見出し画像

娯楽映画研究所ダイアリー 2022年4月4日(月)〜4月10日(日)

4月15日開講! NHK文化センター青山「クレイジーキャッツの音楽史」に先駆けて、クレイジーキャッツの音楽史を語ります。

4月4日(月)『アネット』(2022年・レオス・カラックス)・『踊るブロードウェイ』(1935年・MGM・ロイ・デル・ルース)『ニッポン無責任時代』(1962年・東宝・古澤憲吾)

レオス・カラックス『アネット』を角川シネマ有楽町で。浅草の歯科医から銀座に出て観たのだが、とてつもない傑作!近視用メガネを忘れてしまい、画面はボケてしまったが、オープニングのレコーディング・スタジオから、キャストが街に出て『踊る大紐育』(1949年)のように路上にラインナップして映画の始まりを告げる。ここでノックアウトされた。企画者でもあるスパークスの音楽が素晴らし過ぎる!アダム・ドライバーのダークサイド・キャラの集大成でもある。よりカイロ・レンっぽい。アネットになぜか「モスラ」の小美人の哀しみを感じる。パペットで表現されたアネットの哀しさ!これぞスパークスのセンス! なんといってもマリオン・コーティヤールの美しさ! スタンダップコメディアンとオペラの歌姫の切なくも、悲しき万華鏡的、シネ・ミュージカル。キャメラも技巧も、編集のタイミングも心地よく、ラストのワンカットに震えた。また観よう!

note「佐藤利明の娯楽映画研究所」3年目に突入しました。記念すべき900本目の記事をUPしました。書きも書いたりです。ちょうど全体ビューが「290,070人」となりました!

900本目の記事は、MGMミュージカルの黄金時代の幕開けとなる「ブロードウェイ・メロディー」シリーズ第2作、エレノア・パウエルとロバート・テイラー主演『踊るブロードウェイ』(1935年)の詳説です。

15日からのNHK文化センター青山「クレイジーキャッツの音楽史」の準備をかねて、記念すべき第1作『ニッポン無責任時代』(1962年7月・古澤憲吾)をスクリーン投影。知人のご好意で見せていただいたHD放送のマスター再生なので、DVDよりも綺麗で、平均(植木等)の無責任ぶりがより鮮明かつ、ヘッドホンでの爆音で、ダイレクトに「常軌を逸した古澤演出」を堪能。

4月5日(火)『踊るアメリカ艦隊』(1936年・MGM・ロイ・デル・ルース)・『ニッポン無責任野郎』(1962年・東宝・古澤憲吾)

エレノア・パウエルの華麗なタップ!コール・ポーター作詞・作曲のゴージャスでモニュメンタルなミュージカル大作! ジェームズ・スチュワートが唄って踊る! アマプラで観られる幸福! MGMミュージカル研究。エレノア・パウエル主演第2作『踊るアメリカ艦隊』(1936年・ロイ・デル・ルース)を、アマプラで字幕版をスクリーン投影。前年の『踊るブロードウェイ』(1935年)のキャストとスタッフによるシリーズの姉妹篇的なミュージカル・コメディ。

火曜日は、『ニッポン無責任野郎』(1962年12月・古澤憲吾)をスクリーン投影。この源等(植木等)の傍若無人さ、問答無用の無責任さは爽快さを超えて、冷静に観ても「どうかしている」(笑)テンポも展開もスピーディで、有無を言わせぬ迫力で、気がついたら大団円。

『ニッポン無責任時代』と共に、濃厚な「コンク」のような映画。これを作ってくれたことで、クレイジーキャッツのインパクトを、後世に伝えることが「容易」になっている。もしも、この2本がなければ、その後の「クレージーソング」のエスカレートもなかったかもしれない。1962年の奇蹟を改めて噛み締めている。

そんなクレイジーキャッツ研究の集大成とも言うべき講座「クレイジーキャッツの音楽史」4月15日から、NHK文化センター青山で4回連続で開催します。

4月6日(水)『ザ・ウィローズ』(2017年)・『踊る不夜城』(1937年・MGM・ロイ・デル・ルース)・『クレージー作戦 先手必勝』(1963年・東宝・久松静児)

松竹ブロードシネマ『ザ・ウィローズ The Wind in the Willows』試写。ケネス・グレアムの児童文学でお馴染み「ヒキガエルのトード氏」と森の仲間の大冒険を、あの手この手の楽しさ満載のミュージカルに。ロンドン、ウエストエンドの劇場で観ている気分のライブ体験!面白いのなんの!7月8日公開!

