺で殺された事件、あれ、どうなったんでしょう? 警察は何か掴んだでしょうかね?」と探りを入れてくる。その時、ひろちゃん「あ、おじさんの靴にペンキがついてるよ!」

 はっとなる麻江。病室での殿下の言葉を思い出したのだ。「踵。そうだ、踵に黄色いペンキみたいなものが・・・」。ひろちゃんを連れて、その場を立ち去る麻江。気づかれた!と忌々しい顔の影山。そうならさっさと靴を処分すればよかったのに・・・。麻江はひろちゃんを家まで送り届けて「一人でお留守番しているのよ。先生はご用事ができたから」と去ってゆく。

 一係。ゴリさんと殿下が、先程の美容師を参考人として連れてくる。カフスボタンを影山にプレゼントしたのは、やはり彼女だった。「あたしがバカだったんです。結婚してくれるというから、あたし、信じて・・・」。影山は結婚詐欺の常習犯だったのだ。しかし、今回の事件、結構荒っぽいね。

 これで一件落着のはず。しかし麻江は、黄色いペンキの踵の男のことを、一刻も早く七曲署、いや殿下に伝えるために、電話ボックスへ走る。それを見ている影山

 一係。「影山の逮捕状、取ってくれ」とボス。そこへ麻江から電話。「殿下、彼女から電話だ。とにかく出ろ」。殿下に代わるが電話から返事はない。なんと影山はひろちゃんを人質にして「子供が可愛かったら、早く(電話を)切るんだ」と脅している。さすが刑事の恋人、麻江はオンフックのまま、受話器を置いたふりをする。一係では逆探知開始。「あなた、あなた一体誰なんですか? どうしてあたしたちにこんなことを!」「あんた、刑事のガールフレンドだろ? わかっているんだ。そのあんたが私の靴のペンキを見て、顔色を変えたこともな」。そのやり取りの一部始終を電話で聞いている殿下。「影山の声です」「何?」とボス。しかし、なぜ影山が? 殿下にはわからない。ジーパン「ボス、代々木の公衆電話です」。お!逆探知成功!

 電話ボックスに急行する殿下、ボス、ジーパン、ゴリさん、長さん。手分けして影山と麻江の行方を探す。なかなか見つからない。しかし殿下は、とある家の柵に麻江のハンカチが置かれているのを見つける。その先では何かが光っている。麻江のコンパクトである。彼女は手がかりを残してくれているのだ。

 工事現場の事務所。「どうするつもり?」「安心しなさい。殺したりなんかしないから」。自分が逃げ切るまで、しばらくここにいてもらうだけだ。と影山、ロープでひろちゃんと麻江を縛ろうとするが、ひろちゃんは大きな声で泣く。そらそうだよね。「泣き止ませろ!」と影山、すごい形相になる。キレやすい性格なのだ。「泣いちゃだめ、男の子でしょう? ひろちゃんには先生がついているじゃない」。そこへクルマの音。殿下たちの覆面車が到着したのだ。プレハブの小屋の前で様子を伺う。ボス、殿下、ジーパン、ゴリさん、長さん、山さんたち。影山が窓を開け「近づくと、この二人を殺すぞ!」と手にはナイフがキラリ。

ボス「影山、ばかな真似はやめろ! 二人を離すんだ」
影山「うるさい、助けたかったら、早く帰るんだ」

 結構、雑な展開だなぁ。ボスの命令でジーパンが走り出す。影山の注意を惹きつけるためだ。その隙に殿下がプレハブの横に近づき、影山から二人を助け出す。逃げる麻江。影山ナイフを持ったまま殿下に襲いかかる。全員の活躍で、ようやく影山を逮捕する。その姿を見つめている麻江。

ボスは殿下にこう語りかける。
「ご苦労さん。さすが刑事の彼女だな。なあ殿下、俺が昔好きだった女性も、同じ理由で、俺から去っていった。しかし、そのことで、俺がいまだに気づいているのは、なぜその時に強引に引き止めて結婚しなかったのか、その彼女は、心の底からそう思っていた・・・」

 殿下を見つめる麻江にゆっくりと近づく殿下。二人の心が通いあう。「あたしにできるかしら?」。麻江に先程のハンカチを差し出す殿下「君ならできるさ」。抱き合う二人。それを見つめて満足そうなボス。

 一係。また久美が花束を抱えて入ってくる。「はい、島さん」「え?俺、こんなもの頼まないよ」。冷やかすみんな。「もう隠すことないでしょ?」「ほんとだって今日は!」「おかしいな」。ボス振り向いて「誕生日のお祝い、まだなんだろう? 花ぐらい持っていかなくちゃ」「じゃ、ボスが?」「いやいや、みんなで出し合ったんだ」。にこやかに花束を持って麻江のもとへ向かう殿下。

 今回はボスは、自分の悲恋の轍はふませまいと、殿下と麻江の関係を暖かく見守りアドバイスをする。こうして殿下には恋人ができたが、女性ファンが黙っていなかった。この後も殿下の恋人が登場するたびに、ドラマの中での受難が続くこととなる。

よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。