MGMミュージカル研究。ブロードウェイ・メロディ・シリーズ第3作『踊る不夜城』(1937年・ロイ・デル・ルース)。ジュディ・ガーランドの本格的MGMデビュー作!

水曜日は、『クレージー作戦 先手必勝』(1963年・東宝・久松静児)を久々にスクリーン投影。古澤憲吾のパワフルさの対極にある久松”駅前”静児の現代風俗喜劇。改めて見ると丁寧な作りに感心。無責任男からスーダラ男に戻った植木等さんも悪くない。ハナ肇さんの登場シーンの背景に「用賀新東宝」が! 写真は安田伸さん、植木さん、そして加藤茂雄さん! 東映の鶴田浩二さん主演『ギャング対Gメン』、日活の小林旭さん主演『望郷の海』上映。後ろの看板には裕ちゃんの顔も!

4月7日(木)『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』(2022年)・『劇場版ラジエーションハウス』(2022年・東宝・鈴木雅之)・『ゴールドディガーズ』(1933年・ワーナー・マーヴィン・ルロイ)・『日本一の色男』(1963年・東宝映・古澤憲吾)

『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』東宝試写室。懐かしの忍法帖ネタで、お腹を抱えて大笑い。相変わらずのおバカなネタで、あっという間の100分。脳みそ大解放でアニメだけどアチャラカ映画で、大満足。

本日の試写2本目は、鈴木雅之監督『劇場版 ラジエーションハウス』。放射線技師と放射線科医の活躍を描くドラマの映画版。エピソードが盛り沢山で、それぞれの挿話のダイナミズムはあれど関連したものではなく、オムニバス映画的な構成。30分ドラマ4本立の味わい。ドラマのファンには何よりの贈り物。

シネ・ミュージカル研究。アマプラで観られる映画史!『ゴールドディガーズ』(1933年)のクライマックスで、バズビー・バークレイによる「世界大恐慌をミュージカルで描く」試みがすごい!プレコード期なので自由な描写も! というかメインのストーリーが「美人局」だから驚きです(笑)

木曜日は、『日本一の色男』(1963年・東宝映・古澤憲吾)。問答無用の無責任男の破天荒なセールス出世術かと思いきや、恋人への一途な思いからのマネービルだったというウエットかつ意外な展開。笠原良三脚本によるサラリーマン映画のパロディ。光等(植木)をめぐる、団令子、草笛光子、白川由美、浜美枝、そして藤山陽子!東宝ビューティーズの均等按配。「移動注意!」と叫んで走り出す植木さんの根拠のない元気に惚れ惚れ。なんといっても人見明さんのいまいましげな表情!

4月8日(金)『フットライト・パレード』(1933年・ワーナー・ロイド・ベーコン)・『クレージー作戦 くたばれ!無責任』(1963年・東宝・坪島孝)

https://www.youtube.com/watch?v=hx67j5dLwAs

僕にとっての藤子不二雄A先生といえば、幼稚園の時に夢中だった「怪物くん」に尽きます。10代になると少年チャンピオンの「魔太郎がくる」に夢中になり、怪奇やの親父がボリス・カーロフの顔をしていたのが嬉しかった。

2011年「怪物くん」が実写映画化された時に劇場用プログラムの取材と執筆
を担当して、念願の藤子不二雄A先生にの話を伺った。完成披露試写の夜、東京ドームの控え室での慌ただしい時間だったが、先生は懇切丁寧という感じで、僕の質問と「思い」に答えて下さいました。

幼き日からずっと憧れていたレジェンドのお話は、今でも一言一句覚えている。ちょうど「1969」発売の直前、ピンク・マティーニと由紀さおりさんがロイヤル・アルバート・ホールに出演するので、翌日、ぼくはロンドン出張だったのですが、藤子不二雄A先生に逢える!と欣喜雀躍していました。

ご冥福をお祈りします。

ハリウッド・ミュージカル研究。昨夜は『フットライト・パレード』(1933年)をスクリーン投影。ジェームズ・キャグニーのパワフルなタップ!バズビー・バークレイの人海戦術!「そこまでやるか!」ただただ驚嘆のミュージカル! この映画を観るために、若い時にどれだけ苦労したことか。今はアマプラで字幕版を簡単に観れてしまうのがすごい。

金曜日は、『クレージー作戦 くたばれ!無責任』(1963年・坪島孝)。田波靖男脚本は、自ら「無責任の幕引き」なのだけど、アメリカ喜劇をこよなく愛する坪島演出はデティールがおかしい。特に谷啓の「自己催眠術」がかかった時! 時折入る妄想シーンは「宮本武蔵」「独立愚連隊」「暗黒街」と東宝ヒット作のパロディ。やはり面白いのは出だしの10分。モノクロ映像の時はショボクレサラリーマンの田中太郎(植木)が、ハッスルコーラが効いてきて想天然色のパワフルな無責任男に変身する瞬間! クライマックスの箱根小涌園(オールセット!)でのそれまでの登場人物が入り乱れるドタバタは、スクリューボールコメディへの憧れを感じる。

1963年のクレージー映画は、ことほどさように多種多彩のカラフルな味わい。これに年末の『香港クレージー作戦』(杉江敏男)まで作られるんだから、植木さんが倒れてしまうのも仕方ないよなぁ。しかし四作とも監督が異なり、テイストが皆違うのがすごいなぁ…

4月9日(土)『香港クレージー作戦』(1963年・東宝・杉江敏男)

西新井カフェクレールで、手嶋大輔さんと井原anikki広志さんデュオのジプシー・ギター・ライブ。手嶋さんとは2019年、高泉淳子さんとの「キネマティック・トーキング・ルーム」ライブでご一緒してからのお付き合い。超絶ギターテクニックと、のほほんとした人柄のギャップが楽しい。ゆるゆるな4コマ漫画「かっぱ巻きくん」の作者でもある。終了後、弘兼憲史先生たちと西新井駅前の焼き鳥屋で、楽しいひとときを過ごす。

土曜日は、『香港クレージー作戦』(1963年12月22日・杉江敏男)。香港ロケはお手のものの杉江敏男監督による『社長洋行記』(1962年)的な香港観光が味わえる。東宝から発売されたDVDのコメンタリーでは、谷啓さん、中尾ミエさんと対談をさせて頂いたので、全カット頭に入っているつもりでしたが、17年前なので、とにかく新鮮。香港に行くまでの、植木さんの「脱サラ物語」が面白く、杉江監督らしい丁寧な喜劇に。若いときはどうしても古澤憲吾作品と比べて「パワーがない」とか「フツーの喜劇」だとかネガティヴに観てましたが、いやいやそんなことはない。クレイジー7人の個性を活かしての「全員野球」が楽しい。おそらくクレージー映画の中では、一番の音楽映画だということに改めて感動。

4月10日(日)『ゴールド・ディガーズ36年』(1935年・ワーナー・バズビー・バークレイ)・『日本一のホラ吹き男』(1964年・東宝・古澤憲吾)

シネ・ミュージカル史研究。Gold Diggers of 1935『ゴールド・ディガーズ36年』(1935年・ワーナー・バズビー・バークレイ)をアマプラでスクリーン投影。バークレイの「万華鏡的」ミュージカル・ナンバーをたっぷり味わう。

日曜日は、『日本一のホラ吹き男』(1964年6月11日・古澤憲吾)。笠原良三さんの脚本によりパワフルなスーパー・サラリーマン喜劇シリーズ第二作。古澤監督の「どうかしている」演出は、何十回観てきても圧倒される。『香港クレージー作戦』と同時撮影だった『無責任遊侠伝』のセット撮影直前に、植木等さんがビールス性肝炎で入院。しばらく療養していた植木さんを、古澤監督から病院から引っ張り出して撮影開始。とにかく監督が牽引して、天下無敵の「ホラ吹き男」のキャラクターが生まれた。人見明さんの宣伝課長とのやり取り、増益電機社長・曽我廼家明蝶さんとのコラボレーションのおかしさ、守衛・由利徹さんのカックンぶり! この「脱クレージー映画」「クレージー映画の本流」となって行ったのも納得。



よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。